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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『リンさんの小さな子』フィリップ・クローデル・著 高橋啓・訳
リンさんの小さな子リンさんの小さな子
フィリップ クローデル Philippe Claudel 高橋 啓

みすず書房 2005-09
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 長く戦禍にある故国を遠く離れて、異国の港町に難民としてたどり着いた老人リンさん。彼は、奇跡的に助かった生後間もない孫娘サン・ディヴを抱いていた。まったく言葉の通じないこの町の公園でリンさんが知り合ったのは、妻を亡くしたばかりで悲しみに暮れる中年の大男バルク。次第に深まる友情。しかし……。

 新年最初の感想です。去年のうちに読んでいたんですが、年明け第一弾はこれと決めてました。
 リンさんとバルクは、言葉も通じず互いの名前すら正しく名乗りあうこともないけれど、それでも友情を育てていきます。積極的に親しくなろうとするのとはちょっと違う、心に深い傷を負った者同士がぎこちなく寄り添い合っていくうちにいつしか互いを必要としあう姿が、静かに静かに描かれていきます。
 リンさんはたったひとりの身内である孫娘を大事に大事に抱いています。その様子は、同じ難民たちからも嘲笑と苦笑の的になります。みんな辛い目に遭ってきたはずなのに、収容所の中でさえ侮蔑や差別が生まれていくのが、殊更取り立てるわけでもなくさらりとした筆致で触れられていました。同じ祖国を持つ難民たちよりも、まったく言葉の通じないバルクとリンさんの間に友情が芽生える。人と人が繋がりあうのに、言葉は必須ではないのかもしれません。とても重要なツールではあるけれど、微笑みや目線でも気持ちは伝わるから。
 せっかく仲良くなったふたりですが、リンさんは収容所から更に介護施設のようなところへと移動させられてしまいます。衣食住は足りているけれど、心の痛みを癒してくれる友はそこにはいません。サン・ディヴを腕に抱き、バルクに会うために施設を抜け出したリンさんですが……。この結末は、人に話を聞くのではなく、是非読んで味わってほしいです。くれぐれもラスト数ページをチラ見などしないように!

 印象に残っているのは、バルクがサン・ディヴに美しいドレスをプレゼントしてくれるところと、リンさんがバルクに歌をうたってあげるところ。
 戦争という大きな悲劇をバックボーンに持つ、静かで美しい物語です。
2006.01.03 Tuesday * 01:28 | 海外その他 | comments(0) | trackbacks(0)
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2011.01.19 Wednesday * 01:28 | - | - | -
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