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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『江川蘭子』江戸川乱歩,甲賀三郎,夢野久作,横溝正史,大下宇陀児,森下雨村
 モボ・モガを父母として生まれてきた江川蘭子は、まだ物心もつかない二歳のとき、その両親を殺人事件の被害者として突如として失い、しかもその血みどろの惨劇の現場に放置されるという異常な状況の中に置かれたことから、その精神構造への影響が心配された……。世間はこの乱脈を極めた生活者である被害者に同情を寄せず、また犯人を挙げられない警察の無能を罵る者もなかった。が、蘭子は後年、みずから父母の仇討ちを目論んだ。「新青年」昭和五年九月号から六年二月号まで、江戸川乱歩の発端から横溝正史・甲賀三郎・大下宇陀児・夢野久作・森下雨村と書き継がれた合作探偵小説「江川蘭子」。――妖艶江川蘭子の魔性の生涯に、血みどろの夢はいかに叶えられるか……。

 いやあ、豪華な面子ですねえ。乱歩に横溝、夢野や甲賀三郎などなど、当時の第一線作家たちの合作リレー連作探偵小説です。書いている順番は、
■江戸川乱歩「発端」(「赤き泉」「軽業師」「眠り薬」)
   ↓
■横溝正史「絞首台」(「蘭子の倦怠」「モダン・サロメ」「あざみの花」「陰気な一家」「死刑執行人」)
   ↓
■甲賀三郎「波に躍る魔女」(「狂った混血児」「幽霊屋敷」「黄死病」「波に躍る美女」「奇怪な手紙」)
   ↓
■大下宇陀児「砂丘の怪人」(「妙子失踪」「犠牲者の首」「伝右衛門の秘密」「砂丘の怪人」)
   ↓
■夢野久作「悪魔以上」
   ↓
■森下雨村「天翔ける魔女」

 乱歩はもともと魅力的な設定や謎を提示するのが上手くて、その大風呂敷を畳むのが不得手なところがあるので、トップバッターとしてはそりゃもうぞくぞくするような冒頭シーンを展開してくれます。惨殺死体となった両親の血の池の中で、何も知らずに無邪気に遊ぶ赤ん坊、なんて印象的な幕明けでしょう。
 とはいえ、なんの打ち合わせもせずに各々好きなように書き、「じゃ、次お願い」と回すわけですから、話そのものは迷走気味(笑)。後のほうの書き手は苦心惨憺。読んでいてもそこらへんはよくわかります。森下雨村は頑張った!

 盛り上げるだけ盛り上げて独自の妖しい雰囲気を振りまいた乱歩、それを引き継いで「あざみの花」や「城山一家」などの伏線を張った横溝、前者ふたりの作風に戸惑いながらもなんとか本格物として成立させようと謎を提示した甲賀三郎、物語の側面にスポットライトを当てて上手くかわした大下宇陀兒、そんな中で天上天下唯我独尊どこまでも自分の道を突っ走りアンカーでもないのにあちこち解決しちゃったり好みのものをどどーんと出しちゃう夢野久作、多分夢野の展開に呆然としたであろうになんとかまとめようまとめようと頑張りながらも玉砕した感が泣ける森下雨村。

 整合性とか出来不出来を云々するのではなく、「あらら、あららら」と話がどこへ行ってしまうのかを楽しむのが一番いい読み方かも。

Amazonでは書影が出ないので、自分のやつの画像をアップしておきます。参考までに。
評価:
江戸川 乱歩,甲賀 三郎,夢野 久作,横溝 正史,大下 宇陀児,森下 雨村
春陽堂書店
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(1993-10)
2007.03.08 Thursday * 18:23 | 江戸川乱歩 | comments(0) | trackbacks(0)
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2011.01.19 Wednesday * 18:23 | - | - | -
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