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評価:
深山 くのえ
小学館
¥ 500
(2008-08)
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「そなた、鬼なのか?」
「……世間では、そう言っております」
「世間じゃなくて、俺はそなたに訊いてるんだが」(本分より)
平安ものが読みたくなって手に取ったシリーズ。二条中納言の娘・詞子(ことこ)は鬼を呼ぶ姫と皆から疎まれ、十六歳の時に荒れ放題で人気の無い白川の別邸へと移ります。ある時美しい桜に惹かれて庭に降りた詞子は偶然通りかかった左大臣の嫡子・源雅遠(みなもとのまさとお)に姿を見られてしまうのですが、詞子の可憐さに心惹かれた雅遠はそれから詞子のもとへ通うようになり……と書くと、最初っからふたりのラブストーリーが始まるように見えますが、そこは鬼姫と噂の詞子と、歌が苦手で風情や風流とはほど遠い、よく言えば率直で現実的、悪く言えば粗野な雅遠のふたりなので、なかなかこれが題名どおりの恋絵巻になりません。この巻ではまずはお互いの気持ちを自覚するところまで。ゆっくり育んでいけばよいとは思うものの、詞子の父・中納言は右大臣派で雅遠の父は右大臣と対立している左大臣。鬼姫だなんだという噂と、ふたりの立場の両方が今後恋の障害になってきそうです。
この巻では鬼騒動と陵王面の紛失という事件があるものの、ちょっと内容が薄い印象を受けてしまったなあ。
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