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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『The MANZAI 2』あさのあつこ
評価:
あさの あつこ
ジャイブ
¥ 567
(2006-03-02)
「歩、あのな」
「うん?」
「忘れんといてくれな」
「え?」
「おれ、いつでも傍におるからな。おまえのことだけは、絶対、裏切らへんからな。そこんとこ、忘れんといてくれな」(本文より)

 同性とか異性とか関係なく、自分が誰かの「特別」になるってことは、ある意味誰しもが心の底に持っている夢だと思う。十代の頃にありがちな、その他大勢に埋もれたくないという顕示欲や、選ばれた何者かでありたいという自尊心の芽生えとはまたちょっと違う。誰かにとって意味のある存在になりたい。誰かに必要として欲しい。支えられるだけでなく、支えたい。そういう両方向からの関係性を望むのは、自然と生まれてくる感情じゃなかろうか。

 このシリーズの主人公、瀬田歩(せたあゆむ)は秋本貴史(あきもとたかし)から、毎日毎日「おまえはおれの特別なんや」という言葉を浴びせられている。それはもう文字通り、浴びるように言われている。歩はそれを表面上は鬱陶しがっていながらも、いざというときには彼の言葉に支えられて一歩を踏み出す。
 一巻目では、秋本が歩に「お付き合い」(漫才のコンビを組むこと)を申し込み、嫌がる歩を押せ押せで流して、ほっぺにキスまでするというギャグ色の強い内容と、父と姉を事故で亡くした歩の状況がメインだったけど、この二巻では漫才の場面はなくて、仲間のひとりが受けた嫌がらせ事件や近所で起こったホームレス襲撃事件などがメインとなって、歩や秋本の周りにある現実を見せてくれる。
 全部が全部ハッピーエンドというわけにはいかず、人が傷つけられたり、誰かと出会ったり、人間の中にある優しさと暴力というものを知ったりした上で、「自分の自尊心を裏切らない」生き方をしようとする歩に、一巻目ではまだそれほど感じなかった青春小説としての骨太さを感じた。

 もうひとつの肝である秋本の歩に対する気持ちは、正直一巻目を読んだ時には、このシリーズを明るくし軽みを出すための甘い調味料かと思っていたんだけど、二巻目を読んでちと印象が変わったかな。結構マジではないですか、秋本。そして深いじゃないですか。人が人を好きになる、誰かが誰かを必要とする、自分が誰かの特別になる、そのことに異性も同性もあるか?という意外にも直球な問いを投げかけられているような。
 「いやん、秋本ったら、読んでるほうが照れるやん」とツッコミながら読むのも楽しいけれど、こういう言葉を歩に言い続ける秋本の心のうちを覗いてみたくもなる。時々、はっとするくらい恰好良い一面を見せる彼だけに。
 父と姉を事故で亡くし、精神的に不安定な部分を持った母親と暮らす歩と、未婚で自分を産んだ母と暮らす秋本。母親が営んでいるお好み焼き屋で酔っ払いが酷い言葉を投げつけたとき、歩が秋本の母親を庇った姿にも心の中で拍手を送ったけど、その酔っ払いに殴られそうになった歩を助けた秋本がこれまたすごーく恰好良かった。「ああ、私、あさのさんの狙い通りに嵌められてるわ」と思いながらも秋本の株が急上昇するのを止められなかった。それに冒頭で引用したように、ちゃんと歩のことを見ているんだよなあ。なんかもう、歩もなんだかんだいって秋本を嫌いではないんだし、このまま秋本に押し切られて幸せになってしまえよ君たち、という気分。
 この秋本の歩への気持ちは、能天気にくっつくくっつかないって話じゃないのはわかるけど、どうしても気になる部分でもある。あさのさんはどこまで書くつもりなのか。つきつめるととても深いところまでいってしまいそうだけど、さすがにそこまでは書かないだろうなあ。
2007.05.14 Monday * 16:17 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)
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2011.01.19 Wednesday * 16:17 | - | - | -
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