「いいよんさんわん」―近所に住む老人に頼まれたという謎の探求書リスト。コミック『あさきゆめみし』を購入後、失踪した母の行方を探しに来た女性。配達したばかりの雑誌に挟まれていた盗撮写真…。駅ビル内の書店・成風堂を舞台に、しっかり者の書店員・杏子と、勘の良いアルバイト店員・多絵のコンビが、さまざまな謎に取り組んでいく。初の本格書店ミステリ、第一弾。(「BOOK」データベースより)
面白かったです。書店ミステリというよりも、書店員が謎を解くミステリ。私も本屋さんでバイトをしていたことがありますが、読んでいて「そうそう、こういう人いるいる」とか「あーこういうことされると困るんだよねえ」と頷く箇所がいくつもあって、この作家さんも本屋さんで働いていたことがあるのかなと思いました。作者のプロフィール知らないんですけど、書店の業務がさりげなく詳しく書かれてるんですよね。これ、やったことある人じゃないと書かないんじゃないかなあと。「六冊目のメッセージ」なんか特に、一日中本屋さんにいたことのある人じゃないとああいう風にネタに出来ないんじゃないかと。
どれもあまり筋を語ってはネタバレしてしまいそうなので控えますが、私のお気に入りは「ディスプレイ・リプレイ」でした。少しだけ顔の見えたある登場人物がなんか好きだなあ、と。実はとある人気マンガとその作者さんをイメージして読んでたので、そのせいかもしれません。ファンからの一方通行な思いではなく、こんな風にどこかでつながっているかもしれないと思わせてくれたのが嬉しかった。
なるほど、と思ったのは「パンダは囁く」で、既に亡くなっている少年にちょっとだけときめかせてもらったのは「標野にて。君が袖振る」、「配達あかずきん」は一番長いお話で読み応えがありましたし、「六冊目のメッセージ」は本好きなら誰しもこんな風に自分の薦めた本を気に入ってもらえたら幸せだよねえと思うようなお話。
本が好きな人、書店が好きな人には、「うんうん」「そうそう」の連続じゃないでしょうか。作中にいろいろ出てくる実際にある本や小説の数々も「あーこれ私も読んだなあ」なんて思ってました。小説じゃないけど「あさきゆめみし」なんていう懐かしいマンガも出てきて、思わず自室の本棚から引っぱり出して読み返しちゃいましたよ。
【収録作品】パンダは囁く/標野にて。君が袖振る/配達あかずきん/六冊目のメッセージ/ディスプレイ・リプレイ