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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『南の子供が夜いくところ』恒川 光太郎
評価:
恒川 光太郎
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,470
(2010-02-27)

 これまで書かれてきた日本から南の島へと舞台を移した新作。熱帯夜のようなむっとした空気や海のきらめきは感じられたものの、全体的に暑さで見せられた夢のようなもやもやとした感触を残します。肌にまとわりつく不安や不穏な空気を感じるのだけれど、それらの不思議な出来事に解決を示さない民話的な語りで煙に巻かれた感じ。それが南国情緒にもなっていて良いんですけどね。一番好みなのは巻末の「夜の果樹園」でした。これがラストに来たことでもわ〜んと漂っていた熱気がキュッと締まった感じ。

■「南の子供が夜いくところ」
 借金で一家心中を企てた両親に連れられてタカシは海水浴場へ来ていた。そこで知り合ったユナという女性によって、タカシと両親はそれぞれ別の南の島に送られて……。

■「紫焔樹の島」
 その島には「果樹の巫女」と呼ばれる乙女だけが行くことができる聖域があった。しかしある時、島に異国の男が流れ着き、それまで島にはなかった道具や物の考え方も一緒に持ち込まれ……。

■「十字路のピンクの廟」
 十字路にあるピンク色の廟を調べる主人公。生徒や先生など、数名にその廟の話を聞くうちに僅かな齟齬を見つけるのだが……。

■「雲の眠る海」
 シシマデウのいた島は他所の島からやってきた敵に攻め落とされてしまった。シシマデウは島を取り戻すため、伝説に聞く大海蛇の一族を探しに海へ漕ぎ出すのだが……。

■「蛸漁師」
 岬の崖の中にある部屋に住み蛸を獲って暮らす男。彼は昔出て行った自分の息子を探しているうちに蛸漁師と知り合い、蛸漁と崖の中の部屋を譲り受けてそこに住み着いたのだと言うのだが……。

■「まどろみのティユルさん」
 岩から生えているかのように、体が半分植物になった男がいる。その男は遠い昔、海賊であった自分の過去を思い出し、タカシたちに話して聞かせるのだが……。

■「夜の果樹園」
 離れ離れになっていた息子に会いにバスに乗ったはずが主人公。どうやらバスを間違えたようでまったく知らないバス停で降りる羽目になってしまった。歩いていると頭がフルーツで体が人間の生き物が住む村に辿り着き、彼らの飼い犬として迎え入れられ……。

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2010.04.23 Friday * 18:51 | 恒川光太郎 | comments(0) | trackbacks(1)
* 『草祭』恒川光太郎
評価:
恒川 光太郎
新潮社
¥ 1,575
(2008-11)
「俺、もう少ししたらここから出ていくぜ。でも、それはおまえらの世界じゃない」
 (「けものはら」より)

 恒川さんの4作目。クオリティ落ちませんねえ。デビュー作から変わらない方向性ですが、読んでいてちっとも飽きさせることなく恒川ワールドを見せてくれてます。そして、見える景色は美しい。
 美奥という名の、不思議だけれどどこかにあるかもしれないと思わせる町を舞台にした、連作短編集。登場人物たちがリンクしていたりするものの、それぞれ違った内容で、ひとつの土地からいろんな物語が生まれている感じ。お気に入りは「蟲師」のような雰囲気の「くさのゆめがたり」と、ラストが爽快な「天化の宿」。「天化」というゲームが出てくるんですが、これやってみたいなあ。世の中の理が分かるような、そんなゲームってどんなだろう。

■「けものはら」
 中学三年の夏、雄也の友人・椎野春がいなくなった。雄也には春の行ったところに心あたりがあった。小学生のある日、ふたりで迷い込んでしまった「けものはら」だ……。

■「屋根猩猩」
 藤岡美和は、屋根からひらりと下りてきた少年タカヒロと出会った。彼は年齢不詳で学校にも行かず、屋根猩猩のある家々が立ち並ぶ一帯の世話をする守り神のような存在だという……。

■「くさのゆめがたり」
 幼少の頃より人間よりも植物に関心があり、山奥で叔父に育てられた主人公は、薬草を調合するのが得意だった。叔父が亡くなりひとりになったところをリンドウという僧に見つけられ、共に里に下りて生活するようになるのだが……。

