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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『叫びと祈り』梓崎優
 世界中を飛び回るジャーナリストの斉木が、取材や休暇で訪れた異国で不思議な事件に遭遇する連作短編集。これは順番に読んだほうがいいですね。「砂漠を走る船の道」「白い巨人(ギガンテ・ブランコ)」「凍れるルーシー」「叫び」「祈り」の五編が収録されているのですが、前半二作品とその後の二作品ではカラーがガラリと変わり、ラストの一編で全体を一本の物語にまとめています。
 五編それぞれが違う国の出来事でその国の雰囲気が感じられる文章なのですが、正直何度も挫折して、読み終えるまで随分時間がかかりました。ミステリとしては私の好みじゃなかったなあ。特に「白い巨人(ギガンテ・ブランコ)」の真相は納得がいきませんでした。逆に、いいなと思ったのは「凍れるルーシー」。ロシアの修道院で起こった出来事なんだけど、ラストが薄ら寒くてそこがよかったです。

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2010.10.15 Friday * 17:45 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『夜行観覧車』湊かなえ
評価:
湊 かなえ
双葉社
¥ 1,575
(2010-06-02)

 結構早いペースで新刊が出ている湊さんの最新刊。
 読了後、『夜行観覧車』というタイトルの意味するところを考えていました。この話に出てくるいくつかの家族達それぞれ個人が見えている景色は立場によって違うけれど、家族という箱に一緒に入って夜の闇の中をぐるぐると回っている観覧車のよう。どこか遠くに明かりが見えればいいけれど、それに気づかないままぐるぐると回り続けるのかもしれません。あるいは乗り合わせたことそのものについて考え、何かを吹っ切るか。
 物語は、とある高級住宅地で起こった殺人事件に関係する人々の群像劇。章ごとに視点が代わります。殺人を犯してしまった加害者と被害者は蚊帳の外で、彼らの家族、親戚、近隣住民らそれぞれの心情が赤裸々に描写されています。相変わらずのイヤミスだなあと思って読んでいたら、ふっと救いのようなものが見えてきて戸惑い、しかしそれすらも最後に皮肉に仕上げてくるあたりがこの作者らしいと思いました。

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2010.09.07 Tuesday * 17:12 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(1)
* 『和菓子のアン』坂木司
評価:
坂木 司
光文社
¥ 1,890
(2010-04-20)

「これはそのまま、ミステリになるなあ」
 暗号のような菓子名や、基礎知識がないと来歴すらわからない菓子。私はあっという間に、和菓子の世界に引き込まれて行きました。
 食べておいしい上に、物語を孕んだ和菓子。そして和菓子を学ぶことは、そのまま日本の歴史を学ぶことでした。(「あとがき」より)

 デパ地下に入っているテナントの和菓子店に、アルバイトとして勤めるようになった主人公アンちゃんと同僚たちが遭遇する和菓子にまつわる日常の謎を解いていく連作短編集。といっても、作者があとがきで書いているようにトリックなどがメインの推理ではなくて、和菓子の名前や特性などを知ることが結果的に真相を解明することになる形です。
 なにはともあれ、出てくる和菓子がどれも美味しそうで涼やかで、和菓子屋さんに行きたくなります。表紙のお饅頭も可愛くて美味しそう。和菓子の風流さや奥深さをもっと知りたいなあ。味わうのはもちろん、見て目を楽しませるのにも和菓子っていいですよね。一品一品が完成されていて。「松風」や「おとし文」を実際に味わってみたいです。和菓子屋さんに行って、上生菓子を物色したくなりました。
 お話そのものは他愛もないことだったり、ちょっと悲しい背景があったりで、いつもの坂木節という感じ。主人公のアンちゃん(本名・梅本杏子の杏をとってアン)がいい子で、店長の椿さんも、菓子職人志望の立花くんも、見た目は可憐な美人なのに元ヤンの同僚さんも、みんなやさしい良い人です。
 ところで、これって登場人物たちがみんな木の名前になってますね。アンちゃんは梅本から始まって、椿、立花(=橘)、松本などなど。坂木さんの密かな縛りなのかな。

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2010.06.21 Monday * 18:42 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(1)
* 『Nのために』湊かなえ
評価:
湊 かなえ
東京創元社
¥ 1,470
(2010-01-27)

 その人のためなら自分を犠牲にしてもかまわない。その人のためならどんな嘘でもつける。その人のためなら何でもできる。その人のためなら殺人者にもなれる。
 みんな一番大切な人のことだけを考えた。一番大切な人が一番傷つかない方法を考えた。(第一章より)

