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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『夜市』恒川光太郎
夜市夜市恒川 光太郎 角川書店 2005-10-26売り上げランキング : おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools

 第134回直木賞候補にも挙げられた、第12回日本ホラー小説大賞受賞作。表題の「夜市」と「風の古道」の二作から成っています。
 ■夜市
 今宵は夜市が開かれる。
 大学生のいずみは、高校時代の同級生裕司から夜市に行こうと誘われる。裕司に連れられて出かけた岬の森では、妖怪たちがさまざまな品物を売る、この世ならぬ不思議な市場が開かれていた。

 雰囲気が良いですね。異形の者や不思議な商品の並ぶ、夜市。その市の描写がしっとりとしていてどこか懐かしい。よく「髪は鴉の濡れ羽色」なんて言いますが、夜の暗闇には湿った匂いがしますよね。そんな湿り気を含んだお話だと思います。この本の表紙のように、暗闇の中に朱やオレンジ色したカンテラの明かりがぼうっと浮かび上がっている中を、自分も裕司に手を引かれて歩いているような。
 夜市では、お金さえ払えばなんでも手に入る。それはなにも形あるものばかりではない。しかし、なにかを買わなければそこから出ることは出来ない。過去に一度迷い込んでしまったことのある裕司は、そこから出るためにあるものと引き換えに野球の才能を買ったという。そしてそれを悔いて取り返したいと思っている。いずみにしてみれば迷惑な話ですが、これまでの裕司の鬱屈とした思いを考えるとそういう行動にも出ちゃうかな。誰も信じてくれなかったことの、証人になって欲しかったのじゃないでしょうか。
 話の途中までは、冒頭を読んですぐに想像のつくものでした。けれどその先の、裕司が過去に売ってしまったモノのその後とこのお話の終わり方が好みでした。ひとつの出来事の表と裏の両面を描いた話って好きなので。物語が閉じてゆく余韻もよかったです。
 もし私が誰かに夜市に誘われたら……う〜ん、怖いけどちょっと行ってみたい気もするなあ。
 ■風の古道
 7歳の頃、不思議な道に迷い込んだことのある「私」は、12歳の夏休みにその話を友人のカズキにしてしまう。ふたりしてもう一度その道に入り込むことに成功するが、そこは人ならぬ者たちの通る道だった……

 古道は、堅固で透明な膜に隔てられた異世界といったところでしょうか。そこにはお化けや鬼や亡者もいるし、茶屋や宿屋を営んでいる者たちもいる。宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」のような雰囲気もあり、少年たちの冒険物として読み進めていたんですが、途中からは単なるほのぼの冒険物ではない、不思議な重たさと悲しさのあるロードムービーのようでした。そういえば、『スタンド・バイ・ミー』も死体や拳銃が出てきて、物語に影が差してましたっけ。
 死んだ人間を生き返らせてくれるという噂のある寺へ、古道で知り合ったレンという青年と共に主人公は向かいます。途中、現世へ帰れる場所があったのですが、「私」は古道の中に戻るのです。
 このレンという人物がですねー、なんだかとても良いのですよ。
 強い個性とかアクだとかはないんだけど、妙に印象に残る。水のような、風のような、そんな人。漆原友紀の漫画『蟲師』の主人公ギンコを思い出しました。旅の後半、彼の生い立ちがわかると、なんともやるせないような気持ちになります。あちら側から出られずに、ずっと古道の中を旅し続けるレンはいつまでそうしているんだろうと。茶屋や旅籠があるくらいですから、誰かいい人と出会って幸せになってくれるといいんだけど。
2006.03.03 Friday * 00:53 | 恒川光太郎 | comments(2) | trackbacks(2)
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2011.01.19 Wednesday * 00:53 | - | - | -
Comment
こんばんわ。
『夜市』の後半部分の展開、私もとても好みでした。『古道』の方もですが、秘密というか真相というかそういうものの、小出し方が好みです。
それからレン!良いですよね。『古道』の永久放浪者というのは、悲しいことでもあるけれど、旅した先でまたひょっこりと出てきて欲しいような…と思ってしまいました。ギンコってなんか分かります^^では。
| romi | 2008/06/01 9:55 PM |
レンいいですよね〜。
彼のその後を読んでみたいとも思います。あそこから永遠に出られないのはとても辛いかもしれないけれど、逆にあの中で生きていく術を見つけられそうな気もします。
というか、そうやってしかやっていけないんでしょうけど……
どちらも余韻のあるお話でしたね。
| たかとう | 2008/06/03 3:37 PM |









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夜市 恒川光太郎
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