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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 今日買ったマンガ
秘密-トップ・シークレット 3 (3)さよなら絶望先生 第7集 (7)
 今日は、創元推理文庫の戸板康二《中村雅楽探偵全集》第一巻『團十郎切腹事件』の発売日。うきうきしながら書店へ行ったのに、置いてませんでした。ホワ〜イ? 誰かがもう買っちゃったのかしらと思い別の本屋に行ったところ、そこにもありませんでした。え……? 更にもう一件足を伸ばしてみたものの、そこにもやっぱりありませんでした……なんでだー! うちの近所にある本屋さんは、私の欲しい本を入れてくれないことが多々あります。だからAmazonとか7&Yとか利用しちゃうんだよなあ。でもそれって悪循環ですよね。本屋さんはどんどん売れ線かマンガばかりになってっちゃうし、それによってこっちもどんどん利用頻度が減ってしまう。書店注文入れようとは思うんだけど、早く手にしたいと思うとネットのほうが早いからそっちに流れちゃう。

 そんなわけで戸板康二については空振りでしたが、マンガ本のほうは平積みだったので予定通り買ってきました。清水玲子さんの『秘密』の3巻と『絶望先生』の第7集。『秘密』は好きなシリーズなんですが、単行本になるのにとっても待つんですよね。久しぶりの新刊だー。
2007.02.28 Wednesday * 18:59 | 漫画 | comments(2) | trackbacks(0)
* 「サヨナラ」
評価:
マーロン・ブランド,ジョシュア・ローガン,レッド・バトンズ,ミヨシ・梅木,高美似子,ジェームズ・ガーナー
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
¥ 2,691
(2007-02-02)
 朝鮮戦争の撃墜王、ロイド・グルーバー少佐は、転勤で同僚のケリーと来日。ある日グルーバーは、松林歌劇の花形スター、ハナオギと偶然会い、恋に落ちる。その頃、日本人との結婚がご法度とされる中で、ハナオギはグルーバーとの別れを決心するが、必死に結婚を説くグルーバーの愛に、ふたりは改めて将来を誓い合うのだった……。

 1957年度アカデミー賞4部門受賞作(助演男優賞:レッド・バトンズ/助演女優賞:ナンシー梅木/美術監督・装置賞/録音賞)
 57年に作られているというのに、最近作の「SAYURI」よりもずっとちゃんと日本の文化や風俗を紹介していました。ていうかもう、「SAYURI」はあれ日本じゃないよなー…。
 歌舞伎、人形浄瑠璃、歌劇団、茶道、能などなど、制作者たちはかなり日本のことを勉強したうえでこれを作ったんでしょうね。歌劇団はちょっとズレた感じがしたけれど、他は雰囲気が良く出てたと思います。
 いかにもアメリカ男性な青年将校ロイド(マーロン・ブランド)が、日本にやってきて歌劇団マツバヤシのトップスターに一目惚れし、次第に日本文化に傾倒していく様子が描かれていました。そこには、日本人女性に対する当時のアメリカの差別や偏見といったものもありました。クラブに日本人女性を同伴していくと門前払いを食ったり、結婚することが難しかったり。
 ロイドが最初は本当に当時の典型的なアメリカ人男性っていう感じで、日本人女性と結婚する部下のケリーに対して彼女を侮辱するような一言を“無意識に”言ったり、歌舞伎などの日本文化を退屈そうに見ていたりしてるんですけど、それが次第に興味を示し、同僚に七夕を自慢げに話すまでになっていくのを見るのは楽しかったです。どんどん嵌っていっちゃって。
 彼の部下であるケリーとその妻カツミのふたりがよかったです。本当にこういうカップルがいたんだろうなと思うくらい、変に作った感じのしない普通の国際結婚カップルでした。このふたりはこれで助演男優賞と助演女優賞を獲っているんですよね。
 主人公と恋に落ちるハナオギは英語が堪能で背も高くいかにもヒロインだけど、カツミのほうは小さくて、こう言っちゃなんだけど普通の顔立ち。けど、一番「日本」というものを体現していたと思います。旦那さんの上司への態度、もてなし、所作、そしてみんなで浄瑠璃を観に行ったときの感想。
 彼女の鞄の中に整形手術のパンフレットが入っているのを見つけてケリーが「馬鹿なことを考えるな」と大層怒る場面があるんですが、それまでそんなにも思いつめているとは片鱗も見せずにいた彼女の心に気づかされてはっとしました。全然、そんなこと考えずに見てたけど、当然カツミだって自分がアメリカ人からどう思われているか、夫が自分と結婚したことでどういう立場にいるのか考えないわけがないですよね。それをちゃんと話の中に組み込んだ原作や脚本家に感心しました。

