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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『現代京ことば訳 源氏物語(1)桐壺−乙女』中井和子
 どの天子さんの御代のことでござりましたやろか。女御や更衣が大勢待っといやしたなかに、そないに重い身分の方ではござりまへんで、それはそれは時めいといやすお方がござりました。(「桐壺」の巻より)

 今年は『源氏物語』千年紀ということで、それに関連する出版物もいろいろ出ているようですね。連載当時のカラー原稿を収めた『あさきゆめみし』の完全版とか、昔のコミックス版を持っているのに買ってしまいそうです。あの漫画は、表紙などの原画が本当に美しいですもんね。
 そういった関連本を読む前に、もう一度『源氏物語』を通読しようじゃないかと思い立ちまして、いろいろと現代語訳されたものを見比べていたんですが、この京ことばで書かれたやつが妙に読みやすく面白い。現在の関西弁ともまた違う、独特のはんなりとした言葉の響きとリズムが、するするするっと読ませてしまうようです。あの超有名な冒頭文も、先に引用したようにまるで世間話のようにするっと語り出されて、それでいてちょっと下世話な部分の描写も品良く(というか、うっすらと含み笑いしながら語る感じで)書かれていて、なんていうんでしょう、昔話を聞いているようなそんな心持ちで読み進めました。
 Amazonのほうで表示されるのは全5巻の新装版ですが、私が読んだのは図書館で借りてきた全3巻の旧版のほうです。なので、第1巻は「桐壺〜乙女」。新装版だと「桐壺〜明石」までのようですね。各巻の最初にその巻で描かれている内容を簡単に説明した文章が載っているので、途中で流れを見失うことなく読んでいけるのもいいですね。
 続巻ももちろん読んでいこうと思っていますが、内容が気に入ったので新装版を買おうか思案中です。

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2008.09.27 Saturday * 19:00 | 国内その他 | comments(2) | trackbacks(0)
* 『かまわぬの手ぬぐい使い方手帖』
 最近、風呂敷や手ぬぐいなどの和小物に目が行って仕方ありません。ハンカチよりも手ぬぐい、トートバッグよりも風呂敷に惹かれます。なので自然と本屋さんでもこういった本を手に取ってしまうのです。
 代官山にある人気店「かまわぬ」の手ぬぐいを集めた一冊です。着物の文様を眺めるのも好きですが、手ぬぐいも様々な意匠が凝らされていて楽しいですね。着物よりもっと身近で洒落が利いてる柄もあって。黒々とした中に大きな魚の目らしきものが描かれているのは「目くじら」とか。古典柄はもちろんのこと、現代柄もポップでキュート。これからの時期、サンタクロース模様の手ぬぐいも可愛いなあ。
 手ぬぐいのお手入れ方法をはじめとして、いくつもの活用方法(拭いたり包んだり被ったりなどなど)が載っています。手ぬぐいを使った可愛らしいトートバッグの作り方なんてのもありました。
 昨今のエコブームもあって、風呂敷や手ぬぐいが見直されているとは思いますが、まだまだ実際に自分の身の回りでそれらを愛用している人を見かけません。かくいう私も、日常生活の中で風呂敷や手ぬぐいを使っているかというと、そうでもなく。さらっと使いこなせたらいいなあとは思ってるんですが……。
 この本を見ていたら、手ぬぐいを集めたくなりました。もちろん集めるだけじゃなくて、活用もしたいなあ。

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2008.09.27 Saturday * 18:29 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『カラスの親指 by rule of CROW’s thumb』道尾秀介
「他人の罪はよく見える。でも自分の罪は、背中にしょってるもんだから見えないんです」(「CROW/krou」より)

