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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『伯爵と妖精 あいつは優雅な大悪党』谷瑞恵
 最近、英国ブームが私の中で巻き起こっているので「英国」「ヴィクトリア朝」「伯爵」「妖精」というキーワードに惹かれて手に取りました。長いシリーズだから知ってはいたけれど、実際に読んだことはなかったんですよね。
 主軸のストーリーは、妖精が見えるためにフェアリー・ドクター(妖精博士)を生業としているリディアと、この巻で伯爵となる謎の美青年エドガーのラブストーリーでしょうか。これが始まりの巻だからか、それほど恋愛メインという感じはしませんでした。これからどんどん互いに惹かれあっていくだろうことは想像に難くありませんが。それよりも妖精についての説明と、当時のイギリスについての描写についつい気が向いてしまって。
 今のところ、フェアリー・ドクターとしてのリディアの交渉術は決して上手いものではないし、彼女だから妖精たちと渡り合えるという特別な何かも見えてこないので、全体の印象としては弱いかな。これからって感じなのでシリーズを読み進めていこうと思います。

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2010.09.09 Thursday * 17:33 | ライトノベル | comments(0) | trackbacks(0)
* 『桜嵐恋絵巻』深山くのえ
「そなた、鬼なのか?」
「……世間では、そう言っております」
「世間じゃなくて、俺はそなたに訊いてるんだが」(本分より)

 平安ものが読みたくなって手に取ったシリーズ。二条中納言の娘・詞子(ことこ)は鬼を呼ぶ姫と皆から疎まれ、十六歳の時に荒れ放題で人気の無い白川の別邸へと移ります。ある時美しい桜に惹かれて庭に降りた詞子は偶然通りかかった左大臣の嫡子・源雅遠(みなもとのまさとお)に姿を見られてしまうのですが、詞子の可憐さに心惹かれた雅遠はそれから詞子のもとへ通うようになり……と書くと、最初っからふたりのラブストーリーが始まるように見えますが、そこは鬼姫と噂の詞子と、歌が苦手で風情や風流とはほど遠い、よく言えば率直で現実的、悪く言えば粗野な雅遠のふたりなので、なかなかこれが題名どおりの恋絵巻になりません。この巻ではまずはお互いの気持ちを自覚するところまで。ゆっくり育んでいけばよいとは思うものの、詞子の父・中納言は右大臣派で雅遠の父は右大臣と対立している左大臣。鬼姫だなんだという噂と、ふたりの立場の両方が今後恋の障害になってきそうです。
 この巻では鬼騒動と陵王面の紛失という事件があるものの、ちょっと内容が薄い印象を受けてしまったなあ。

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2010.05.15 Saturday * 00:55 | ライトノベル | comments(0) | trackbacks(0)
* 『レンタルマギカ〜魔法使い、貸します!』三田 誠
 魔法が世俗から遠ざけられたのは、秘儀だからではない。
 危険だからだ。
 異界の力は、いともたやすく魔法使いを誘惑し、その代償として、いともたやすく現実を侵食するからだ。(第4章「魔法使いの禁忌」より)

 父親が失踪してから7年経ったある日、高校生の伊庭いつきは父の残した会社「アストラル」を継ぐことになる。しかしこの会社、実は魔法使いを貸し出す人材派遣業社だった。神道の巫女、陰陽師、ケルト魔術の魔女ら事務所のメンバーと共に<協会>からの仕事を請け負うのだが……。
 各種魔術を取り揃え、これからもきっと敵味方あわせて出てくる魔術の種類は増えていくのでしょうが、まだこれは一巻目でほんのお披露目といった感じ。物語の種を蒔いているところじゃないかな。伏線や、これから先使われるであろうエピソードがちらっちらっと見える程度です。なので、これからの展開に期待。文章は癖がなくて読みやすくさらっと読めました。
 表紙を見るといつきが椅子に格好良く座っているのですが、実際の彼はみんなにビシバシしごかれているヘタレキャラです。今のところ。この点も、これから社長としての自覚に目覚めて、しっかりしていく様子が描かれるのかな。恋愛フラグも立っていますが、私はいつきの成長物語として楽しみたいと思います。