サヨナラ@映画生活
2007.02.28 Wednesday * 13:47 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『木曜組曲』恩田陸
評価:
恩田 陸
徳間書店
---
(1999-11)
 耽美派女流作家の巨匠、重松時子が薬物死を遂げてから、すでに四年。彼女と縁の深い女たちが、今年もうぐいす館に集まり、時子を偲ぶ宴が催された。なごやかなはずの五人の会話は、謎のメッセージをきっかけにいつしか告発と告白の嵐に飲み込まれ、うぐいす館の夜は疑心暗鬼のまま、更けてゆく。やがて明らかになる、時子の死の真相とは?

 恩田作品の特徴として、魅力的な導入部に比べてラストが肩透かしというのがあるけれど(まぁ、それすら恩田さんの持ち味として楽しめるんだが)、これはそういった「今一歩」感がなく綺麗に話が収斂されていて読後すっきりした。
 二転三転する容疑者、既に死亡している時子の存在感とそれに縛られている登場人物たち。恩田陸の心理描写にはいつも惹きつけられる。これはその心理描写がメインの心理サスペンス。読み応えがあった。果たして女性作家の死は他殺だったのか、誰がどうやって殺したのか。なぜ、殺したのか……。次々暴かれる一人一人の秘密、一転また一転。ただの他愛もないお喋りのはずなのに、最後の最後で謎の死の真相が浮かび上がってきたときの感触はなんとも言えない。そしてそこで終わらせずにもう一幕二幕あるオチ。
 作中で登場人物たちが語る小説論、作家論も面白かった。恩田さんの考えが投影されているんだろうなぁ、とファンとしても興味深い。作中でメロドラマについて言及しているんだけど、この本を出版した後実際に恩田さんメロドラマな内容の本(『ライオンハート』)を出してるし。
 あ、それと、作中にはそれはそれは美味しそうな料理が出てきて食欲をそそった。読んでるとお腹が空いた(笑)
2007.02.26 Monday * 14:00 | 恩田陸 | comments(0) | trackbacks(0)
* アカデミー賞生中継
 今年もまたWOWOWでやっているアカデミー賞授賞式の生中継を見ています。今、ビヨンセとジェニファー・ハドソンがステージで歌ってます。ビヨンセはもちろんだけど、ジェニファー・ハドソンも上手いなあ。さすが、助演女優賞を受賞しただけのことはありますね。今回ノミネートされている作品の中でも、この「ドリームガールズ」が一番見たいと思っているので、このステージを見て更に期待。ミュージカル映画って結構好きなんですよね。「シカゴ」や「ムーラン・ルージュ」もよかった。……と、書いていたら、歌曲賞は「不都合な真実」に持ってかれちゃいました。ええー!?こんなにステージ盛り上げたのに「ドリームガールズ」じゃないの!? ビックリ。
 それにしても、ジャック・ニコルソンはカメラリアクションがいいですね〜。前回のアカデミーでもそうだったけど、不意にカメラを向けられたときのユーモアあるリアクションがいつも楽しい。キュートだ。メリル・ストリープといい、ベテラン勢は余裕も手伝ってか切り返しが面白いなあ。
 それと、毎年やるその年に亡くなった俳優・監督・脚本家・他映画関係者を称える映像のコーナーも好きです。さっき流れた映像を見て、初めてシドニー・シェルダンが亡くなったことを知りました。今検索してみたら、1月末に亡くなってたんですね。

