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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『福家警部補の再訪』大倉崇裕
「宗教の勧誘でも、消火器の販売でもありません。私、警察の者で、福家と申します」(「失われた灯」より)

 小柄でいつも刑事に見られない女警部補・福家が主人公の倒叙ミステリシリーズ。『福家警部補の挨拶』に続く二冊目ですね。倒叙ミステリとは、「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」のように犯人も犯行も見せたうえで、それがどう突き崩されるかが描かれるものです。
 船上で起こった殺人事件を巡り、鑑識不在の中で警備会社社長との対峙を描いた「マックス号事件」、誘拐狂言でアリバイを作った売れっ子脚本家との対峙を描いた「失われた灯」、人気が落ちた漫才コンビを解消しようと、相方を殺した漫才師との対峙を描いた「相棒」、フィギュア造形クリエーターとの対峙を描いた「プロジェクトブルー」の四編から成っています。
 とぼけた物言いの一方で意外と強かで狡猾な面もある福家。今回は事件を捜査する中で彼女の趣味がちらほら見えます。寄席に通ったり、特撮ヒーローものを毎週欠かさず見ていたり。徹夜で報告書を書いたり事件の捜査をしているというのに、いったいどこにそんな時間が!(笑) まだまだ謎な部分のある人ですね。

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2009.06.25 Thursday * 00:01 | 創元クライム・クラブ | comments(0) | trackbacks(1)
* 『平台がおまちかね』大崎梢
平台がおまちかね (創元クライム・クラブ)
「出版社って、もとずっとライバル同士が火花を散らす間柄だと思ってました」
 あるとき漏らしたぼくのつぶやきに、真柴さんが笑顔でこう答えた。
「争って得するものなど何もないよ。このご時世、売れる本はただそれだけで素晴らしい。互いに協力し合い、ベストセラーを一冊でも多く生み出していかないとね」(「新人営業マン・井辻智紀の一日 5」より)

 <成風堂書店>シリーズでお馴染みになった大崎さんの新作。あちらは書店員さんが日常の謎を解いていくシリーズですが、こちらは出版社の営業マンが主人公。そしてやっぱり解くのは、本にまつわる日常の謎です。
 私も書店でアルバイトをしていたことがありますが、個人経営の小さな本屋だったので大手出版社の営業さんが来ることは年に一、二度あるかないかでした。来てくれても正直、扱いに困るところもあったし。大きくない本屋でしたから、オススメされた本をそうそう何十冊も入れるわけにはいかず、かと言ってこちらが欲しい売れセンの本は出版社のほうも在庫がビュンビュン無くなるのでなかなか回してもらえないしで、お互いの望むところが一致しなかったんですよね。
 加えて日頃から、客注が入って問い合わせの電話やFAXを送っても、なかなか返事が来なくてお客さんから「あれはどうなってるんだ?」とせっつかれて板挟みになったり、取次ぎ業者からの重たいダンボール箱を開けて目当ての本を探しても配本されていないばかりか、逆に「要りませんよ」という本が詰め込まれていたり、なんてこともあったもんだから、なかなか談笑に終始する状態にはなりませんでした。
 この本を読んでいたらそんなことを思い出して、ちょっぴり羨ましくなりました。それに少々反省もしました。もっと営業さんに優しくしてあげればよかったなあ、と。ま、主に相手していたのは店長でしたけど。

 本書には五つの連作短編が収録されています。埋もれていた自社本をたくさん売ってくれた店を訪ねたら、なぜか店主に冷たくあしらわれてしまう「平台がおまちかね」、各社営業マンたちのマドンナ書店員の気鬱の理由を探る「マドンナの憂鬱な棚」、新人賞の贈呈式直前に姿を消してしまった受賞作家を探す「贈呈式で会いましょう」、児童書や絵本に力を入れて展開していて密かなファンもついていた書店の閉店理由と、その店の前に佇んでいた男の正体を調べる「絵本の神さま」、各社営業マンたちが自社本と他社本両方のオススメを選出しそこに添えるポップを競う「ときめきのポップスター」。これらの謎で出会った明林書房新人営業マンの井辻智紀青年が、会社の先輩吉野や他社の営業マン真柴らの協力を得て、真相に気づくという内容。
 「絵本の神さま」がいい話だったなあ。それと、「贈呈式で会いましょう」も好きです。この中の受賞作家さんは、良い作家になるんじゃないかなとスピーチの場面で思いました。もうひとり出てくるダンディな老紳士も素敵。もしこの本がシリーズ化したら、このふたりは今度も何度かお目見えしそうですね。ていうか、出てきて欲しいです。
 本筋とは少し逸れますが、本書の中で井辻君が大好きな架空のお話「名探偵・宝力宝(ほうりきたから)シリーズ」を読んでみたいです。「贈呈式で会いましょう」で贈呈される賞も、「宝力宝賞」なんですよね。イメージ的には、鮎川哲也氏の星影龍三か、乱歩の明智小五郎あたりで想像してます。

