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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『虚夢』薬丸岳
評価:
薬丸 岳
講談社
¥ 1,575
(2008-05-23)
『刑法三十九条』
 心神喪失者の行為は、これを罰しない。
 心神耗弱者の行為は、その刑を減刑する。

 『天使のナイフ』で乱歩賞を獲った薬丸さんの第三作目。少年犯罪、児童を対象とした性犯罪をテーマにしていた薬丸さんが次に取り上げたのは、精神鑑定によって不起訴や無罪となる犯罪についてでした。
 もし自分の愛する人を、家族を、殺した人間が刑務所にも行かず、裁判にかけられることもなく、わずか4年足らず後に街中ですれ違ったとしたら、どんな気持ちになるでしょう。話は「心神喪失」状態の通り魔に愛娘を殺された三上、事件が原因で三上と離婚した佐和子の再婚相手坂本、家出をしている風俗嬢ゆきの視点で進みます。この複数視点で語られる構成のせいか、前二作よりも若干読み進む速度が上がりました。場面転換が多いので、ぱっぱとページが進む感じ。
 三上の視点では心神喪失とはいったいどういう状況なのか、殺人を犯す瞬間は誰もが異常な心理状態なのではないか、なぜ人を殺して罪を問われないのか、といった犯罪被害者の家族の苦悩が描かれています。三上と佐和子が離婚した原因は、事件後佐和子が精神を病んだことにあるのですが、それを知らずに再婚した坂本の視点では佐和子の異常性が描かれ、それはそのまま一般的な精神障害者に対する周囲の反応でもあります。そして風俗嬢ゆきの視点では、精神疾患のある弟を持ち周囲から差別や嫌がらせを受けた経験が、過去の話として描かれます。三上の娘を殺した藤崎や藤崎と同じ病名と診断された佐和子、ゆきの弟らの視点が出てこないのは、当然といえば当然。彼らの見えているものを、私達は知ることが出来ないのですから。
 しかし、そうなると完全に理解することの出来ない彼らが犯罪を犯したとき、その精神を鑑定するということは果たして可能なのでしょうか。医師によっても鑑定結果に違いが出るとも聞きます。人の心に唯一の答えや方程式がない以上、なにを正常とし、なにを異常とするのか。負うべき責任能力とはどこからどこまでなのか。難しい問題ですが、考えずにはいられません。
 ただ、「精神に障害のある人」と「精神に障害のある犯罪者」を混同してはいけないと思いました。精神に障害がある場合、その言動を私達はなかなか理解できず、そして理解できないものに対して恐怖を感じます。その恐怖が差別となるのだということにも、本書は触れていました。
 次は、逆の視点から書かれた帚木蓬生氏の『閉鎖病棟』を読んでみようかな。

【この著者の他作品感想】
 『天使のナイフ』
 『闇の底』

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2008.07.26 Saturday * 02:35 | 薬丸岳 | comments(0) | trackbacks(0)
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2011.01.19 Wednesday * 02:35 | - | - | -
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