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2010.04.03 Saturday * 19:13 | ライトノベル | comments(0) | trackbacks(0)
* 『“文学少女”と慟哭の巡礼者(パルミエーレ)』野村美月
評価:
野村 美月
エンターブレイン
¥ 651
(2007-08-30)

 教えてほしい。きみが望むなら、なんでもするから。
 ぼくの手でも、足でも、目でも、命でも、なんでもあげるから。
『銀河鉄道の夜』に出てくる蠍のように、永遠の炎に焼かれてもかまわないから。(「五章 敗れた少年」より)

 先日出た“文学少女”シリーズ最新刊を買って、積読状態になっている既刊分を読むモードに入りました。ついつい買ってすぐにオイシイところだけ拾い読みしちゃって、おおまかなストーリーと要所要所を味わって気が済んじゃう悪い癖が出るんですよね。ライトノベルは特にそう。
 今回は宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』がテーマです。この本をここで持ってくるのか、とちょっと驚きました。もっとラストにくるかと思っていたので。

 遠子先輩が本格的な受験期に入り、たったひとりの文芸部員となった井上心葉(このは)は琴吹ななせと初詣デートをして、少しずつその距離が近づいているように見えた。しかし突然ななせが怪我をしたと聞き、その入院先へ見舞いに行くと、そこでひとりの少女と再会する――。

 ついに出ました。前巻あたりから「出るぞ、出るぞ」と色濃くその存在を主張してきた朝倉美羽の登場です。心葉の心に今も深々と残る傷の原因であり、心葉が幼い頃からずっと大好きだった少女。これまでは心葉の独白の中でした出てこなかったので、心葉の目を通した美化された美羽しか読者は知らなかったのですが、今回本人が登場したことでそれがひっくり返ります。今まで4巻分の心葉の独白がすべてこの巻のための長い長い前振りだったのだな、と思わせる展開でした。
 盲目的な憧憬や恋心は、向けられた相手にとってどれほど負担になるものでしょう。このシリーズは、毎回結構胸の痛い話になるのですが、それらの総決算と言ってもいいくらい重苦しい空気が満ちていました。それというのも語り手である心葉がどん底で泥沼にどっぷりはまりこんでいるからで、今回ばかりは心葉にイライラがMAX。友人の芥川君も一緒に泥沼に引きずり込まれているし、心葉を想うななせの健気な行動もなかなか状況を打破する一撃にはなりません。
 ところが3分の2をこえるあたりから、一気に収束へ向けて話が展開して行きます。それまで停滞していただけにここからはあっというまでした。溜まっていた澱が洗い流されるように、遠子先輩の語りでガチガチに絡んだ登場人物たちの感情が解れていきます。さすが今回のテーマは「銀河鉄道の夜」だけあって、こんなにドロドロしているのにラストはきらきらと水晶の砂が舞う「プリオシン海岸」のようでした。

 ここでこのシリーズも一段落。次からは遠子先輩の謎に迫ることになると思いますが、私としては、人間らしい感情を持てない竹田さんの今後が気になります。

【このシリーズの感想】
 『“文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)』
 『“文学少女”と飢え渇く幽霊(ゴースト)』
 『“文学少女”と繋がれた愚者(フール)』
 『“文学少女”と穢名の天使(アンジュ)』

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2009.09.07 Monday * 17:11 | ライトノベル | comments(0) | trackbacks(0)
* 『マルタ・サギーは探偵ですか? A collection of s.』野梨原花南
マルタ・サギーは探偵ですか?| A collection of s. (富士見ミステリー文庫)
「よろしいですか? 探偵がいて、怪盗がいる。その関係の美学をおわかりにならないというのは、いかにも野暮ではありますまいか」
 (第1章その1「探偵M氏に助手はどうです?」より)