■「天化の宿」
 望月ゆうかは、子供の頃同じヴァイオリン教室に通っていたレイ君を運命の人だと思っていた。いつか自分を救い出し、全てを変えてくれると思っていた。そんなゆうかが、苦しみを解くという、盤を使ったゲームのような「天化」をやることになり……。

■「朝の朧町」
 香奈枝は夫を亡くし、長船さんの家に居候している。ある早朝、長船さんと一緒に彼が作った不思議な町へ出かけていった……。

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2009.01.17 Saturday * 03:59 | 恒川光太郎 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『秋の牢獄』恒川光太郎
評価:
恒川 光太郎
角川書店
¥ 1,470
(2007-11)
 ぼくたちの本体はとっくに先に進んでいて、ぼくたちは本体が、十一月七日に脱ぎ捨てていった影みたいなものじゃないのか。世界は毎日、先へ進むたびに、その時間に影を捨てていくのかもしれない。 (「秋の牢獄」より)

 表題作を含む三作品を収録した短編集。相変わらず、恒川さんの本は装丁が美しい。手にとってうっとり、表紙を開いた中にもある挿画にまたうっとり。『夜市』『雷の季節の終わりに』で読者を異世界へ誘ってくれた恒川さん、今回もまた知らず知らずのうちに異世界へ足を踏み入れてしまった人々のお話でした。そしてみな、ある意味「牢獄」に閉じ込められています。

「秋の牢獄」
 「時間」に閉じ込められる話。
 十一月七日の水曜日を延々と繰り返してそこから抜け出せない主人公の藍(あい)。自分以外は毎日毎日同じことを繰り返すロボットのような日々だったが、ある日同じように十一月七日を繰り返している「リプレイヤー」と名乗る人々と出会う。彼らと交流していくうちに、「北風伯爵」という怪物の存在を知るのだが、ある者は神の使いであるといい、ある者はリプレイヤーたちを捕食する化け物だという。やがてリプレイヤーがひとり、またひとりと消えていき――。
 リプレイものって好きです。時間SFも好き。なので、ついつい自分に同じことが起こったらと読みながら想像してしまうのですが、翌日になったらすべてリセットされた状態に戻るとなると、途中で無気力になってしまいそうだ。ああでも、しばらくの間は未読本の消化に努めることでしょう。自分の記憶だけは残るから、本を読んだ実感だけはある。
 本編ですが、この話の中の「北風伯爵」をどう捉えるかで読後感が大きく変わると思います。出会ってしまったが最後、彼によって消滅(死)させられるのか、それとも十一月八日(未来)へと帰してくれる存在なのか。どちらともとれるし、どちらが正解とも言えない。
 もしかしたら私たちは、「一生」という名の長い長い一日を生きているのかもしれない、そんな風に思いました。

「神家没落」
 「家」に閉じ込められる話。
 春の夜、ほろ酔い気分でふらりと立ち寄った公園への途中で迷い込んだ古い民家。そこで翁の面をつけた人物と出会った主人公は、そこから出られなくなってしまう。その家は日本中を転々と流離う、不思議な家だった。
 失くしたものを惜しむ気持ち、そして本来は自分の物でないのに一度所有した後に芽生える所有感。そこにはいつの間にか、自分自身に対する「選ばれし者」という選民意識もあるのでしょうね。
 主人公が謎の家で暮らす日常の描写が好きです。家守として暮らすその姿は、遠い昔の日本の風景にも似てる気がして。だから尚更、この話のタイトルと事の顛末に、一層の哀惜と郷愁を感じるのかもしれません。

「幻は夜に成長する」
 う〜ん、これはなんでしょう。肉体的にも幽閉されているんだけど、「自分自身」によって閉じ込められている異能の少女の話……かな。
 幻を生み出すことのできる少女リオ。彼女は小学生のとき「おばあちゃん」と一緒に暮らしていたが、ある事件でバラバラになってしまう。両親の元で普通の暮らしをしながら知っていく自分の能力や「おばあちゃん」のこと。そして現在の彼女は、宗教団体に囚われ、密かに自分の中で怪物を育てていた――。
 彼女に降りかかる出来事の理不尽さが読んでいて痛いくらいですが、恒川さんにしては珍しく「悪い人」が多く出てきているかな。いや、悪いというよりも、「人の痛みを考えない人」「自分と違う他者を受け入れることができない人」というべきか。どちらにしても翻弄されるリオが見ていてつらい。彼女の育てている怪物は、そんな周囲に痛めつけられ虐げられた恨みと憎しみが純化したものなのでしょう。それはとても哀しい話です。