 『告白』『少女』『贖罪』に続く四作目。これで著者の既刊本はすべて読んだことになるかな。
 裕福な暮らしをしている野口夫妻とダイビングで知り合った、就職も決まり大学卒業を控えた安藤と女子大生の杉下。安藤と杉下は同じボロアパートに住んでいて、台風による床上浸水がきっかけで西崎という作家志望の青年とも親しくなった。ある時、食事に招待された野口夫妻の高級マンションで夫妻が亡くなる事件が起こるのだが……。
 タイトルを見ると「N」が誰なのか、誰が「N」のためになにをしたのかに興味を惹かれたのですが、読んでみると主要登場人物すべてに「N」のイニシャルがついていて、みんなそれぞれがそれぞれの「N」のために動いていました。
 杉下希美、安藤望、西崎真人、成瀬慎司らの複数の視点で物語は描かれています。ひとつの真相に向かって話が収束するのではなく、登場人物の数だけの真相が語られていく。みんな「N」のために動いているのに、そのベクトルはひとつも向かい合わずに一方通行です。湊さんはいつも作品の中に痛みの部分があると思うのですが、この作品においての痛みは、彼らの交わることのないベクトルでしょうか。

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2010.05.08 Saturday * 03:54 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(1)
* 『告白』湊かなえ
 愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。

 長らく積読にしていたのをやっと読みました。もう文庫版が出てる!
 事件の関係者たちの告白からなる一冊。それぞれの立場や視点から見た歪みや毒が練りこまれ、読んでいて不快になりそうな一歩手前で抑えてあって、途中で本を置くことなく読みきりました。
 とある中学校の教諭・森口の語りの第一章から始まって、登場人物たちの口を借りて森口の娘の死の真相とそれに至った事情が明らかになっていきます。前章でどうしてそうなったのか、その人物はなにを考えていたのかを疑問に思うと次の章でそれが暗に示され、更にその次で読んでいるこちらは新たな発見をします。この構造が次を読みたくさせて、中断することなく最後まで読ませるのでしょう。
 もとは第一章の部分のみの短編小説だったのを、後から書き下ろし部分を加筆して長編にしたという経緯もあり、第一章だけでも完成された話になっていました。

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2010.04.29 Thursday * 03:01 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『幻竜苑事件』太田忠司
評価:
太田 忠司
東京創元社
¥ 714
(2009-08-30)

「(略)犯罪とはたいていの場合、おとなの醜さや悪賢さから生まれてくるものだ。それは君がまだ知らない領域かもしれない。しかし君の直観と推理力は、そうしたおとなの嫌らしさを突き抜けて、核心をつかむことができる。君が探偵になりたいと願うかぎり、君には探偵になれる力があるんだ」(「第八章 冷たく白い雨」より)

 少年探偵・狩野俊介シリーズの二作目。三月になって俊介が再び野上の探偵事務所にやってくるところから話は始まります。前作ですっかり俊介を気に入った野上は、彼を養子にとる提案を胸に俊介と会うのですが……。この野上と俊介のやりとりが、私には事件そのものよりも見所でした。野上の気持ちも俊介の気持ちもわかる。そして、それを傍で見守っている明子の気持ちもわかります。
 そんな彼らの前に謎の少女が現れ、両親を殺した犯人を捕まえてくれと依頼するのですが、それは十年前に起きた焼死事件を掘り返す作業になるのでした。前作でも思ったけれど、謎解きよりも俊介が犯人に投げかける言葉を読むのがある種のカタルシスになっている気がします。普段は物静かで賢くてとてもいい子な俊介が、その時だけ生の感情をバンと相手にぶつけているようなんですよね。それを読んでこちらはちょっぴり安心するのかもしれません。
 それにしても野上さんは鈍感だなあ。明子嬢の気持ちに気づくのはいつになることやら。

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2010.03.19 Friday * 19:19 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『このミステリーがすごい!2010年版』
 今年も海堂尊氏をはじめとした歴代「このミス」大賞受賞者たちの短編が収録されていました。これでワンコイン価格はお得感がありますね。
 いつも楽しみにしているのは各作家の「私の隠し玉」と各出版社の「我が社の隠し玉」コーナー。「我が社の隠し玉」はカラーの違いを楽しんでるんですが、今回は新潮社のテンションが他所より高いところにちょっと驚きました。出だし「トゥース!」で入るとは(笑) 扶桑社も江戸っ子口調で攻めてます。論創社の<論創海外ミステリ>が来年はたくさん出るようで楽しみ。「私の隠し玉」では、初野晴さんの「おいしいニラたまの作り方」が参考になりました(笑)

