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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『中井英夫 虚実の間(あわい)に生きた作家』
「小説は天帝に捧げる果物 一行でも腐っていてはならない」
 (中井英夫、最晩年の走り書きより)

 中井英夫が好きだ。『虚無への供物』を読んだのは、もうどれくらい昔のことになるのか。『ドグラ・マグラ』や『黒死館殺人事件』と並んで「三大奇書」と言われていたそれを手にしたときは、まさか読後どっぷりと彼の世界に耽溺してしまうことになるとは思いもしなかった。『とらんぷ譚』『黒鳥譚』『人形たちの夜』『蒼白者の行進』『光のアダム』などなど。
 本書に収録されているのは、単行本未収録の掌編数本と中井英夫を想う人たちのエッセイや対談。三浦しをん女史は『虚無への供物』の舞台を訪ね歩き、喜国雅彦氏は「公園にて」の挿絵を描く。中井英夫が怒っているところを見たことがないと、穏やかそうな一面を書く人もいれば、中井英夫の偏屈さと頑固さを思い出して書いている人もいる。ラインナップも編集の仕方も、中井ファンならニヤニヤしてしまうんではなかろうか。好きな人にはお薦めな一冊。
 綾辻行人に中井英夫が言ったという言葉が、殊のほか印象的だった。
「世界の“悪意”のすべてを一身に引き受けたような、そんな探偵小説を書くんだよ」
 (綾辻行人エッセイ「あの呪文のような言葉」より)


 本ブログ 読書日記
2007.09.12 Wednesday * 23:46 | 中井英夫 | comments(0) | trackbacks(0)

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