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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『名もなき毒』宮部みゆき
評価:
宮部 みゆき
幻冬舎
¥ 1,890
(2006-08)
 私は、我々の内にある毒の名前を知りたい。誰か私に教えてほしい。我々が内包する毒の名は何というのだ。(本文より)

 散歩途中の老人が、コンビニで買ったウーロン茶を飲んで死亡した。首都圏で発生している無差別連続毒殺事件の犠牲者のひとりと見られている。今多コンツェルン社内報編集部にいる杉村三郎は、職場のトラブルメーカーであるアルバイト女性の身上調査をするうちに、この犠牲者の孫娘である女子高生と知り合い、事件に巻き込まれることになる――。

 前作『誰か―somebody―』よりもこちらのほうが好きです。というよりも、今作でようやくこのシリーズが動き出したような感じがします。
 『誰か』では主人公の杉村に終始イライラしてしまってしょうがなかったんですが、今思うとそれは逆玉の輿に乗ったというだけで痛烈に皮肉られたり面罵されたりしても言い返さない杉村に対するもどかしさでした。思ったことを言わずにいるのは「腹ふくるるわざ」と吉田兼好も言ってますし、見ているだけでストレスが溜まっちゃってしょうがなかったんですよね。この作品では相変わらず言い返しはしないものの、ほんのちょっとだけ杉村が自分の中にあるものを自覚したので一歩踏み出した感がありました。杉村のトラブル引き受け体質は単にお人好しで優しすぎるからじゃなく、彼個人の資質と現状に対する鬱屈の表れに見えます。
 無差別連続毒殺事件と杉村の職場のトラブルメーカーのふたつが軸となって話は進んでいきますが、そこにはシックハウス症候群や土壌汚染問題に介護問題と格差といった、様々な負の要素が盛り込まれていました。どれもこれもひとつだけを切り取って解決できるものではなく、幾つもの不幸の種が芽吹き絡み合いながら成長していくことでどんどん閉塞感が増していきます。もがいてももがいても向け出せないスパイラルは、ちょっと『火車』を思い出したりもして。
 宮部作品を読んでいると、たまにものすごく怖くて不安になります。ホラー的な怖さではなくて、現実として怖い。普段目を瞑って歩いている橋が、本当は目を開けると大峡谷に渡された一本の綱で、気づいてしまったが最後、次の一歩が踏み出せなくなってしまいそうな、そんな心持ちにさせられるんです。杉村のことをお人好しだのなんだのとは言えませんね。
 シリーズが動き出し、杉村の内面にも変化があったと書きましたが、それはこれから先波乱を呼ぶ予感でもあります。波乱の末に大団円……とは、ならなさそうだなあ。

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JUGEMテーマ:ミステリ
2009.03.03 Tuesday * 03:37 | 宮部みゆき | comments(0) | trackbacks(1)
* 『天狗風―霊験お初捕物控(二)』宮部みゆき
 一陣の風が吹いたとき、嫁入り前の娘が次々と神隠しに――。不思議な力をもつお初は、算学の道場に通う右京之介とともに、忽然と姿を消した娘たちの行方を追うことになった。ところが闇に響く謎の声や観音様の姿を借りたもののけに翻弄され、調べは難航する。『震える岩』につづく"霊験お初捕物控"第二弾。

 霊験お初シリーズ『震える岩』の続編。前作は赤穂浪士の討ち入りという史実を織り込んだ歴史ミステリになっていたが、今回はよりSFちっく。なんでもありな自由奔放さを感じた。時代物とはいえ、エンターテイメントに徹した娯楽作品。意外と好き嫌いの分かれるシリーズかもしれないな。本格的な時代物が好きな人には、この霊験だのなんだのってのは胡散臭いSFもどきだろうし、そういったものが混在してても楽しめればそれでオッケーな人には、非常に面白く読めるんではないかと。
 表紙を見るとわかるように、今回は猫が大活躍。お初を助け導いてくれる存在だ。テーマは「美」と、「美しさとは、それを見る者の心の中だけにある」ということ。女性なら誰でも一度は美しくなりたいと思ったことがあるはず。そして美しく生まれついたものは、その美に固執することも多い。誰かを羨んだり妬んだり。そんな心の闇に忍び込む魔。これは男の人にはいまいち理解できない感情かも。女性が読んだほうが共感できそうだ。
 魔物にさらわれた娘達が閉じ込められた時空が、満開の桜咲くそれはそれは美しい場所というのがまた、「美」に対する魔物の妄執を感じさせる。桜というのはなぜ「魔」を連想させるんだろうか。あのあまりにも美しい姿が、この世ならぬものに思えるからだろうか。

 今回は少々影の薄かった右京之介。次回はもっと彼の算学が生かされた推理が読みたいな。
2007.04.29 Sunday * 00:25 | 宮部みゆき | comments(2) | trackbacks(0)
* 『震える岩』宮部みゆき
4062635909震える岩―霊験お初捕物控
宮部 みゆき

講談社 1997-09
売り上げランキング : 14,369
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 今日は12月の14日。赤穂浪士の討ち入りの日ですね。ついさっきまでNHKで「赤穂浪士討ち入り参加組と不参加組、どちらをあなたは支持しますか?」ということをテーマにした番組をやっていました。電話などで視聴者が参加できる仕様になっていたので、私も投票しながら見てました。参加組は武士としての理想であり絵的にも物語としても美しいけれど、あの時代に裏切り者のそしりを受けてまでも生き抜いた不参加組にも胸が痛みます。不参加組の筆頭、大石蔵之助の腹心であった奥野氏の子孫の方が、山の中にひっそりと置かれた小さな墓石に向かって手を合わせている姿はなんともいえないものがありました。その直前に、泉岳寺で四十七士の墓参りに数千人の人たちが訪れている様子を映し出していただけに。それから、厳島神社の海の中に立つ大鳥居の建設に携わったのが、不参加組の浪士の息子だというのも初めて知りました。
 赤穂浪士については、殿中松の廊下での一件やそれ以前のこと、吉良の実像などなど、歴史ミステリ的な要素も多いですよね。
 ということで、宮部みゆきの『震える岩』を読み返しました。
 普通の人間にはない不思議な能力を持つお初。南町奉行の根岸肥前守に命じられた優男の古沢右京之介と、深川で騒ぎとなった「死人憑き」を調べ始める。謎を追うお初たちの前に百年前に起きた赤穂浪士討ち入りが絡んで……。

 宮部みゆきの作品は、個人的に時代物が一番好きです。雑駁とした人情あふれる下町の様子が、いつも活き活きと描かれているから。食べ物の描写も美味しそうだし。
 この話ではそういった人情話よりも、捕物に重点を置き、尚且つそこに超能力を加味しているところが面白い。時代ものに超能力。すわSFかと思いがちですがそうではく、それほど違和感なくお初の能力は江戸の町に溶け込んでいます。そしてこれには、赤穂浪士の討ち入りに対する新解釈も読める歴史ミステリ的要素もある。そこが読みどころであり、事件解決のキーポイント。ただひとり顔を描かれていない赤穂浪士の存在は初めて知りました。
 登場人物のひとり、内藤安之介の狂気に共感できなかったのは、私が正気だからだと思いたいです(笑)
2005.12.14 Wednesday * 01:22 | 宮部みゆき | comments(2) | trackbacks(0)

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