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評価:
レイ ブラッドベリ,シオドア スタージョン
東京創元社
¥ 1,050
(2006-03-23)
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SF映画の原作を集めた日本オリジナルのアンソロジー。
■レイ・ブラッドベリ「趣味の問題」(映画「イッツ・ケイム・フロム・アウタースペース」原作)
どれほど善良で博愛精神に満ちた知能の高い異星人でも、人間は見た目が駄目だと友好関係を築けないのか。例えば、それがゴ○○リそっくりな異星人だったとしたら、やっぱり私も生理的嫌悪感に勝てないかもしれません。
そんなエイリアン視点の物語なんですが、“彼”の目で見た世界がとても叙情的で美しい。彼らが織り成すタペストリーとか、人間たちを案内して見せる彼らの星の夕暮れとか。さすがブラッドベリ。
それなのに、人間の下した決断は……。
■ウォード・ムーア「ロト」(映画「性衝動と原爆戦」原作)
世界でなにが起こっているのかというのはほとんど説明されず、ひたすら逃げ惑うパニックに陥りかけた人々の中、非難する一家の様子が描かれています。車内での家族の遣り取りに終始してるんだけど、それが密室劇のようで面白く読みました。これはブラックなオチですね。でも、続編の「ロトの娘」は更に嫌な展開になるそうで読んでみたいなあ。
■シオドア・スタージョン「殺人ブルドーザー」(映画「殺人ブルドーザー」原作)
飛行場建設工事のために無人島にやってきた作業員たちを、ブルドーザーが襲う話。意思を持ったブルドーザーと作業員たちの戦いは面白いんですが、少々冗長に感じられました。というのも、ブルドーザーの部位や部品名がたくさん出てきたり、ブルドーザーの操作方法についての記述が多くて、ちょっと場面が想像しにくかったんですよね。なんかすごい状況なのはわかるんだけど、具体的に今作業員たちはどんな目に遭ってて、ブルドーザーはどんな状態なのか、ちょっとすんなり思い浮かべられなくて。
■ドナルド・A・ウォルハイム「擬態」(映画「ミミック」原作)
町内に住み着いていた黒マントの男が死んだ。彼の身体を調べると驚くべきことに……。
数ページの短い話。短いながらも不気味な雰囲気が漂っていていいですね。これと「趣味の問題」が本書の中ではお気に入り。
■ハリイ・ベイツ「主人との決別」(映画「地球の静止する日」原作)
1950年代に制作された映画「地球の静止する日」を以前WOWOWで見たのですが、とても印象的な名作でした。来月キアヌ・リーヴス主演でリメイク版が日本でも公開されますね。そちらも観にいく予定。映画とは随分と内容が違いました。地球にやってきた異星人と彼が連れてきてロボット。異星人は暴走した人間に殺されてしまい、その瞬間から動かなくなったロボットと宇宙船が残されるのだが……。
結局、彼らは地球になにをしにきたんでしょう。オチにちょっとした驚きはあるものの、なんとなく宙ぶらりんな気分を残す読後感。
■ロバート・A・ハインライン「月世界征服」(映画「月世界征服」原作)
本編と、映画制作の顛末をハインライン自身が書いた「『月世界征服』撮影始末記」が同時収録されています。
ソ連とアメリカの間で繰り広げられていた宇宙開発競争のさなか、さまざまな思惑を振り切って宇宙へと飛び出す宇宙飛行士たち。しかし、いくつものトラブルが重なって……。
正統派のSFだなあと思いながら読んでいたんですが、結構ツッコミどころが多くて、それが楽しかったです。「しまった!」とか「忘れてた!」とか、未踏の地である宇宙に飛び立つ割には、準備不足やうっかりミスが多発しすぎです(笑) ラストは映画とは違っているそうですが、この最後はハインラインらしい感じがしました。
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