 妻を癌で亡くし知人の保証人となって借金を背負い娘まで亡くした武沢、浮気をした挙句に借金を作った妻に自殺されたテツ、借金の取り立てを苦に自殺した母親に置いていかれた少女まひろ。詐欺やスリで生計を立てていた彼らが出会い、共同生活を送るようになり、やがて自らの過去と訣別するためにある計画を企てる――。
 登場人物のうちのひとりの行動に早くから違和を感じていたので、何かあるなというのはわかっていたのですが、私が想像していたのはもっと救いのない悲惨な結末でした。そしたらスマートで後味の良い終わり方でびっくり(笑) 二転三転する構成はさすが道尾さん。タイトルがすべてを表していますね。登場人物たちの置かれた状況は悲惨なものだけど、全体を通してどちらかというと明るい雰囲気が漂っています。それも脳天気な明るさではなく、辛さに耐えた明るさです。
 逃げてばかりはいられない。ずっと抑えこんできたものを昇華させるために起こした彼らの行動は、果たして吉と出るか凶と出るか。コン・ゲームの話が好きな人にはオススメかな。

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2008.09.19 Friday * 01:08 | 道尾秀介 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『妃は船を沈める』有栖川有栖
評価:
有栖川有栖
光文社
¥ 1,680
(2008-07-18)
 夢は、胸に抱くか背負うのがいい。それならば、投げ棄てても拾いに戻ることができるし、棄てた夢が追ってくることもあるだろう。小船に乗せてはいけない。(「幕間」より)

 火村准教授と作家アリスのシリーズ最新作。二本の中編「猿の左手」と「残酷な揺り籠」を「幕間」で繋いだ連作長編(?)てことになるのかな。まずは本筋とは関係のない部分から。火村先生の肩書きが「助教授」から「准教授」へかわってました(笑) 以前ニュースで、学校教育法改正によるこの呼称変更の話を聞いたとき、まっさきに思ったのは「じゃあ、火村は准教授になるのかあ、なんか響きが……」でした。でもまあ、慣れですよね。
 今作では新キャラとして女刑事が登場しました。今後もこのシリーズにレギュラーとして出るようですね。新しい登場人物は、既に固まっている諸々のことをひっくり返すのにちょうどいい存在。例えば彼女が指摘した「火村がネクタイをいつもゆるく結んでいる理由」については、「おっ」と思いました。アリスだともういちいち疑問にも思わずに「それが火村だから」で流してしまうところを、彼女の目でこれからもツンツン突いていくのかな。そしてやがて、ある意味このシリーズの一番の謎である「火村の過去」へと繋がるのでしょうか。

 内容のほうは、有名な怪奇小説ウィリアム・W・ジェイコブズの「猿の手」がモチーフ。三つだけどんな願いでも叶えてくれる「猿の手」、しかしそれには大きな代償を伴う――という話です。有栖川さんと北村薫さんの間で交わされた「猿の手」の解釈の違いが、そのまま話の中に出てきます。事件の解決そのものよりも、この「猿の手」談義の部分のほうが面白かったな。私は既読だったのでそのまま読んでしまいましたが、「猿の手」が未読でネタバレされたくない人は、この部分は読まないよう注意したほうがいいかもしれません。ネタバレされてから読んでも充分面白い小説ではありますが、やっぱりまっさらな状態で読んでから、この作品で「猿の手」について解釈しているところを読んだほうが楽しめると思うので。逆に「猿の手」を読んでいなくても、本書を読むのになんら支障はありません。
 火村とアリスが今回立ち会ったのは、大阪湾に水没した車の中から出てきた男の死体に高額な保険金がかけられていた「猿の左手」と、その二年後に起こったある夫婦が睡眠薬入りワインを飲まされ昏倒していた間に家の中で若い男が射殺されていた「残酷な揺り籠」のふたつの事件。事件としてはふたつだけれど、共通した登場人物がいて前半後半に分かれた長編とも取ることが出来ます。
 この人物が「妃」なんですが、なかなか特異なキャラクターです。若く見える40代の女性で、若い男性たちを集めてサロンのような場所を提供しているんですよ。傍から見たらツバメを侍らせているようにも見える。彼女に対して女性嫌いの火村がもっと皮肉をバンバン投げつけるかと思って読んでたんですが、火村先生も大人になられて、表面上は穏やかに話が進んでいきました。
 フーダニットよりもハウダニット&ホワイダニットなお話。
 第一の事件と第二の事件の間にどんな心境の変化があったのかわかりませんが、物語終盤の場面へと繋がるのには、内面の変化を思わせる描写がちょっと足りないと感じました。ラストの火村の台詞でその部分をかなりカバーしているにしても。
 トリックについては、「残酷な揺り籠」のほうが楽しめました。でもあれって、警察(鑑識)はアレを調べなかったんでしょうか。令状がないと調べられないのかな。