 明日再放送される編集されたバージョンも見ます。編集されたほうが字幕が入って見やすいから。今見ている生中継のほうは同時通訳なんで、時々聞き取りにくいところがある。けど、生で見ている臨場感はこっちのほうが感じられるので、結局両方見ちゃうんだよなあ。
2007.02.26 Monday * 13:37 | 雑記 | comments(2) | trackbacks(0)
* 『殺人鬼の放課後―ミステリ・アンソロジー〈2〉』乙一、恩田陸、小林泰三、新津きよみ
評価:
恩田 陸,新津 きよみ,小林 泰三,乙一
角川書店
---
(2002-01)
 殺人鬼こそ本格ミステリの主役!? 湿原に建つ全寮制の学校。悪意のゲーム『笑いカワセミ』に挑むのは、美貌の少年ヨハン(水晶の夜、翡翠の朝)。恵美が僕に語る、誘拐された少女3人の運命(攫われて)。新しい受講生は、死んだあの娘とあまりにも似ていた(還って来た少女)。コンクリートで固められた7つの立方体を支配する、恐るべき死の法則(SEVEN ROOMS)。恐怖とサスペンスに満ちた、書き下ろしアンソロジー第2弾。

 恩田陸と乙一の作品が読みたくて購入。
 恩田作品の「水晶の夜、翡翠の朝」は『麦の海に沈む果実』や『黒と茶の幻想』などの理瀬シリーズを読んでいたほうがより楽しめる。もちろんシリーズを未読でも楽しめるよう、独立した短編にはなっているけれど。ミステリとしてのオチもまずまず。この寄宿舎の独特の雰囲気と、美しい探偵役のヨハンと、さりげなくヨハンを援護している校長(若くてハンサム)の関係と。それらが楽しめるならそれでもう充分。
 乙一の話は短編集『ZOO』にも収められている。この話を読むと映画『CUBE』を思い出す。いきなり出口のない密室に閉じ込められるという、不条理な状況が似ているのだ。よくできた話で乙一のストーリーテラーぶりが窺える。続きはどうなるのか、どんな結末が待っているのか。ぐいぐい読ませる話だ。この本の中では一番面白かった。
 小林泰三の話は冒頭でうっすらとオチが読めるけれど、上手くまとめている感じ。ただ、『玩具修理者』のときもそうだったけれど、この人の話にはグロい描写や痛い描写がつきもので、そこだけは「うわ…いたたたた……」と斜め読みした。足の膝裏の腱をナイフで切るとか想像しただけで痛いよ〜。
 新津きよみの話はいまひとつ。読後印象に残らなかったな。

■収録作品■
 水晶の夜、翡翠の朝(恩田陸)/攫われて(小林泰三)/還って来た少女(新津きよみ)/SEVEN ROOMS(乙一)
2007.02.25 Sunday * 23:25 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『精霊の守り人』上橋菜穂子
評価:
二木 真希子,上橋 菜穂子
偕成社
¥ 1,575
(1996-07)
 100年に一度卵を産む精霊<水の守り手ニュンガ・ロ・イム>に卵を産みつけられ、<精霊の守り人>としての運命を背負わされた新ヨゴ皇国の第二王子チャグム。母妃からチャグムを託された女用心棒バルサは、チャグムに憑いたモノを疎ましく思う父王と、チャグムの身体の中にある卵を食らおうと狙う幻獣ラルンガ、ふたつの死の手から彼を守って逃げることになるのだが……

