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評価:
坂木 司
角川書店
¥ 1,470
(2007-09)
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ねえ。私の「正しさ」は、間違ってるのかな?(本文「越境者」より)
坂木さんも結構作品の中に料理が出てきますよね。今回はホテルのまかない料理やおやつ、宿泊客に出す食事など、食べ物の記述が多かった。どれも美味しそうでした〜。本当は沖縄料理って癖があって苦手なんだけど、この話に出てくるものはなんだかどれも食べてみたくなりましたね。坂木&鳥井の引き篭もり探偵シリーズも、毎回毎回美味しそうな料理や土産物が出てきてましたっけ。坂木作品の中に登場した食べ物の一覧とかあったら見てみたいなあ。
話を本題に戻して。
これは
『シンデレラ・ティース』の主人公サキの友人ヒロちゃんが、沖縄で短期のバイトをしているお話。サキはおっとりタイプだったけど、ヒロちゃんのほうは大家族の長女として育ったせいで面倒見が良く、仕事にも真面目に取り組んで、少々お節介なところもある女の子です。
引用したのは、そんなヒロちゃんが自問自答する言葉なんですが、ちょっと彼女の行動が鼻につく部分も確かにありました。う〜ん……でもなあ、彼女の年齢を考えると、それも無理ないのかな、なんて思います。よくいえば真っ直ぐで生真面目で一本気。悪く言えば、融通が利かなくて視野が狭くて独断的。これって、若い頃には誰でもそういうところありますよねえ。自分の半径5メートル以内の世界から抜け出せてない状態っていうか。社会に出て、いろいろあって、少しずつ世界が広がっていってやっとそれまでの自分の行動に赤面したりするようになるんじゃないかと。
なのでヒロちゃんが時には暴走ともいえる、正義感を振り回して突進していく姿には目を瞑ります。最後にはちょっぴり柔軟さといい加減さが身についてきてましたしね。
彼女のまわりにいる沖縄の人々がみないい味出してました。ホテル清掃員であるクメばあとセンばあ、毎日すごく美味しい料理を出してくれる比嘉さん、そして昼行灯なくせに夜になると頼りがいがあってちょっと格好いいオーナー代理。
連作短編集で、さくさくと読めます。ヒロちゃんが出会う宿泊客絡みの出来事の中には、時にシビアで痛いお話もあって、明るくのんびりとした沖縄の現実もちらっと顔を覗かせていました。
角川の特設ページでこの作品の立ち読みができるようですよ。
【姉妹編】
『シンデレラ・ティース』
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