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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『終末のフール』伊坂幸太郎
評価:
伊坂 幸太郎
集英社
¥ 1,470
(2006-03)
「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」(本文より)

 あと三年で世界が終わるという状況。2xxx年。「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されてから5年後。絶望し嘆き叫んで犯罪がはびこり秩序が崩壊した混乱の時期を経て、世界は一時の凪ぎに入った。この暴動や混乱が一旦収拾している時を舞台に描いている点が、この作品一番の肝だろう。一通りの過激でドラマティックな出来事は通り過ぎ、あと三年という長くもなく短くもない時をどう過ごすか、人々の様子を描いてその後を予感させている。
 本当にあと三年で世界は終わるのだろうかと、読後思う。もしかしたら軌道が逸れて、あるいはなんらかの解決方法が見つかって、この人たちは生き延びられるんじゃないだろうか。もしかしたら、これは世界レベルの人類淘汰プロジェクトかも、なんてことまで考えてみる。
 もしもこれが現実に起こったら、もしも世界があと数年で終焉を迎えると宣告されたら、自分はどうするだろうか。絶望して死に急ぐ踏ん切りもつかず、破れかぶれとなって暴動に走るほど衝動に任せた行動も出来ず、血を流し人と争ってまで食料調達に奔走する勇気もない。出来るだけ今ある食料を食い繋いで一歩も家から出ず、未読本を一心不乱に読んでいるかもしれない。出来ればそうしたい。買い溜めた多くの本を読まずに死ねるか!てなもんである。それに、家族とできるだけ一緒に穏やかに過ごしたい。そして運良く生き延びて、世界の混乱が少し収まった頃、この本のラストシーンのように空を見上げるのもいいかな。
 そうやってあれこれ思いを馳せる本だった。けれど、思いを馳せるのは自分や身の回りのことが主で、登場人物たちのことはすっぽりと頭から抜け落ちてどこかへいってしまったようだ。

【収録作】
「終末のフール」
「太陽のシール」
「籠城のビール」
「冬眠のガール」
「鋼鉄のウール」
「天体のヨール」
「演劇のオール」
「深海のポール」
2007.05.07 Monday * 14:11 | 伊坂幸太郎 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎
オーデュボンの祈りオーデュボンの祈り伊坂 幸太郎 新潮社 2003-11売り上げランキング : 1529おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools

 コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?


 喋る案山子が出てくる時点で、既におかしな浮遊感のあるふわふわとした世界に足を踏み入れてしまった、という感じ。主人公伊藤が島の人々について知っていく過程は、「そんな島あるんかい」と思っていた気持ちを「ああ、こういうところがあってもいいなぁ」に変えてくれました。
 伊藤がコンビニ強盗したのは切羽詰った状況で、しかも人がいいんだか大人しいんだか中途半端な犯行であっけなく御用。ここで登場してくる伊藤の昔の同級生城山が警官という立場を使って悪辣非道な行いをしているという、なんとも嫌な奴。きっと読んだ人誰もが彼に嫌悪感を示すに違いない。こんな悪党がのさばっていていいのか!とムカムカしながら読んでいたけれど、彼の末路にはすっきりしました(笑)
 たくさん出てくる奇妙で魅力的な島民達。なかでも「桜」という名の男にとても惹かれたなあ。人を殺しても「桜はルールだ」と許される男。彼が主役の話も読んでみたいです。
2006.07.05 Wednesday * 02:44 | 伊坂幸太郎 | comments(0) | trackbacks(1)
* 『死神の精度』伊坂幸太郎
死神の精度死神の精度伊坂 幸太郎 文藝春秋 2005-06-28売り上げランキング : 12550おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools

 「俺が仕事をするといつも降るんだ」 クールでちょっとズレてる死神が出会った6つの物語。音楽を愛する死神の前で繰り広げられる人間模様。
【収録作】死神の精度/死神と藤田/吹雪に死神/恋愛で死神/旅路を死神/死神対老女

 6篇のお話が、恋愛小説であったり本格ミステリであったりとそれぞれ違った風味を持っていました。
・死神の精度…クレーム処理係の女性と死神。
・死神と藤田…任侠の人と死神。
・吹雪に死神…吹雪の洋館での連続殺人事件と死神。
・恋愛で死神…ストーカーに怯える女性と彼女に恋をしている青年と死神。
・旅路を死神…人を刺してしまった少年と死神。
・死神対老女…老女と死神。
 って、感じかな。死神は千葉さんと名乗っていて、死神はみな地名を名乗っています。で、死期の予定されている人間に近づいて、その死期が妥当であるか見送るかを調査報告するのが死神の役目。妥当なら該当者は1週間後に死に、見送りなら生き延びる。被対象者がどのような死に方をするのかは、死神にも知らされていません。上からの情報も小出しにされたり、あえて教えてもらえなかったりと、宮仕えのようだ(笑)
 その死神の設定がいきていて面白いなあと感じたのが「吹雪に死神」。本来なら死期を知っているはずの死神が連続殺人の探偵役を務めるというもの。死神であることで生じる縛りや、逆に死神だからこそ確定できる条件というのもあって、なるほどと面白く読みました。死神がいることで成り立つ推理があるのだなあ、と。千葉さんが万能でなんでも知っているというわけではないのがミソですね。
 作中、天使が集まるのは本のある図書館で、死神が集まるのは音楽の聴けるCDショップだというような記述があったんですが、そこのところを読んでメグ・ライアン主演の『シティ・オブ・エンジェル』を思い出しました。確かあの映画の中に、図書館に黒いコートをまとった天使たちがたくさん集まっているシーンがあったような……。そこからきているのかな? 伊坂さんもあの映画を見たんでしょうか。
2006.07.05 Wednesday * 02:39 | 伊坂幸太郎 | comments(0) | trackbacks(0)

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