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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『私の家では何も起こらない』恩田陸
評価:
恩田 陸
メディアファクトリー
¥ 1,365
(2010-01-06)

 今にして思えば。
 幽霊は、思い出に似ている。(「附記・われらの時代」より)

 アップルパイが焼けるキッチンで殺しあった姉妹、近所から攫ってきた子供たちを解体し主に食べさせていた料理女、床下の少女の傍で自殺した美少年の殺人鬼などなど。おそらく英国の、ある家を舞台としてそこで起こった事柄を、連作短編の形式で描いた本。
 短編それぞれをリンクさせつつ、仄めかしつつ、というのは恩田さんの得意パターン。幽霊屋敷がテーマだけれどゾッとして身の毛もよだつようなタイプのものではありませんでした。怪談というよりは、不思議でちょっと怖い浪漫小説といった感じ。その家の中では、ほんの少しだけ時間の流れがゆっくりで、どこか優雅な雰囲気さえ漂う。ある家が過去から現在、そして未来へ向けて経験してきたことを、私たちが幻視のように本の中に見ている一代記のようでもありました。帯に書いてある「美しく優雅なゴーストストーリー」という言葉がぴったり。怖さよりも、薄暗い闇の部分を美しく見せる話が多かったように思います。「私は風の音に耳を澄ます」などは、映像として想像するとグロテスクな話なのに、文章からは美しく平和で穏やかな雰囲気が伝わってきます。
 人の死に様は十人十色で、それゆえ幽霊となる状況もそれぞれ違います。幽霊だけでなく、化け物もそこに含まれているかもしれないし、日本だったら妖怪と捉えられるものかもしれません。そういったものをすべて飲み込んで建っている家も少なくないでしょう。何十年何百年と年月を経た家屋に足を踏み入れたときの、なにかに圧倒されるような感覚は、そういったものの影響もあるのかもしれませんね。
 古い家に越してきたときなどはその家の過去を想像するのが楽しくもあり、ちょっとだけ怖くもあるのかと、「家」というものを考える作品でした。
 そして、この本を読んでいてシャーロット・パーキンス・ギルマンの『黄色い壁紙』を思い出しました。この本が気に入ったなら、そちらも併せて読んでみるのもいいかもしれません。ネットで検索すると翻訳してくれているサイトが見つかると思います。

【収録作】
 私の家では何も起こらない/私は風の音に耳を澄ます/我々は失敗しつつある/あたしたちは互いの影を踏む/僕の可愛いお気に入り/奴らは夜に這ってくる/素敵なあなた/俺と彼らと彼女たち/私の家へようこそ/附記・われらの時代

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2010.01.30 Saturday * 18:10 | 恩田陸 | comments(0) | trackbacks(0)
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2011.01.19 Wednesday * 18:10 | - | - | -
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