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2008.07.31 Thursday * 19:40 | 創元クライム・クラブ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『動物園の鳥』坂木司
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 ひきこもりの友人を外の世界へ連れ出そうと努力を続ける坂木司。動物園で起こる不思議な現象に、鳥井真一は筋道の立った回答を導き出すことができるか? 『青空の卵』『仔羊の巣』に続く感動の第3弾!(出版社の紹介文より)

 坂木&鳥井シリーズの三作目にしてシリーズ完結作品。実はこの本が発行されたときにそれを知って、軽くショックを受けました。もう坂木と鳥井に会えないのか、と。もっともっとこのシリーズを読んでいきたかった。けれど最後の1ページまで読み終えたとき、そこにあったのは寂しさよりも晴れやかさでした。
 このシリーズはいつも人の心のやわらかい部分や弱い部分を刺激してくれて毎回泣かされてしまうんだけど、今回もまたうるっときました。「人はまだ信じられる。人はまだこんなにも優しく美しい」と、どこまでも人を信じたいと願う坂木の姿につい。彼もまた心に傷を負っていたということが本書で明らかになります。
 鳥井がひきこもりになった原因である中学時代のいじめ。その首謀者が今回出てくるので、もっとヘヴィな展開になるかと思ってたんだけど、その彼に対しても作者の温かい視線が感じられる話の収まり方でしたね。

 なんでしょう。このシリーズを読んでいると、この物語よりも坂木司という作家が好きになっていく感じ。ここに出てくる事件はどれも日常にあるちょっとした出来事で、それが起こった原因は人の心の弱さや汚さや嫌な部分だったりするんだけど、必ずしも絶対悪である悪者は出てこない。いじめをしていた者にも怯えがあり、すべての人を受け入れる者は逆に他人に依存している。嫌な奴にも事情がある。それがわかるからこそ、せつなくもどかしい。人はもっと優しく生きていけるものなんじゃないだろうか。
 最後の坂木の決断は辛いものに見えたけれど、後書きや解説の後に設けられた数ページの後日談で、前進するための一歩なのだと納得しました。
 未読の人には是非お薦めのシリーズです。
2006.07.04 Tuesday * 23:56 | 創元クライム・クラブ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『仔羊の巣』坂木司
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 僕、坂木司とひきこもりの友人、鳥井真一との間にも、変化の兆しはゆっくりと、だが確実に訪れていた。やがていつの日か、友が開かれた世界に向かって飛び立って行くのではないか、という予感が、僕の心を悩ませる。そんな僕の同僚、吉成から同期の佐久間恭子の様子がおかしい、と相談されたり、週に一回、木工教室の講師をするようになったという木村さんからの誘いで、浅草に通うことになった僕たちが、地下鉄の駅で駅員空相談を受けたり、と名探偵鳥井真一の出番は絶えない。さらには、僕の身辺が俄に騒がしくなり、街で女の子から襲撃されることが相次ぐ。新しく仲間に加わった少年と父親との確執の裏にあるものとともに、鳥井が看破した真実とは……?

 『青空の卵』に続く、坂木&鳥井シリーズの第二弾。坂木が同期の女性に想いを寄せられたり、襲撃されたり、鳥井との仲をホモと勘違いされたり。「青空〜」で関わった人々が坂木や鳥井とその後も交流を続け、打ち解けた仲になってきているのが嬉しい。特に木村栄三郎という老人は、昔気質の江戸前な性格でチャキチャキと鳥井や坂木に関わってくる。彼を見ていると、人として正しい年の取り方をしているなぁと羨ましく思う。今の子供達は、親でも先生でもない赤の他人の大人にきちんと叱ってもらえないから、妙な方向へ行ってしまうんじゃなかろうか。彼のような祖父がいたら、さぞかし社会に対する目というものがまっすぐに育てられることだろう。
 「卵」から「巣」へと、鳥井たちの行動範囲、交際範囲の広がりとともに、タイトルもまた広がりを見せている。主人公ふたりの関係は、ほとんど変わっていないけど。できたらずっと変わらずに、好きな人とだけ一緒にいられればいいと願わずにはいられないけど、やがてふたりが互いから自立するときが来るのだろう。それまでこのシリーズは穏やかに進んで行くだろうし、私もそれを見届けたいと思う。
2006.07.03 Monday * 00:10 | 創元クライム・クラブ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『切れない糸』坂木司
切れない糸切れない糸
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 主人公新井和也は、大学卒業を控えたある日親父が急死し、就職も決まっていないこともあって家業の「アライクリーニング店」を継ぐことになった。大雑把な性格の母親、アイロン職人のシゲさん、そして長年パートとして店を盛り立ててくれている松竹梅トリオの松岡さん、竹田さん、梅本さんに助けられ、新たな生活がスタートする。クリーニング品の集荷が主な仕事だが、預かる衣類にはクリーニング屋にしか気づかないような謎があって……。大学の友人で同じ商店街の喫茶店でバイトをしている沢田は、相談事や困りごとを持ちかけると、いつも"魔法の言葉"で解決してくれる。そんな彼に和也も店で起こったあれこれを話すのだが……。

