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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『ブーの国』明川哲也
評価:
明川 哲也
文藝春秋
¥ 1,600
(2005-11)
「どんなに希望のない物語であろうと、悪辣な人物ばかりの物語であろうと、それを語るということはな、ケサン、生を味わうということなんだよ!」(本文より)

 飢餓や病気に苦しむ子供たちにも、一時それを忘れさせるだけの力が物語にはあると、誰かがどこかで書いていた。中島梓の評論の中だったかもしれない。この本を読んだ直後、そんなことを思い出した。

 ブーの国とは、一本の青クヌギの木の中に溜め込まれた膨大な物語の中の世界らしい。そこから「大仏歩く」「嗅ぎ屋プノンペン」「影屋の告白」「願い屋と幻灯屋」の四つの話が語られてゆく。
 動き出した大仏の話、亡くなった兄の匂いを追い続け嗅ぎ屋として生計を立てるようになった男の話、人の罪を吸い取るという影屋の話、誰かの代わりに人に頭を下げる願い屋と彼に立ち退きをお願いされる幻灯屋の話など。
 今の日本と似ているけれど細かい部分(特に社会のヒエラルキーや職業など)がまったく異なる不思議な世界観で、かといって綺麗なファンタジーではなく、どろっと暗い背景が登場人物たち全員にある。みんな不器用で、そして様々な理由で虐げられてきた人たちだ。人生を諦めたり投げやりになってもおかしくないほど、底辺を這いずり回っている人たち。それでも彼らはぎりぎりまで生き続けているし、彼らが生きている限り物語は紡がれていく。こんな書き方をすると、よくある泣ける話かと思われるかもしれないが、そうじゃない。暗くてつらくて、でも、それも生きてるってことのひとつの証なんだなと思う、そういう話。
 ひとつひとつの話がリンクしていって、最後の一編でひとつにまとまる。まとまるだけではおさまらず、ラストにほんの一瞬の光を見せてくれる。それまでの暗さが払拭され、つらさやかなしさが昇華された、と思える光景。希望とか優しさとか、そういうものとは微妙に違う、上手く言えないカタルシスを感じた。

【収録作】
 大仏歩く/嗅ぎ屋プノンペン/影屋の告白/願い屋と幻灯屋

 本ブログ 読書日記
2007.06.21 Thursday * 20:18 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)
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