 本編よりも先に書かれたらしい短編3本を含む短編集。う〜ん、本編読まずにいきなりこの短編の数々を読んで、話についてこれるんかいな。番外編ぽいつくりではあるものの、名探偵マルタ・サギーの助手リッツ・スミスが登場したり、人犬族のジョゼフィーヌ(マルタは彼女が人の姿にもなることを知らない)がマルタに飼われる経緯が書かれていたりと、かなり重要なエピソードがいくつもあります。なんでこれ、本編に組み込まなかったんだろう。
 ま、そんなことにこだわっていてはこのシリーズを楽しめないというのは、既に本編第一巻で体感したので、数々の疑問やツッコミをそっと胸に抱えたまま、さくさくと読み進めました。一応、刊行順に読んでます。
 本編ではまだ緊迫した関係に見える名探偵マルタ・サギーと怪盗ドクトル・バーチですが、こっちではもうバーチがマルタのストーカーになってますね(笑) 本人は否定しているけど、立派なマルタファンですよ。ていうか、お好きなんですね。惚れてしまわれたのですね。そんなバーチの可愛らしさと、有能な助手リッツ君のマルタに対する世話焼きと苦労が始まってます。ああ、あと、マルタにジョゼフ犬(いぬ)と命名されたジョゼフィーヌも可愛らしい。さりげなく有能です。これからいろいろ活躍しそうですね。

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2009.01.25 Sunday * 04:04 | ライトノベル | comments(0) | trackbacks(0)
* 『マルタ・サギーは探偵ですか?』野梨原花南
「それでいい。私と対決するがいい。私は捕まらない。……そして、正義を胸に秘め、それを羞じらう若者は、私の相手にふさわしいと思っているよ、マルタ・サギー」
 (第十章「マルタ・サギー名探偵事務所祝開店」より)

 一読後の感想は、「読者をここまで置いてけぼりにするってのもすごいな」でした。いやもう、世界観とか物語の背景とか極力省略してありますね。実はこの巻は伏線だけの巻で、後で全部の謎が解明されて細かいエピソードが全部繋がって……となったら傑作になるだろうと思います。けど、どうかなあ。そうはならない気がするなあ。
 視点がぶれまくりなので、読んでいて台詞や独白が誰のものなのかすんなりわからないことも多々。神の視点で全ての登場人物の心情に入り込んで書いているわけでもないし、かなり読みにくく感じられました。う〜ん。

 が、しかし。
 それでも続きを読もうという気にさせられたんですよ。主人公が青くてまだまだ痛いところのある子でも、ハイブリッドミステリーと銘打たれているくせにまったく“推理”というものが出てこなくても、多分最終巻まで読むことになるだろうと、この1巻目を読み終えたときに思ったわけです。
 なぜかというと、個々のキャラクターとこの物語の舞台である「オスタス」という町に惹かれるんですよね。オスタスは霧深く、人間族とエルフやゴブリンが共に生活し、神々しい女王が統治する町で、切り裂きジャックの時代のロンドンによく似ています。
 この話の中にも切り裂きジャック事件と似た連続殺人事件が出てきますが、それは推理によってではなく、「名探偵」のカードが持つ超自然的で強制的な「力」によって解決されます。そしてその「名探偵」のカードを使うのがマルタ・サギーこと、この異世界に紛れ込んでしまった鷺井丸太17歳。やる気のない高校生だったのが学校を辞め、ふらりと入ったコンビニで引いたクジに当たって「名探偵」のカードを手に入れるところから話が始まり、そのカードを最初に使ったときにオスタスという異世界へと飛ばされてしまうのです。
 冒頭に引用したのはマルタ・サギーの好敵手となる怪盗ドクトル・バーチの言葉。バーチとマルタの関係も、これから楽しいことになっていきそう。しかし、表紙のイラストは思いっきりネタバレしてるけど、この物語は推理ものじゃないからいいのか?(笑)

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2009.01.24 Saturday * 00:17 | ライトノベル | comments(0) | trackbacks(0)
* 『“文学少女”と穢名の天使(アンジュ)』野村美月
「才能なんて、とてもあやふやなもので、それを測る明確な方法なんて、これまでもこれからもないのに……。才能という幻想は、ときに凶器となり、人を傷つける。」(三章「天使は闇から見つめている」より)