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2008.09.16 Tuesday * 16:41 | 有栖川有栖 | comments(2) | trackbacks(1)
* 『Rのつく月には気をつけよう』石持浅海
 酒と恋に懲りたものはない。

 学生時代からの付き合いが続いている湯浅夏美、長江高明、熊井渚の三人。彼らは定期的に飲み会を開いている飲み仲間だ。もっぱら飲み会場は長江の部屋だが、飲み会がマンネリ化しないよう、毎回誰かがゲストをひとり連れてくることになっている。そして話を聞き楽しく酒盛りをしていると、自然と酒や料理に関する過去の出来事が酒の肴になるわけで、そういった会話の中に潜む真相や日常の謎を、彼らの中でも「悪魔的な頭脳を持った」長江がさらりと解いていくというパターン。
 どれもこれも、読んでいると飲みたくなるお酒や食べたくなるつまみばかり。チーズフォンデュと白ワイン、豚の角煮と泡盛、生牡蠣とウィスキー、ビールとチキンラーメン、日本酒と銀杏、ブランデーとそば粉のパンケーキ、シャンパーニュとスモークサーモン。中でも、ビールとチキンラーメンを砕いたものの組み合わせは、ベビースターラーメン食べながらビール飲むのと同じ感じかな? ベビースターをつまみにお酒飲むの好きなんですよねえ。そば粉のパンケーキにもちょっと惹かれます。
 ミステリ部分については、連作ということもあってパターンが決まっているせいか、ごく早い段階で展開が読めてしまいますね。そこをどう論理展開させていくかにかかってるんですが、強引な持っていき方の話が目に付いたかな。
 特に銀杏の出てくる「身体によくてもほどほどに」は、ゲストであり相談者である女性が、なぜそこまで飛躍したことを考えるのかとびっくりでした。ものすごい被害者意識だな、と。普通そんなこと思わないんじゃ? よしんば彼女の生い立ちからそう考えてしまうのだとしても、結婚を前提しているのなら、“そういうこと”があっても不思議じゃないと思うんだけど。昔はよくある話でしたよ。結婚は家同士の結びつきという考え方だったから。逆に、たった一言からそこまで考えて、婚約破棄しようか迷う相手とは結婚したくないなあ、怖くて。きっと相手の人大変ですよ。これから先。この話に限らず、石持さんはいつも人間の嫌ぁな面を当然のようにさらりと描きますね。

【収録作】
 Rのつく月には気をつけよう/夢のかけら麺のかけら/火傷をしないように/のんびりと時間をかけて/身体によくてもほどほどに/悪魔のキス/煙は美人の方へ

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2008.09.10 Wednesday * 19:45 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『そうか、もう君はいないのか』城山三郎
 容子がいなくなってしまった状態に、私はうまく慣れることができない。ふと、容子に話しかけようとして、われに返り、「そうか、もう君はいないのか」と、なおも容子に話しかけようとする。(本文より)

 学生時代に一目惚れをした初恋の人である、奥様との出会いから死別までを綴った内容であります。私にとって、腰を据えて読むには多分きっと痛いだろうと、自制しながら読んだんですが、それでもちょっと泣きましたね。うん。大切な人を喪ったことのある人にはそれを思い出させて、少々痛いかもしれません。忘れたふりをしていた心の瘡蓋の隙間から静かに沁みてくるようです。
 氏の他の著作と比べても文章が若々しくなっている感じがするのは、より純粋な想いで綴られているからでしょうか。巻末にある次女の方が書かれた、城山氏と奥様に関する一文が名文でした。本文のほうでは、題名にもなった城山氏の呟きが書かれた箇所がやはり一番印象に残っています。こんな風になにかの折に、「ああ、もういないんだ……」と一瞬止まってしまうことあるなあ。

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2008.09.09 Tuesday * 18:48 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)

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