 『狐笛のかなた』ですっかりファンになった上橋さんの代表作「守り人」シリーズの一作目。
 まず、女用心棒のバルサが格好良い! ファンタジーの主人公というと、少年少女か、勇敢な青年か、美しいお姫様か…そんなイメージがある。けれどバルサは30代のオバサン(敢えて親しみを込めてこう呼ばせてもらおう)。のっけから意外性があって、「それでバルサはどうするの?」と彼女の行動ひとつひとつが気になって、先を読み急いだ。
 そして「物語」全体も面白い。上橋さんは、登場人物たちそれぞれの心情を書きながらお話を「物語る」のが上手い作家さんだと思う。目に見えない大きな何かにそうさせられているのではなく、それぞれが様々な思いを抱いて行動しているからこうなったんだ、と納得できる。各人がそれぞれ魅力的で。だからきっと、読む人によってお気に入りの登場人物がばらけるのではないだろうか。
 私はトロガイとシュガがお気に入り。あのふたりが、「ヤクーの知」と「天道」を額つき合わせて講義し合っている姿を想像するだけで楽しくなってくる。改竄されない真実と智慧が、後世に残されることを願ってやまない。
2007.02.24 Saturday * 01:08 | 上橋菜穂子 | comments(0) | trackbacks(0)
* 「サイレントヒル」
評価:
ラダ・ミッチェル,クリストフ・ガンズ,ローリー・ホールデン,ショーン・ビーン,デボラ・カーラ・アンガー,ロジャー・エイヴァリー
ポニーキャニオン
¥ 2,480
(2006-11-22)
 最愛の娘・シャロンが、悪夢にうなされて叫ぶ「サイレントヒル......」という奇妙な言葉。母親のローズはその謎を解くため、シャロンを連れてウェストバージニア州に実在する街・サイレントヒルを訪ねる。しかし、全くひと気がなく、深い霧に覆われたその街は、一度足を踏み入れたら抜け出すことのできない呪われた迷宮だった。
 そこで失踪してしまったシャロンの身を案じるローズは、おそるおそるサイレントヒルを探索するうちに、想像を絶する恐怖に見舞われていく---。
 なぜ、シャロンはこの街で姿を消したのか?なぜ、この街は廃墟と化したのか?30年にも及ぶ、サイレントヒルに隠された呪われた秘密とは?果たして、ローズはシャロンを見つけ出し、この街から脱出することができるのか......(メーカー/レーベルより)

 ゲームの「サイレントヒル」はシリーズ4作品すべて持っていて、プレイもしたサイレントヒルファンです。そういうファンの目からすると、出てくるクリーチャーたち、映像、BGMとゲームそのままな雰囲気はわくわくしました。特に音楽! サイレントヒルはBGMやゲーム内のアイテム(例えばオルゴールとか)の奏でる音楽がとても良いので、ところどころでそれらが使われているのは嬉しかったです。主人公がサイレントヒルへと入り込んでしまう前半の映像も、霧が立ち込めた静謐な街のイメージとよく合っていました。そこだけ何度か見直したくらい。他にもゲームとまったく同じアングルがあったりして、プレイヤーならニヤリとします。
 けど、肝心の主人公が父親から母親へと変更されていたり、アレッサや教団との過去の出来事が変えられていたり、クライマックスが「え…?」と思うような展開だったり、と不満も多々あります。特にベネット婦人警官の扱いが私はショックだったな……。あれは必要だったんだろうか。
 ゲームにはそれまでの経過でハッピーエンドやバッドエンドが複数用意されているけど、これは映画なので見ている側はひたすら用意されたエンディングに向かって連れて行かれるだけ。その結末をどう受け止めるかは見た人次第です。私は主人公である母親の行動があまりにも自分勝手で短絡的なので、ちょっとイライラ。でも、ゲームにある“トンデモ”エンディングのUFO召喚にならないだけよかったか(笑) ゲームと1を基にして、2や3からもちょこちょこ引っ張ってきてました。三角頭とか。
 残酷な描写も結構あって、ちょっと目をそむける箇所もありました。

