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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『闇の底』薬丸岳
闇の底闇の底薬丸 岳 講談社 2006-09-08売り上げランキング : 29735おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools

 面白かったです。乱歩賞を受賞した前作は少年犯罪を描いたものでした。今作は幼い子供を襲う性犯罪を扱っています。重罪を犯しても、数年経てば社会復帰してくる犯人たち。一向に無くならない同様の事件。自分の子供や姉妹を亡くした被害者家族は、どこに救いを求めればよいのでしょう。

 主人公の長瀬刑事には妹をそういった犯罪で亡くした過去があり、母親はそのショックで精神を病み、その母親と離婚した父親は現在再婚して幼い娘がいます。彼と共に捜査をする村上刑事には被害者たちと同じ年頃の娘がおり、作中には他にも娘を持つ登場人物が数名出てきます。誰もがいつ被害者家族になるかわからない状況。それは犯人との接点云々ではなく、社会それ自体が駄目になってしまったがための危機感です。そんな中起こる、幼女を襲う事件を抑止するためとうたった、前科者を狙った連続殺人事件。
 実はこの連続殺人事件の犯人にも幼い娘がいるのです。彼は娘を愛し、娘が健やかに成長できる社会を守るため、少女を狙う者たちへ向けてメッセージを発信しようと決めたのです。前科者をひとりひとり殺していくという手段を使って。

 犯罪を捜査する刑事たちからの視点と、連続殺人犯“サンソン”の視点両方が同時進行で進んでいきます。サンソンが誰なのかというのが最大の謎であり、彼である可能性のある登場人物が幾人も出てきます。私は、ラスト近くまでこの犯人を見破れませんでした。けれど、彼のもうひとつの犯行動機は理解できる気がします。すべては愛する娘のため。最悪な事態を迎える前に、彼はそうしなければならなかったのでしょう。自分ではどうにもできない衝動ゆえに。それを思うと、この『闇の底』というタイトルが薄ら寒いほど怖いものである気がしました。人の心の奥には深い深い闇があって、更にその底を覗いたら、どんなものが見えるのだろうかと。

 読み始めは、犯罪を抑止するための連続殺人という点でちょっと『DEATH NOTE』と似てるかなと思ったんですが、読み進んでいったらそんなことはまったくなかったですね。あっちはキラがどんどん当初の目的からずれていって神になろうとしちゃったけど、サンソンのほうは自分がなにをしているのかをよくわかっているので。

 このラストには意見が分かれると思います。私は余韻が残って好みでした。
 サンソンと家族たちの遣り取りがとても穏やかで哀しかったなあ。
2007.01.26 Friday * 20:51 | 薬丸岳 | comments(0) | trackbacks(0)
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2011.01.19 Wednesday * 20:51 | - | - | -
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