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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『雨の恐竜』山田正紀
評価:
山田 正紀
理論社
¥ 1,470
(2007-03)
 たった一日が過ぎただけでもう渓谷に警察の姿はなかった。吊り橋の両側に青いテープが張りめぐらされていた。渓谷から風が吹きあげていてテープの橋が音を立てて揺れていた。淋しい音だった。何かが決定的に終わってしまったという印象が強かった。
 ――終わってしまったのはわたしたちの少女時代かもしれない。(本文より)

 恐竜の化石発掘現場がある田舎町で、ある日事件が起こった。14歳のヒトミが通う中学の映画部顧問、浅井が吊り橋から転落死したのだ。事故か事件かはわからないが、ただひとつだけその現場には恐竜の足跡らしきものが残されていた。犯人は恐竜なのか? ヒトミは幼馴染でありながら疎遠になっていたサヤカやアユミと共に、それを調べ始めるのだが……。
 理論社から新設された新叢書シリーズ《ミステリーYA!》の第一弾。まず装丁が美しくて店頭で目を惹かれました。タイトルを雨の雫が囲っていて、背表紙も同じようになってるんですよ。表紙を見ても美しいし、書棚に差しても背表紙がまた映える。本文も見やすいフォントとレイアウト。そして頁数の部分はやはり雫で囲われています。
 肝心の中身はというと、ミステリ仕立てだけれどファンタジーであり、青春小説でありました。それでいて結構どろっとしたテイストもあって、14歳の少女たちから見た大人世界の嫌な部分や閉塞感が全体に漂ってましたね。それを嫌だ嫌だと思いつつ、大人の都合で振り回される子供という立場から脱したいという願いもある。読後の印象は、ミステリがどうとか謎解きがどうとかいう話よりも、子供から大人へと脱皮する瞬間のせつなさみたいなものがすーっと目の前を横切っていくような感じ。

 恐竜なんて現代にいるはずがない、けどそれじゃ残されていた足跡はなんなのか? これが第一の謎。そして第二の謎は、ヒトミ、サヤカ、アユミの中にある恐竜と遊んだ記憶。第三の謎は、二十年前にも今回の件と同様の恐竜の足跡と共に見つかった死体があったということ。もうひとつおまけに、ヒトミは浅井先生と仲良くしてたわけでもないのに、その死の周辺を調べることになる、その理由はなんなのかというところもちょっとした謎ではありましたね。それは読み始めてすぐに見当がつくんだけど。
 全体を貫くのは、少女が子供から大人へと脱皮する瞬間とその前後のぐるぐるした感情なので、こっちも同じところをぐるぐる歩かされているような気持ちに多々なりました。遅々として進まない謎解きと、結構な割合を占める恐竜話に、軽くイラッとしたり。ノスタルジックでせつなさの漂うラストに「ま、いっか」と思わされそうにもなったけど、君音(クイーン)くんの扱いは可哀相だー(笑) 一向に謎を解かない主人公たちに変わって、謎解き要員として出てきたキャラである君音くん。それなのに世渡り上手でいやなヤツと嫌われています。不憫な……。彼がいなかったら謎は解かれなかっただろうに、登場人物たちの誰もそれを評価せずに謎解きなんぞどうでもよくなっているあたりが本当にかわいそうです。名探偵好きとしては「彼に救いを〜」と思っちゃいました。
2007.04.10 Tuesday * 20:15 | 理論社ミステリーYA! | comments(0) | trackbacks(0)
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2011.01.19 Wednesday * 20:15 | - | - | -
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