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評価:
柳 広司
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,575
(2009-08-25)
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“死んだスパイなど他人の古靴ほどにも役に立たない”。
スパイにとっては死がすべての終わりなのだ。(「柩」より)
日本帝国陸軍秘密諜報員養成所――通称“D機関”を中心としたスパイの物語。待望の続編てことで、わくわくしながら読みました。やっぱりこのシリーズは面白いなあ。中でもD機関出身のスパイが事故で亡くなる「柩」がお気に入り。物語の中のスパイは格好良いけれど、実際は途方もなく孤独な存在ですね。それを受けての終章へのつながり方が良かった。こんなところで終わるとは……。常に勝ち組なD機関だったけれど、情勢の大きな変化でこの先どうなるのか非常に気になります。続き出してほしいなあ。
■「ダブル・ジョーカー」
D機関に対抗する諜報員養成所として作られた、陸軍大学校及び陸軍士官学校卒業者で組織される「風機関」は、D機関とは対極の教え「躊躇なく殺せ」「潔く死ね」をモットーとしている。そのふたつの機関に同じ任務が下された。より優秀なのはどちらの機関か、勝ち残る機関はどちらなのか。
■「蝿の王」
兄の死により共産思想を持ちモスクワのスパイとなっている陸軍軍医の脇坂衛は、スパイ狩りの知らせを同朋から受け取る。時を同じくして現地部隊にやってきた慰問団の“わらわし隊”。その中にスパイ・ハンターがいると脇坂は予想し、その人物を罠にかけようとするのだが――。
■「仏印作戦」
ハノイで軍の暗号翻訳の仕事をまかされている高林は、ある晩暴漢に襲われたところを永瀬則之という日本人に助けられる。永瀬は“D機関”という名前を出し、高林に軍とは別の暗号翻訳を依頼してきた――。
■「柩」
ドイツのベルリン郊外で列車同士の正面衝突事故が起きた。その事故で死んだ真木という日本人がスパイであると、ヘルマン・ヴォルフ大佐は確信していた。なぜならヴォルフ大佐は過去に“魔術師”と呼ばれた日本人スパイと対決したことがあり、死んだ真木には彼と同じ臭いを感じているからだ――。
■「ブラックバード」
米国で長期任務についている仲根晋吾は、二重経歴(ダブル・カバー)で西海岸の諜報活動を行っていた。東海岸については外務省がその管轄としており、定期的に外務省の役人・蓮水と連絡を取ることになっていたのだが――。
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