 WEBカドカワの『秋の牢獄』特設ページで、本文の立ち読みや作者の恒川光太郎さんのインタビュー動画を見ることができます。

【収録作】
 「秋の牢獄」「神家没落」「幻は夜に成長する」

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2007.11.29 Thursday * 18:53 | 恒川光太郎 | comments(0) | trackbacks(3)
* 『雷の季節の終わりに』恒川光太郎
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 現世から隠れて存在する小さな町・穏で暮らす少年・賢也。彼にはかつて一緒に暮らしていた姉がいた。しかし、姉はある年の雷の季節に行方不明になってしまう。姉の失踪と同時に、賢也は「風わいわい」という物の怪に取り憑かれる。風わいわいは姉を失った賢也を励ましてくれたが、穏では「風わいわい憑き」は忌み嫌われるため、賢也はその存在を隠し続けていた。賢也の穏での生活は、突然に断ち切られる。ある秘密を知ってしまった賢也は、穏を追われる羽目になったのだ。風わいわいと共に穏を出た賢也を待ち受けていたものは―?(「BOOK」データベースより)

 いつもひとこと言いたくなる直木賞ですが、たまに「直木賞のおかげかな」と思うことがあります。それは、そのままでは手に取ることもなく、もしかしたら一生触れることがなかったかもしれない作品と引き合わせてくれたとき。恒川さんの『夜市』(→感想)を読んだのは、直木賞候補作に挙がっていたからでした。あれがデビュー作ということもあり、私は恒川さんの存在をそこで知ったんですよね。『夜市』は、とても美しく妖しく懐かしい雰囲気を持った作品。あれ一作でもう、恒川さんの名前をインプット。

 第二作となる本書もまた、独自の世界観が繰り広げられた作品でした。穏(おん)と呼ばれる不思議な集落。地図にも載らぬその場所は私たち普通の日本人には辿り着けず、現在の日本とは少し違った文化風習で生活している人々が居ます。一番大きな違いは季節。冬と春の間に“雷の季節”というものがあり、その時期には住民の誰かが消えていなくなることもしばしば。それは雷の季節特有の現象なので、住民たちはみな仕方のないことだと言う。
 物語が進むにつれて、主人公・賢也の姉がなぜ雷の季節にいなくなったのか、賢也に「風わいわい」が憑依した理由、「隠」の外の世界のこと、賢也の出自などが明らかになります。
 前半はずっと賢也の視点で進むのですが、途中からそれは様々な登場人物たちの視点が章ごとに入れ替わるようになり、出来事の側面を描き出します。そうすることで各々の関連性が少しずつわかってきて、一本の糸のように過去と現在が繋がるのです。私は、「藪の中」みたいなひとつの出来事を数人の視点から書いたものが好きなのでなんとも思いませんでしたが、人によってはこの章ごとに視点がかわる後半部に戸惑うかもしれません。時系列も多少前後するので。でも、最後にすべてが繋がって真相が見えたとき、戸惑った分カタルシスも大きいんじゃないでしょうか。
 ちょっと『夜市』所収の「風の古道」と通じるお話。あれ? そういえばレンて名前がどこかに出てきたような……。気のせいかな。もう一度読み返さないと。
 今回は、穏にやってくる幽霊や妖たちを門前で払う“闇番”の大渡がなかなかよかったです。彼はどうして闇番をしているのか。恨みつらみをくだくだと繰り返す幽霊たちの扱いに慣れている彼の過去が気になります。
 そうそう、気になるといえば!
 物語の終盤に出てくる早田という青年。彼がなんかちょっと只者ではない匂いがするんですよ。これはもしかして次回作への伏線……なんて勝手にいろいろ考えちゃいました。気になるなあ。恰好良いし(笑)