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2009.12.10 Thursday * 19:09 | 国内ミステリ | comments(2) | trackbacks(0)
* 『ミステリが読みたい!2010年版』ミステリマガジン編集部:編
 書影が出ないようですが、書店で目にしたとき、ミシュランガイドそっくりな赤い表紙にちょっと驚きました(笑)
 ランキングは総合のほかに、ジャンル別ベスト5や目的別ベスト5など20ページ以上に渡って細分化されたものが増えていました。他のランキング本との細分化をどうするのかと思っていたんですが、データベースとしての方向に進んでいるように思います。一年分のミステリ総目録として重宝しそうですね。これだけの冊数すべての内容紹介とコメントがつけられているのは、未読本のチェックに役立ちます。いつも、こういうの見ながら今度はこれ読もう、あれも読もうと見読本潰しをしていくので。

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2009.11.27 Friday * 19:50 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『殺気!』雫井脩介
評価:
雫井脩介
徳間書店
¥ 1,680
(2009-09-16)

 大学生のましろは12歳のとき、何者かに拉致監禁された経験がある。無事に解放されたが、犯人は不明で事件は未解決。ひどいPTSD(心的外傷後ストレス精神障害)にかかってしまったため、カウンセリングで当時の記憶を封じ込めてしまった。そのせいなのか、ましろには周囲の「殺気」を感じ取る能力がある。ある日、バイト先の店に強盗が入ったが、ましろの特殊な能力で店は難を逃れるのだが……。

 ましろの過去の事件と、ましろの旧友とその周辺人物たちが繋がってきて、ひとつの絵が浮かび上がるのですが、そこに繋がる道筋が長かったかなー。ましろのアルバイト先の話やましろが参加するファッションショーの部分が冗長に感じられちゃった。読ませる作家さんだし、青春要素をメインとして読むと不満はないだろうけれど、雫井さんてことで私はミステリ要素を重視して読んだので、ちょっと物足りない感じがしました。

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2009.11.21 Saturday * 01:19 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『初恋ソムリエ』初野晴
評価:
初野 晴
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,680
(2009-10-02)

 ぼくたちにとって春の幻なんだよ
 は? まぼろし?
 ああ。ずっと居てほしいという願いもむなしく、儚い夢に終わってしまう(「スプリングフラフィ」より)

 前作『退出ゲーム』の続編で今回もシリーズの連作短編集です。四つの収録作の中では、ローカルFM局の話が出てくる「周波数は77.4MHz」が好きかな。「7・7・4」で「名無し」ってことでしょうか。「アスモデウスの視線」ではゴリラ…もとい、大河原先生の行動が気持ちはわかるけど納得がいかなかったなあ。「初恋ソムリエ」には宮沢賢治が出てきますが、昔語りと賢治の詩が重なり合って雰囲気が出てます。今回もまたラストに重ための話を持ってきて前半の軽さとのバランスをとっている構成。じわじわ増えてくる部員に普門館の予選大会への期待も高まってきましたねえ。

■「スプリングフラフィ」
 春休み初日から音楽室の鍵がない日が何日かあった。先に誰かがきているのかと思って音楽室に向かうと、鍵がかかって入れない。職員室に戻ると鍵が戻っている。いったい誰の仕業なのか……。

■「周波数は77.4MHz」
 人知れず放送されているローカルFM局のFMはごろも。七賢者と呼ばれるお年寄りたちによる人生相談のコーナーを、チカは試験勉強の合い間にこっそり聴いている。そんなある日、生徒会長の日野原に部費との交換条件で、地学研究会の部長を連れてくるように申し渡される……。

■「アスモデウスの視線」
 吹奏楽部の顧問・草壁先生が過労で倒れた。四月から休み返上で働き続けてきた先生だが、他校である藤が咲高校の吹奏楽部の世話もしていたことが大きな原因かもしれない。藤が咲高校吹奏楽部の顧問・大河原が自宅謹慎になってしまったせいだというが、そもそもなぜ大河原が謹慎処分になったのか誰も知らない。チカやハルタらはその原因を究明することになり……。

■「初恋ソムリエ」
 吹奏楽部と知り合いのクラリネット奏者・芹澤が、伯母が「初恋ソムリエ」を名乗る初恋研究会部長の朝霧に騙されているのではないかと相談にやってきた。朝霧は、初恋を再現することが出来るといって伯母さんを呼び出したようだが……。

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2009.11.18 Wednesday * 01:41 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)

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