 ゲームをプレイしたことがない人が見たら、さっぱり訳のわからない話なんじゃないのかな。サイレンが鳴ると町が一斉に錆や膿、血糊で闇の裏世界へと一変してしまうところとか。ゲームだと不条理ながらもドキドキさせてくれる演出なんですけどね。「うわーきたー!」って。
 一切説明らしきものはないし、ゲームではいろいろなアイテムを見つけることで見えてくる真実も、この映画の中では視聴者が「えーと…こういうこと?」と想像するに留まっています。主人公の旦那がいろいろ町の過去を調べたりしてるんですが、それが上手く説明として機能していないような……。謎の解決を求めずに、不条理なホラー映画として見ればいいかもしれません。

 ああ、でもでも。
 やっぱり、ゲーム通りの主人公設定とストーリーにして欲しかった!
 そして、シリーズ恒例の武器、鉄パイプも出して欲しかった(笑)
サイレントヒル@映画生活
2007.02.23 Friday * 09:08 | 映画 | comments(1) | trackbacks(0)
* 『あなたが世界を変える日―12歳の少女が環境サミットで語った伝説のスピーチ』セヴァン カリス=スズキ 訳:ナマケモノ倶楽部
 昨日聞いたラジオ「TERU ME NIGHT GLAY」で取り上げられていたので再掲。
 1992年6月11日。リオ・デ・ジャネイロで開かれた国連の地球環境サミット。カナダ人の少女が、いならぶ世界各国のリーダーたちを前に、わずか6分間のスピーチをした。その言葉は人々の強い感動を呼び、世界中をかけめぐり、いつしか「リオの伝説のスピーチ」と呼ばれるようになった。世界中を感動させたこのスピーチなどをイラストと共に収録。スピーチの英語原文も掲載。

 ずっと、「読まなきゃなぁ」と思っていた本。
 私の話には、ウラもオモテもありません。(本文より)

 そんな言葉で始まる、12歳の少女の堂々としたスピーチ。
 オゾン層には穴が開き、死んだ川からはサケがいなくなり、動物たちは毎年絶滅し続け、砂漠化した大地に緑を蘇らせるのは気の多くなるような年月を要する。それら人間によって破壊されてしまったものをどうやって直したらいいのか、私は知ろうとすらしていない。
 どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください。(本文より)

 うん。本当にそうだ。ぐうの音も出ませんよ。この年になって先のこととか、自分達の次の世代のことを考えるようになって初めて、環境問題についてはっきりと意識するようになって人間には耳が痛い。何事も自分の身に降りかからないとわからないようじゃ、駄目駄目だよな。人に与えられたものの中でも、「想像力」っていうのは最も大事なものなのにね。
 このスピーチがされた年から十年以上。今、私たちを取り巻く環境は、改善されているだろうか。
2007.02.22 Thursday * 17:57 | 海外その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『世界でいちばん淋しい遊園地』西田俊也
評価:
西田 俊也
角川書店
¥ 1,470
(2006-12)
『当遊園地は今年末をもち、78年の歴史に幕を下ろします』

 装丁に惹かれて手に取った本。
 その年の大晦日を最後に閉園する遊園地が舞台。新聞記事や口コミなどで閉園を知った 人々がかつての思い出を胸に来園し、思いがけない再会を果たしたり、新たな出会いを持ったりする連作短編集。