 “文学少女”シリーズ第4弾。
 久しぶりにこのシリーズの感想を書きますね。クリスマス時期のお話です。心葉に想いを寄せるクラスメート琴吹ななせの親友夕歌が失踪し、その行方を捜す心葉とななせ。しかし、声楽に打ち込みオペラの歌姫となる夢を持っていた夕歌の秘密が見えてきて……というお話。今回の話のモチーフは『オペラ座の怪人』でした。それとオペラの「トゥーランドット」も大きく絡んでいます。ファントムは誰なのか、ラウルは誰か、そしてクリスティーヌはどうなったのか。かつて世界中に衝撃を走らせた“無性の天使”と呼ばれる歌い手は、なぜ姿を消したのか。それらがもつれ合う中、夕歌の失踪を探る心葉の過去にもチクリチクリと触れられます。
 ななせの親友の失踪についてのお話なので、今回はななせが前面に出てきていした。片思い中の心葉との距離も少し近づき、心葉を好きになるきっかけとなった二人の出会いもこの巻でようやく明かされました。対して遠子先輩は受験生ということもあり、作中の出番は激減。ラストの謎解きにはしっかり登場しましたけどね。
 このシリーズではモチーフとなる文学作品が結構シリアスなものばかりなので、自然と登場人物たち周辺(特に事件絡みで出てくる人物)もヘヴィな事情を持っていることが多いんですが、今回の夕歌のような状況はとても辛いですね。辛くて暗くて、どこにも救いが無いように見える分、“天使”が最後に夕歌に賛美歌を歌った場面が哀しくも美しかったです。“天使”は去って行きましたが、いつの日かもう一度歌ってくれるといいな。
 この巻のもうひとつのテーマは「才能」だと思います。才能ってなんでしょうね。可能性なら誰にでもあるでしょうが、才能となるとあまりにあやふやで心許ない感じがします。読後に思ったのは、自分を信じられる力や夢に向かって頑張り続けられる気力が、努力を伴い、やがて才能と呼ばれるようになるのかもしれないな、ということでした。

【このシリーズの感想】
 『“文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)』
 『“文学少女”と飢え渇く幽霊(ゴースト)』
 『“文学少女”と繋がれた愚者(フール)』

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2008.07.02 Wednesday * 19:24 | ライトノベル | comments(0) | trackbacks(0)
* 『“文学少女”と繋がれた愚者(フール)』野村美月
 ぼくは、右手を差し出した。
「友達になろう。いつか喧嘩しても、別れても、今、きみと友だちでいたい」 (本文より)

 “文学少女”シリーズ第三弾。今回は過去の出来事から脱しきれずに繋がれた者たちのお話。テーマとなる文学小説は、武者小路実篤の『友情』でした。『人間失格』『嵐が丘』ときて『友情』とは、どれも私のツボを刺激するチョイスです。私が『友情』を初めて読んだのは中学生の頃。当時は主人公の野島が嫌いでしょうがなかった。彼の、恋に対する滑稽なほどの一喜一憂ぶりが嫌で嫌で。でもそれは、同属嫌悪にも似た感情だったのかもしれません。中学生といえば思春期まっさかりですもんね。今読み返したら、野島を好きになれるかもしれません。大宮は多分、昔も今も好きだろうけど(笑) ああ、『友情』読みたくなってきたな。

 このお話のほうは、これまで主人公心葉(このは)と穏やかな関係にあった芥川君がメインにきています。背が高くて整った顔立ちで成績が常にトップの弓道部員。女生徒にもモテるし、級友たちからは誠実で真面目な人柄と目されている芥川君。そんな彼の中にも激しい苦悩があり、迸るような衝動もある。怪我をした心葉を保健室に連れて行った芥川が、そこで激しい感情を心葉にぶつけるシーンがあるんですが、彼が言った言葉とは裏腹に、それは助けを求める叫びのように見えました。
 優等生の芥川君の過去や家庭の事情もわかり、本当にこのシリーズに出てくる人たちはみな心に深い傷を持っているのだなとちょっと痛い気持ちにもなりました。けど毎回ラストで遠子先輩の「読み解き」で救われるんですよね。とはいえ、そんな遠子先輩にもきっとなにかあるはず。ほんのちょっと、さらっと撫でるくらいのわずかな文章で、遠子先輩の両親について触れている箇所がありました。今遠子先輩は下宿しているけれど、そこら辺と関係ありそうな……。それは最終巻あたりで明かされるんでしょうか。
 一巻で出てきた竹田千愛(ちあ)ちゃんの存在も気になります。このシリーズの中で一番好きなキャラは彼女かもしれない。この後いくつか巻を経た時に、彼女の存在がキーポイントになりそうな気がするんだけど、どうでしょう。

