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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『雷の季節の終わりに』恒川光太郎
雷の季節の終わりに雷の季節の終わりに恒川 光太郎 角川書店 2006-11売り上げランキング : 5006おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools

 現世から隠れて存在する小さな町・穏で暮らす少年・賢也。彼にはかつて一緒に暮らしていた姉がいた。しかし、姉はある年の雷の季節に行方不明になってしまう。姉の失踪と同時に、賢也は「風わいわい」という物の怪に取り憑かれる。風わいわいは姉を失った賢也を励ましてくれたが、穏では「風わいわい憑き」は忌み嫌われるため、賢也はその存在を隠し続けていた。賢也の穏での生活は、突然に断ち切られる。ある秘密を知ってしまった賢也は、穏を追われる羽目になったのだ。風わいわいと共に穏を出た賢也を待ち受けていたものは―?(「BOOK」データベースより)

 いつもひとこと言いたくなる直木賞ですが、たまに「直木賞のおかげかな」と思うことがあります。それは、そのままでは手に取ることもなく、もしかしたら一生触れることがなかったかもしれない作品と引き合わせてくれたとき。恒川さんの『夜市』(→感想)を読んだのは、直木賞候補作に挙がっていたからでした。あれがデビュー作ということもあり、私は恒川さんの存在をそこで知ったんですよね。『夜市』は、とても美しく妖しく懐かしい雰囲気を持った作品。あれ一作でもう、恒川さんの名前をインプット。

 第二作となる本書もまた、独自の世界観が繰り広げられた作品でした。穏(おん)と呼ばれる不思議な集落。地図にも載らぬその場所は私たち普通の日本人には辿り着けず、現在の日本とは少し違った文化風習で生活している人々が居ます。一番大きな違いは季節。冬と春の間に“雷の季節”というものがあり、その時期には住民の誰かが消えていなくなることもしばしば。それは雷の季節特有の現象なので、住民たちはみな仕方のないことだと言う。
 物語が進むにつれて、主人公・賢也の姉がなぜ雷の季節にいなくなったのか、賢也に「風わいわい」が憑依した理由、「隠」の外の世界のこと、賢也の出自などが明らかになります。
 前半はずっと賢也の視点で進むのですが、途中からそれは様々な登場人物たちの視点が章ごとに入れ替わるようになり、出来事の側面を描き出します。そうすることで各々の関連性が少しずつわかってきて、一本の糸のように過去と現在が繋がるのです。私は、「藪の中」みたいなひとつの出来事を数人の視点から書いたものが好きなのでなんとも思いませんでしたが、人によってはこの章ごとに視点がかわる後半部に戸惑うかもしれません。時系列も多少前後するので。でも、最後にすべてが繋がって真相が見えたとき、戸惑った分カタルシスも大きいんじゃないでしょうか。
 ちょっと『夜市』所収の「風の古道」と通じるお話。あれ? そういえばレンて名前がどこかに出てきたような……。気のせいかな。もう一度読み返さないと。
 今回は、穏にやってくる幽霊や妖たちを門前で払う“闇番”の大渡がなかなかよかったです。彼はどうして闇番をしているのか。恨みつらみをくだくだと繰り返す幽霊たちの扱いに慣れている彼の過去が気になります。
 そうそう、気になるといえば!
 物語の終盤に出てくる早田という青年。彼がなんかちょっと只者ではない匂いがするんですよ。これはもしかして次回作への伏線……なんて勝手にいろいろ考えちゃいました。気になるなあ。恰好良いし(笑)

 それにしても、恒川さんはこういった異世界を書くのが上手いですね。奇想天外な異郷ではなく、現実の裏側、私たち日本人の原風景に通じるもうひとつの日本。どこかにもしかしたらあるかもしれないと思わせる懐かしさ。そういったものを見せてくれる。
 ジャンルは違うけれど上橋菜穂子さんの書く和風ファンタジーを読んだときと同じ郷愁を感じました。恩田さんの「常野」シリーズが好きな人にもお薦めかな。とても好きな世界観です。『夜市』『雷の季節の終わりに』共に、どこか幽寂でもあります。表紙もまたいい。内容とよく合った美しい表紙。店頭でも目を惹きますね。これからも恒川さんは要チェックだ〜。
2006.12.27 Wednesday * 09:30 | 恒川光太郎 | comments(2) | trackbacks(2)
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2011.01.19 Wednesday * 09:30 | - | - | -
Comment
明けましておめでとうございます。
今年も楽しみにしてます♪
恒川さんの本、出てたんですね。
私も「夜市」は読みましたが、印象に残る作品でしたよね。
怖いんだけども何故か懐かしさを感じたのを覚えてます。
この作品も異世界なんですね。
畠中さんの「しゃばけ」繋がりではないですが、妖怪風味?のお話は好きかも♪
さっそく買って読んでみますね。

| ねこ | 2007/01/06 11:59 PM |
新年おめでとうございます。
年が明けてもなかなかパソコンに触ることが出来なくて更新止まっちゃってますけど、ぼちぼちアップしますんで今年もまたよろしくお願いします。

恒川さんの本は表紙も中身も印象的ですよね。
「夜市」に続いて、これもまた不思議な雰囲気と懐かしさをもった作品でした。
| たかとう | 2007/01/11 7:53 PM |









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雷の季節の終わりに 恒川光太郎
装丁は片岡忠彦。書き下ろし。 異世界の町、穏に住む少年・賢也は姉の失踪後、物の怪「風わいわい」に取り憑かれます。ある秘密を知り町から逃れた先には…。 穏の慣習、雷季、風わいわい、墓町、闇番、鬼衆など魅力的な設定。穂高
| 粋な提案 | 2008/02/09 3:29 AM |
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