 遊園地というのは、そこに行くだけでいつもとは違うハレの気分を味わえる、非日常の空間。ゲートを抜けて帰ってくる時には、どこかお祭りの後のような淋しさを味わうものです。ましてや閉園することが前提の遊園地での出来事となると、それだけでもう淋しい心持ちになっちゃう。
 登場人物たちも感傷的な思いを抱いてこの遊園地を訪れ、そしてなにかを思い出し、あるいはそっとそこに置いて遊園地を後にする。ひとつひとつの話がリンクしていて、最後には幕を下ろした遊園地が描かれる。
 「もうだいじょうぶと、ひとりで乗るよ」がよかったな。ちょっとファンタジックで。読みようによっては、老人が最期の時に少年時代の自分にかえって、一度行ってみたかった遊園地の中で遊ぶ夢を見ているようにも思える。布というのは顔に被せられた布なのかな、とか。
 全体的に雰囲気はあるものの、なにかこうもうひとつ弱い印象を受ける。登場人物たちの誰にも感情移入できないからか。なにか物足りないような。手から本を離したら、そこに書かれていたことを忘れてしまいそうな。それもまたこの本に添えられた淋しさのひとつかも。

<収録作>ジェットコースターの最後のカーブで/魔法のあった場所から/さよならの歌は響かない/迷子の恋人たちへ/ただの楽園にて/サイレント・ライト発/聖夜のウサギ巡り/残響スノードーム行き/もうだいじょうぶと、ひとりで乗るよ/遊園地、地球、海、みんな…
2007.02.21 Wednesday * 19:56 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『闇鏡』堀川アサコ
評価:
堀川 アサコ
新潮社
¥ 1,575
(2006-11-21)
 分類に迷いましたが、内容はきっちりと構成されたミステリだと思ったのでミステリのカテゴリへ。第18回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。
 面白かった! 『僕僕先生』を読んだ印象が残るまま漫然と読み始めたところ、いくつもの錯綜する謎が出てきて「お!これは気合入れて読まねば」と、頭をシャッキリさせて読みました。

 舞台は平安の時を過ぎ、足利幕府がじわじわと勢力を伸ばしつつある室町時代。京で起こる様々な怪異と殺人事件を、当時の警察官である検非違使(けびいし)の清原龍雪が捜査していくというミステリ仕立て。お江戸の捕物長は数あれど、平安・室町時代を舞台にしたミステリというのはあまりお目にかからないので新鮮でした。もともとこの時代が好きでもあるし、検非違使や陰陽寮など当時の風俗も楽しく読めたなあ。
 いろいろな事件が起こる序盤が一番気を抜けないかも。ひとつひとつの事件を心に留めておかないと、たくさんの伏線を読み零してしまう。そのかわり、終盤一気に繋がるあれやこれやにはすっきりします。ラスト近くのある場面は怖かった。妖怪よりも鬼よりも、人間が一番怖いですね。

 京都にはどんな怪異も妖も似合うからすべてを不思議譚にしてしまっても収まるけれど、龍雪は「騒ぎが起きるたびに鬼や邪のせいにするのは、陰陽師や僧侶に任せておけばよい。検非違使は検非違使の仕方で詮議をする他はない」と言って生身の人間の犯行として調べてゆきます。
 が、この龍雪が身なりは大きくいかにも強そうな武官であるのに、実は人一倍の怖がりであるというのが面白いですね。怪異や妖が怖いから、人間の仕業だと思いたくて調べてゆく。その理屈というか性格付けが好ましい。
 彼の部下である放免の清輔も味があるキャラクターです。ただ彼は後半ぐっと出張ってくるので、前半では印象が薄いかな。もうひとりの放免である無邪気な蚕児(さんじ)についても一癖ありそうですが、このお話ではそこまでは語られていないので、これは是非シリーズ化してもらってそこらへんも含めたこの三人の活躍を読みたいです。看督長やら遊里の実力者やら雑色やらといった脇役・チョイ役陣にもちゃんと個性があって、この世界がちゃんとそこに確立しているんだなと安心して読めました。登場人物たちの誰をとってもそれぞれの物語がありそう。
 完全な悪人というのが出てこないのも好印象。それは各々のキャラクターがしっかりと、人間臭く描かれているからかもしれません。狡すっからい者や性質の悪い者は出てくるけれど、みなどこか憎めない。シリーズ化希望!ってことで。
2007.02.20 Tuesday * 14:11 | 国内ミステリ | comments(2) | trackbacks(0)

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