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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『神様ゲーム』“God's truth” 麻耶雄嵩
神様ゲーム神様ゲーム
麻耶 雄嵩

講談社 2005-07-07
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 小学4年生の芳雄の住む神降市で、連続して残酷で意味ありげな猫殺害事件が発生。芳雄は同級生と結成した探偵団で犯人捜しをはじめることにした。そんな時、転校してきたばかりのクラスメイト鈴木君に、「ぼくは神様なんだ。猫殺しの犯人も知っているよ。」と明かされる。大嘘つき? それとも何かのゲーム? 数日後、芳雄たちは探偵団の本部として使っていた古い屋敷で死体を発見する。猫殺し犯がついに殺人を? 芳雄は「神様」に真実を教えてほしいと頼むのだが……。

 麻耶さんの本を読むのはこれが初めて。好きです、こういう最後の最後でちゃぶ台を引っ繰り返すようなことをされるの(笑) それから、随所に出てくる鈴木君(神様)と芳雄の対話のシーンも好きでした。主人公達が夢中になっている戦隊ヒーローものの名前がラビレンジャーで、ジェノサイドロボだのネクロフィリアだのが出てくるのは、ちょっと笑えなかったですけど。
 このお話の面白いところは、神様だと名乗る少年が登場するところ。そしてあっさりと事件の犯人を教えてくれるところ。なにせ神様なので、彼が間違えるはずがありません。(鈴木君を神様だとしない場合の感想はひとまず置いておきます) すべてを知る神様がそこにいるのならそれ以上あれこれ行動しなくてもよくなるところを、神様は「嘘はつかないけど、本当のことを包み隠さず話すわけでもない」と定義することで、今度は「Why done it?」や「How done it?」を知るために主人公は動いてゆく。この、決して間違ったことを言わないけれどすべてを教えてくれるわけじゃないっていうのが、ミソですよね。結論に至るまでの起点や過程、周辺の事情なんかがごそっと抜け落ちているわけですから。ミステリとしては、伏線や手掛かりから「これしかない」というたったひとつの真実に向かって進んで行くのが普通で、このお話もそういう風に転がっていきます。

 が! 主人公の目を通して次第に見えてくる真相に納得したところで、ひっくり返されるんですよね、ちゃぶ台が(笑) せっかくそれまで目撃証言やら証拠やらをコツコツと並べていたのに。「なにー!?」とびっくりしたところで話は唐突に、それこそ打ち切られるように終わります。「ちょっと待った、ちょっと待った。ええと…」と提示された真犯人でもう一度事件を見直して、いくつかの伏線を見つけるものの、どうにもあやふやだったりどうとでもとれそうだったりして、「これしかない」という結論には至らない。けれど、その犯人は間違いないわけです。だって神様がそう示したのですから。
 でも読者が納得する説明はそれ以上なされない。だから今度は、鈴木君は本当に神様だったのかどうかを考え出します。もし彼が神様でなかったとしたら、それまで彼の言ってきた「絶対の事実」が「正しいかもしれないし、正しくないかもしれないこと」になってしまうわけで、そうするとこのお話の大前提が覆り、殺人事件や神様によってなされた天誅は事故や偶然ともとれてアンチミステリになってしまう。謎が解かれることを前提に読み進んできた読者の胸には、もやもやが残っているばかり。英語のタイトルが“God's truth”なのも意味深ですよね。「ゲーム」じゃなくて「真実」ってところが藪の中っぽい。ところがこのなんとも据わりの悪い感触が、私には面白く感じられたのです。なんたって、中井英夫の『虚無への供物』好きなので。そういえば、主人公の名前「芳雄」っていうのは、少年探偵団の小林少年の下の名前からとったんでしょうか。
 ラストで示された人を真犯人として考えてみることもできますよね。その場合こんな風にも考えられるってだけで、「これしかない」というものにはなりませんけれど。



 ※ここから先はネタバレを含む想像がありますので、未読の方はご注意くださいね。


 ここの記述でこうあったからこうだ、という風な説明のつく考え方じゃないので、流して聞いてくださいな。

 事件のあった日、秘密基地でミチルと「エッチなことをしていた」のは彼ではなくて彼女だった、っていうのは別にいいですよね。まあ、そういう性癖もあるでしょうし。あと、冒頭の部分で彼女が小柄で息子と近い身長差であると触れられているので、フタに隠れることができるっていうのもまあいいかな。それから「共犯者はひとり」だと鈴木君が言ってますから、3人で共謀ってセンは消えますよね。
 で、彼女が共犯者だとすると辻褄が合わないと思われるのは、ミチルが主人公に彼へ電話をかけさせたところと、その彼が証拠である足跡を消して証拠隠滅を図ったであろうってところでしょう。彼が共犯者でないならなぜそうしたのか。でもそれって、結構ありそうではないですか?
 例えば、以前から彼が彼女とミチルがそういう関係で、しょっちゅうあの場所でそういう行為をしているのを知っていたとしたら。そうしたら、彼があまり家に帰ってこないのは仕事のせいばかりじゃなくて、むしろ仕事にかこつけて彼女から距離を置いているとも思えます。彼女の行為が先が、それともそういう行為に走る原因が先にあったのか。ありがちなのはどちらかの浮気ですが、彼が浮気をしたとしても彼と芳雄が似ていないところから、彼が他所に作った子供というわけでもなさそうだし、芳雄が自分は本当の子じゃないのかと訊ねたときの反応から、彼女が誰かと浮気をしてできた子供とは考えられない。となると、そもそもあのふたりに夫婦関係にあったかどうか。もしかしたら偽装結婚かもしれませんよね。彼は男性が好きで彼女は女性が好きで、それでお互いカモフラージュのために結婚をし、芳雄を養子にしたのかも。芳雄が電話をかけたとき彼が庭にいたとしたら、彼は彼女たちの様子を伺うために潜んでいたのかもしれない。
 どちらにしても、彼女の行為が世間に知れていろいろ取り沙汰されるようになると、彼の立場も危うくなるわけです。だから、彼女を庇うために、自分を守るために、ああいうことをしたのかも。もちろん、そこに愛があってもよいのですが。むしろ息子を守ろうとしてくれたのだったら、まだ救われます。
 そして、つねづね彼女から彼が自分たちのしていることを黙認していると聞かされていた(または、自分たちを覗き見ていたことを知っていた)ミチルが、あの場で咄嗟に彼へ電話をかけさせたとしても、おかしくないのでは?
 この場合、彼は彼女達と打ち合わせたわけでもなくはっきりと頼まれたわけでもなく、自分の判断でそうしたんですから「共犯者」としてカウントされなそう。鈴木君は間違ったことは言わないけれど、それに関わるすべてを話してくれるわけじゃないですから。

 とまあ、想像というより妄想に近いですね、こりゃ。
 でも、読後いろいろと想像できて楽しかったです。
2006.01.20 Friday * 00:38 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
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2011.01.19 Wednesday * 00:38 | - | - | -
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