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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『“文学少女”と慟哭の巡礼者(パルミエーレ)』野村美月
評価:
野村 美月
エンターブレイン
¥ 651
(2007-08-30)

 教えてほしい。きみが望むなら、なんでもするから。
 ぼくの手でも、足でも、目でも、命でも、なんでもあげるから。
『銀河鉄道の夜』に出てくる蠍のように、永遠の炎に焼かれてもかまわないから。(「五章 敗れた少年」より)

 先日出た“文学少女”シリーズ最新刊を買って、積読状態になっている既刊分を読むモードに入りました。ついつい買ってすぐにオイシイところだけ拾い読みしちゃって、おおまかなストーリーと要所要所を味わって気が済んじゃう悪い癖が出るんですよね。ライトノベルは特にそう。
 今回は宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』がテーマです。この本をここで持ってくるのか、とちょっと驚きました。もっとラストにくるかと思っていたので。

 遠子先輩が本格的な受験期に入り、たったひとりの文芸部員となった井上心葉(このは)は琴吹ななせと初詣デートをして、少しずつその距離が近づいているように見えた。しかし突然ななせが怪我をしたと聞き、その入院先へ見舞いに行くと、そこでひとりの少女と再会する――。

 ついに出ました。前巻あたりから「出るぞ、出るぞ」と色濃くその存在を主張してきた朝倉美羽の登場です。心葉の心に今も深々と残る傷の原因であり、心葉が幼い頃からずっと大好きだった少女。これまでは心葉の独白の中でした出てこなかったので、心葉の目を通した美化された美羽しか読者は知らなかったのですが、今回本人が登場したことでそれがひっくり返ります。今まで4巻分の心葉の独白がすべてこの巻のための長い長い前振りだったのだな、と思わせる展開でした。
 盲目的な憧憬や恋心は、向けられた相手にとってどれほど負担になるものでしょう。このシリーズは、毎回結構胸の痛い話になるのですが、それらの総決算と言ってもいいくらい重苦しい空気が満ちていました。それというのも語り手である心葉がどん底で泥沼にどっぷりはまりこんでいるからで、今回ばかりは心葉にイライラがMAX。友人の芥川君も一緒に泥沼に引きずり込まれているし、心葉を想うななせの健気な行動もなかなか状況を打破する一撃にはなりません。
 ところが3分の2をこえるあたりから、一気に収束へ向けて話が展開して行きます。それまで停滞していただけにここからはあっというまでした。溜まっていた澱が洗い流されるように、遠子先輩の語りでガチガチに絡んだ登場人物たちの感情が解れていきます。さすが今回のテーマは「銀河鉄道の夜」だけあって、こんなにドロドロしているのにラストはきらきらと水晶の砂が舞う「プリオシン海岸」のようでした。

 ここでこのシリーズも一段落。次からは遠子先輩の謎に迫ることになると思いますが、私としては、人間らしい感情を持てない竹田さんの今後が気になります。

【このシリーズの感想】
 『“文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)』
 『“文学少女”と飢え渇く幽霊(ゴースト)』
 『“文学少女”と繋がれた愚者(フール)』
 『“文学少女”と穢名の天使(アンジュ)』

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2009.09.07 Monday * 17:11 | ライトノベル | comments(0) | trackbacks(0)
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