 それにしても、恒川さんはこういった異世界を書くのが上手いですね。奇想天外な異郷ではなく、現実の裏側、私たち日本人の原風景に通じるもうひとつの日本。どこかにもしかしたらあるかもしれないと思わせる懐かしさ。そういったものを見せてくれる。
 ジャンルは違うけれど上橋菜穂子さんの書く和風ファンタジーを読んだときと同じ郷愁を感じました。恩田さんの「常野」シリーズが好きな人にもお薦めかな。とても好きな世界観です。『夜市』『雷の季節の終わりに』共に、どこか幽寂でもあります。表紙もまたいい。内容とよく合った美しい表紙。店頭でも目を惹きますね。これからも恒川さんは要チェックだ〜。
2006.12.27 Wednesday * 09:30 | 恒川光太郎 | comments(2) | trackbacks(2)
* 『夜市』恒川光太郎
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 第134回直木賞候補にも挙げられた、第12回日本ホラー小説大賞受賞作。表題の「夜市」と「風の古道」の二作から成っています。
 ■夜市
 今宵は夜市が開かれる。
 大学生のいずみは、高校時代の同級生裕司から夜市に行こうと誘われる。裕司に連れられて出かけた岬の森では、妖怪たちがさまざまな品物を売る、この世ならぬ不思議な市場が開かれていた。

 雰囲気が良いですね。異形の者や不思議な商品の並ぶ、夜市。その市の描写がしっとりとしていてどこか懐かしい。よく「髪は鴉の濡れ羽色」なんて言いますが、夜の暗闇には湿った匂いがしますよね。そんな湿り気を含んだお話だと思います。この本の表紙のように、暗闇の中に朱やオレンジ色したカンテラの明かりがぼうっと浮かび上がっている中を、自分も裕司に手を引かれて歩いているような。
 夜市では、お金さえ払えばなんでも手に入る。それはなにも形あるものばかりではない。しかし、なにかを買わなければそこから出ることは出来ない。過去に一度迷い込んでしまったことのある裕司は、そこから出るためにあるものと引き換えに野球の才能を買ったという。そしてそれを悔いて取り返したいと思っている。いずみにしてみれば迷惑な話ですが、これまでの裕司の鬱屈とした思いを考えるとそういう行動にも出ちゃうかな。誰も信じてくれなかったことの、証人になって欲しかったのじゃないでしょうか。
 話の途中までは、冒頭を読んですぐに想像のつくものでした。けれどその先の、裕司が過去に売ってしまったモノのその後とこのお話の終わり方が好みでした。ひとつの出来事の表と裏の両面を描いた話って好きなので。物語が閉じてゆく余韻もよかったです。
 もし私が誰かに夜市に誘われたら……う〜ん、怖いけどちょっと行ってみたい気もするなあ。
 ■風の古道
 7歳の頃、不思議な道に迷い込んだことのある「私」は、12歳の夏休みにその話を友人のカズキにしてしまう。ふたりしてもう一度その道に入り込むことに成功するが、そこは人ならぬ者たちの通る道だった……

 古道は、堅固で透明な膜に隔てられた異世界といったところでしょうか。そこにはお化けや鬼や亡者もいるし、茶屋や宿屋を営んでいる者たちもいる。宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」のような雰囲気もあり、少年たちの冒険物として読み進めていたんですが、途中からは単なるほのぼの冒険物ではない、不思議な重たさと悲しさのあるロードムービーのようでした。そういえば、『スタンド・バイ・ミー』も死体や拳銃が出てきて、物語に影が差してましたっけ。
 死んだ人間を生き返らせてくれるという噂のある寺へ、古道で知り合ったレンという青年と共に主人公は向かいます。途中、現世へ帰れる場所があったのですが、「私」は古道の中に戻るのです。
 このレンという人物がですねー、なんだかとても良いのですよ。
 強い個性とかアクだとかはないんだけど、妙に印象に残る。水のような、風のような、そんな人。漆原友紀の漫画『蟲師』の主人公ギンコを思い出しました。旅の後半、彼の生い立ちがわかると、なんともやるせないような気持ちになります。あちら側から出られずに、ずっと古道の中を旅し続けるレンはいつまでそうしているんだろうと。茶屋や旅籠があるくらいですから、誰かいい人と出会って幸せになってくれるといいんだけど。
2006.03.03 Friday * 00:53 | 恒川光太郎 | comments(2) | trackbacks(2)

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