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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『闇の守り人』上橋菜穂子
評価:
上橋 菜穂子,二木 真希子
偕成社
¥ 1,575
(1999-01)
 からだについた傷は、ときがたてばいえる。だが、心の底についた傷は、わすれようとすればするほど、ふかくなっていくものだ。
 それをいやす方法はただひとつ。
 きちんと、その傷をみつめるしかない。(本文より)

 本書は『精霊の守り人』の直後、チャグムを守りきったバルサは、タンダやトロガイと別れ、それまで忘れようと務めていたつらい自分の過去と向き合うため、数十年帰っていなかった生まれ故郷のカンバル王国にやってくる。昔、父を殺されたバルサは父の親友ジグロに助けられ、故郷を去ったのだった。そのことがどういう形で語られているのかようやく知ったバルサ。ジグロに着せられた汚名を晴らそうとするのだが――。

 前作から一転、女用心棒バルサの過去にまつわる陰謀と現在の故郷の様子が描かれた、これだけ単独で読んでもまったく支障のない話です。でも、やっぱり前作『精霊の守り人』を読んでいたほうが、バルサの回想シーンに出てくる人々の名前や、新ヨゴ皇国と比較した際のカンバル王国の貧しさがくっきりと際立って感じられることでしょう。潤った国ヨゴとは違い、ヤギを飼い、数年から数十年に一度<山の王>から送られる宝石によって生活が成り立っているカンバル。武人たちは冬になると出稼ぎへ出かけ、家を離れる。
 前作でちらっとバルサの口から出ていた、育ての親ジグロとバルサの過去がはっきりとわかる今回は、「精霊〜」とはまた違った、人の心や世の中にある「闇」について描かれていました。
 ヨゴとは違う神話や伝説のあるカンバル。私たちのいるこの世界もそうですが、土地が違えば価値観も思想も変わるのだということが無理なく自然に描かれていて、今更ながら、上橋さんの中にこの物語世界がくっきりと存在しているんだなと思いながら読んでいました。
 卑劣な前王や氏族の英雄が出てきます。卑劣ではあるけれど、彼らにとってはそれは当然の行為であり、とってつけた悪役ではない生々しい賢さや狡さがあって、なんかもうめちゃくちゃ腹立つんですよ(笑) 本を読んでいて本気で怒ってる私。そしてそんな彼らと相対したときのバルサの格好よさといったら――。「運命」という言葉で片付けることを許さない強さに惹かれますね。
 ジグロがバルサを守るために刺客を殺すたびに泣いていたその本当の理由がわかったとき、奸計は深く非常なもので、最初に見えたように思われたものよりももっと複雑に絡み合った苦味と哀しみがあったことに気づかされます。
 終盤の山場である闇の守り人<ヒョウル>との対峙は圧巻でした。このシリーズは、戦闘シーンの迫力も魅力のひとつだと思います。

 話の中にティティ・ラン<オコジョを駆る狩人>というのが出てくるんですが、それがもう可愛くて凛々しくて、今回だけでなくまたどこかで出てきてくれることを望みます。私は書籍版で読んでいるので挿絵もあったんですが、ほんとに可愛い。オコジョに乗った小さい人なんですけどね。
2007.04.24 Tuesday * 18:17 | 上橋菜穂子 | comments(0) | trackbacks(1)
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2011.01.19 Wednesday * 18:17 | - | - | -
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闇の守り人/上橋菜穂子
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