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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『食堂かたつむり』小川糸
評価:
小川 糸
ポプラ社
¥ 1,365
(2008-01)
 私は洗い立ての手のひらで、それらの食材にそおっと触れた。そして、生まれたばかりのちいさな命を慈しむように、ひとつひとつ、両手で持ち上げては顔の近くまで抱き寄せて、目を閉じたまま数秒間、食材達と言葉を交わす。
 誰から教わったわけでもないのに、気がつくと私は、料理を始める前、いつもこの儀式をするようになっていた。(本文より)

 失恋と共に家財道具も財産もなくした倫子。ショックで声までも失った彼女は、故郷へ戻り、昔から確執のある母に資金を借りて「食堂かたつむり」を開く。その食堂は、一日に一組の客しか扱わない。そして事前にメールやファックスでやりとりし、それぞれの客に合うと思われる料理を出す。なぜか彼女の料理を食べた人たちにはささやかな幸福が訪れ、やがて評判になっていくのだが――。
 倫子が故郷に戻って昔馴染みの“熊さん”に助けてもらいながら、コツコツと手作りで食堂を作り上げていく過程が楽しかったです。椅子を塗ったりテーブルクロスを縫ったりと、お金がないという第一の理由の他に、自分の城を築き上げていくワクワクした感じが伝わってきました。それは料理の場面にも感じられました。手元にある素朴な食材からふんわりと温かい料理が出来上がっていく。物作りと料理は似ているのかも。
 ただ、物語そのものに関してはやや甘さを感じます。誰をも惹きつける吸引力がある本と、波長が合う人には溜まらなく大事にされる本があるとしたら、これは後者でしょう。
 テーマは再生と修復かな。料理をするということ、食べ物をいただくということは、他者の命をもらっているということだというのを痛感するエピソードが後半出てきます。それがあることでそこまでのやさしい雰囲気が壊れたと感じる人もいるでしょうが、私はその場面でようやく倫子の料理人らしい姿を見たように思いました。それまでも料理をしている描写はたくさん出てきますが、どれもどこかおとぎ話めいていたんですよね。
 「王様のブランチ」で作者の小川さんがこのお話の中に出てくる“ジュテームスープ”を作ってました。他のメニューも見てみたかったな。ある家族が、ボケたおじいさんのために全員で食べに来るお子様ランチとか。

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2008.06.19 Thursday * 18:42 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(1)
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