 ちょっと話は逸れますが、話の中で、文化祭で心葉たちが『友情』のお芝居をします。そこでの心葉:野島、芥川:大宮、遠子先輩:杉子というキャスティングがとても嵌っていて良かったです。心葉と芥川君がまさにぴったり。口絵イラストも大正ロマン風な衣装の場面で嬉しい。やっぱり袴姿はいいですよね〜。

 そしてラストの一文で驚きの事実が!
 今回とても頑張った心葉だけど、またツライ思いをしそうですね。でもその時には逆に、芥川君が支えになってくれるといいな。ふたりとも到底「お目出度き人」にはなれそうもないけれど。

【このシリーズの感想】
『“文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)』
『“文学少女”と飢え渇く幽霊(ゴースト)』

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2007.12.08 Saturday * 13:18 | ライトノベル | comments(0) | trackbacks(0)
* 『“文学少女”と飢え渇く幽霊(ゴースト)』野村美月
「ねぇ、失ったものを取り戻す方法を、コノハは知っている?」(本文より)

 文芸部の相談ポストに投函されていたのは、「憎い」とか「幽霊が」とかいう意味不明の言葉と、謎の数字が書き連ねられた紙片。投函した人物を突きとめると、その人物は骨と皮ばかりの身体の少女。彼女の残した「だってわたし、とっくに死んでいるんですもの」という言葉の意味は――。

 “文学少女”シリーズの第二作。今回は、テーマに取り上げられている作品名を出すとネタバレになりそうなんで、一応伏せておきます。前作の『人間失格』よりもミステリ要素は薄くなり、その分ドロッとした愛憎劇に仕上がっていました。そういや私、その本をちゃんと最後まで読んでなかったことを思い出しました。昔一度手に取ったものの、昼メロのようなドロドロの展開に途中で本を置いちゃったんですよね。でもこの話を読んでいたら、遠子先輩の語りにちょっと惹かれるものがあったので、これを機会にもう一度手に取ってみようと思います。それに、話の筋とは関係ないところで語られていた、国木田独歩の『武蔵野』も気になっています。これも一度、延々と続く田園風景の描写に焦れて途中で放り出したことが(笑)
 いやあ、人が熱く語っているのを聞いたり読んだりすると、それまで興味のなかった本や一度手にして合わないと思った本でも、読みたくなってくるのはなぜなんでしょう。この本を読んでいると、いつも遠子先輩が実に美味しそうにいろんな物語について語るので、自分もそんな風に味わってみたいと思わされます。

 さて、この話の内容に話を戻して。
 前作もシリアスでしたが、これはまたよりシリアスというかヘヴィな話でした。ライトノベルだと思って気安く読み始めると、不意打ちを食らうかもしれません。愛と憎しみは表裏一体。今回出てくる人々の生き方は絶望的で、悲惨だとさえ言えるかもしれません。けれどそこにあるのは紅蓮の炎ではなく、表紙やカラー挿絵が表しているようにひたすら青い哀しみに包まれています。
 失ったものを取り戻そうとする方法なんてない。どんなに悔やんでも時間を巻き戻すことなどできない。それが身に沁みてわかっている心葉の前に、それを実践しようとしている人物が現れる。絶望して諦観の域にようやく辿り着いた頃になってそんなものを見せられたら、混乱し自分を責め、再び苦しみの淵に引き戻されるのは必至です。
 最初、今回テーマとして取り上げられている作品名を見たとき、どうしてこの本を持ってきたのかと思ったのですが、読み終わってみると、なるほど未だに悔恨にまみれている心葉の心の奥にある、失ったものを取り戻したい、時間を巻き戻したいという強い願望とこの作品とが、うまく嵌っています。