 前作鳥井&坂木のひきこもり探偵シリーズが終了し、新たなシリーズとなるか期待して手に取りました。鳥井&坂木のシリーズはひきこもりということもあって、心に傷を持つ人たちが集まっていて読んでいてとても痛い話が多かったけど(痛いだけじゃなくて、ラストにはちゃんとよかったと思えますけどね)、今回はごく普通の商店街の人たちが賑やかに出てくる分、話が明るいです。これもしばらくシリーズ化してくれないかな。
 困ったり傷ついたりした動物や人間がいつも自分の前に現れてしまう主人公和也と、誰とでも一線を引いた付き合いをしている不思議な沢田。対照的なふたりのキャラクターが魅力的なのと、一話完結で連作になっているので読みやすい。日常の謎に隠された個々の悩みや問題を、この作者ならではのあたたかい視線で描くのは変わっていませんでした。
 推理小説のように謎を解いて『どうだ、あってるだろう』と言ったところで現実は何も進展しない。原因が分かったなら、次はどうするかを考えなきゃ(本文より)

 この本と作者をよく表している一文だと思います。
 脇役でも捨て駒にしたくない、という作者のポリシーによって、この話では誰もがその背景に物語を持っているように見える。シゲさんについては作中で書かれているけれど、松竹梅トリオのおばちゃんたちとか、和也の父親とか、喫茶店のマスターとか。商店街は小さいながらもエキスパートたちの集まる場所ですね。読後、こういった町の商店街がとても愛しく思えてくる。解説者の言葉を借りると、この商店街は「ムーミン谷のよう」だ。すると、和也がムーミンで沢田はスナフキンかな。
2006.01.27 Friday * 00:50 | 創元クライム・クラブ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『青空の卵』坂木司
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 僕は坂木司。外資系の保険会社に勤務している。友人の鳥井真一はひきこもりだ。プログラマーを職とし、料理が得意で、口にするものは何でも自分で作ってしまう――それもプロ顔負けの包丁さばきで。要するに外界との接触を絶って暮らしている鳥井を、なんとか社会に引っ張り出したい、と僕は日夜奮闘している。そんな僕が街で出合った気になること、不思議なことを鳥井の許に持ち込み、その並外れた観察眼と推理力によって縺れた糸をときほぐしてもらうたびに、友人の世界は少しずつ、でも確実に外に向かって広がっていくのだった……!?

 いわゆる「日常の謎」系の連作ミステリ。北村薫や加納朋子が好きな人には是非おすすめ。ひきこもりの鳥井と、彼の親友で国宝級に人が良くて涙もろい坂木。ひきこもりということで、鳥井は安楽椅子探偵としてすべての情報を坂木から得、そして彼に乞われるままに渋々事件の謎を解く。
 文章も事件も登場人物も、すべてがどこかやさしくてせつない。ここで起こる事件や謎は、さらりとした語り口の割りに社会の痛い部分が起因となっている。女性に対する男性の性的偏見だとか、障害者に対する人々の垣根だとか。ここには、真の悪役というのは出てこない。読者と同じ目線の坂木から見た謎が、鳥井にかかると二転三転して、物事の裏にある真実が露になる。
 謎の解明もさることながら、坂木と鳥井の関係がこのシリーズの肝となっている。ある意味痛々しいほど純粋で人との関係を上手く結べない鳥井と、そんな彼を誰よりも貴い存在だと心中賛美してやまない坂木。外界との架け橋足らんとするのは坂木のほうだが、いざ鳥井が自分から巣立つ日が来たら、笑って送り出してやることなど出来はしない。坂木の感情にシンクロし、彼が涙を流すと途端にパニックを起こして幼子のような言動になってしまう鳥井。いったい依存しているのはどちらのほうなのか。これはふたりの成長物語でもある。
2005.12.02 Friday * 00:48 | 創元クライム・クラブ | comments(0) | trackbacks(0)

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