 あ、巻末にある作者によるあとがきとイラストレーターによるあとがきには、ネタバレがあるので先に読まないほうがいいですよ〜。

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2007.10.18 Thursday * 20:53 | ライトノベル | comments(0) | trackbacks(0)
* 『“文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)』野村美月
 ねぇ! 太宰は『人間失格』だけじゃないのよ!
 確かに、『人間失格』を書いたあと、太宰は死んじゃったかもしれない。救いようのない鬱々とした作品だっていくつも書いてるし、『人間失格』が、太宰の出した答えなのかもしれない。
 けど、それだけが太宰のすべてじゃない。
 太宰の作品には、はにかみ屋の優しい人たちがいっぱいいるわ。平凡で心弱いけれど強くもなれる人たちが、いっぱいいるわ。(本文より)

 ずーっと気になっていて、本屋に行くたびに手にとっては棚に戻し、を繰り返していた“文学少女”シリーズ。パラパラっと立ち読みして、題材に太宰が取り上げられていたのを見て踏ん切りがつき、いきなり既刊分の五冊を買ってきました。後悔はしていない(笑)

 主人公の井上心葉(このは)は高校二年生の男子。中学時代に軽い気持ちで書いた小説が賞を獲り、映像化もされて一躍社会現象になるほどのブームを起こした。その際使っていた井上ミウというペンネームのせいもあり、覆面美少女作家として分不相応な騒がれ方をし、心身ともに疲弊し傷ついた過去を持つ。そんな彼が高校で出会った天野遠子先輩は、文字の書かれた紙をむしゃむしゃと食べてしまうくらい物語を愛しているかわった人で、彼女に引き込まれた文芸部で彼女の“おやつ”になる短文を書く日々を送っていた。ある日文芸部に竹田千愛(ちあ)という少女がラブレターの代筆依頼をしに訪れて――。

 主人公の心葉は過去になにやらあった様子。それはこの巻ではちらちらと見え隠れする程度で真相は書かれていません。書かれていないけれど、それが心葉の心に今なお傷を残していることは、彼のモノローグでよくわかります。「なにも起こらないこと」「誰も好きにならないこと」「痛みも悲しみも絶望もなく、穏やかに生きていくこと」だけを願う毎日。そんな彼が請け負った(正確には遠子先輩に請け負わされた)恋文の代筆が、単なる恋愛成就云々ではなく、10年前に在学していた片岡愁二という生徒の身に起こったある事へと、心葉と遠子先輩を動かしていくことになります。
 千愛が好きになった片岡愁二という人物は、太宰の『人間失格』の主人公のように、人の感情に共鳴することも理解することもできず、そういう自分を悟られまいと道化の仮面を被った人物。そして弓道部にいるという千愛の言葉を信じて探してみると、どこにもそんな生徒は在籍していないことがわかります。彼はいったい何者なのか。そして彼の身に起こった出来事とはなんなのか。愁二の残した手記が、心葉たちの行動と平行して出てきて、少しずつその真相が見えてきます。

 誰でも多かれ少なかれ、一度は他人とのズレを感じたことがあるでしょう。みな一個の別々な人間であり他人なのだから、それは当たり前のことのはずなのに、なぜ私たちはそのことに傷つき悩むのでしょう。
 今回、太宰の『人間失格』に絡めて物語りは進んでいきますが、太宰を読んだことのない人もまったく問題なく楽しめると思います。作者が遠子先輩の口を借りて、太宰の生涯や作品群について語っているので心配なし。既に太宰を読んだ人は、その作者の太宰に対する解釈や感想を楽しむことも出来るでしょう。
 シリーズの一巻目に太宰をモチーフに持ってきたのは、なかなか上手いんじゃないかと。心葉の鬱屈した心と、他の登場人物の表裏と、『人間失格』が妙にシンクロしています。というか十代の頃って、いろいろ青くて悩みまくってて、内心じゃ意外と暗くシリアスなことを考えてて、そして危うい時期ですよね。その危うい感じと『人間失格』の並立には違和感がない。巻を重ねるごとに心葉も強くなるのかな。心の傷は癒えるでしょうか。その都度取り上げられる文学作品がなんなのか、楽しみです。

 本ブログ 読書日記
2007.10.08 Monday * 02:05 | ライトノベル | comments(0) | trackbacks(0)

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