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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『少女』湊かなえ
評価:
湊 かなえ
早川書房
¥ 1,470
(2009-01-23)

 死ぬほど追いつめられるようなことを一番打ち明けたくないのは、同じ集団に属している人たちで、なかでも、友だちっていうことを、おとなは知らないのかな。(本文より)

 親友の自殺を目にして死を悟ったと語る転校生・紫織の話を聞いた由紀と敦子は、「人が死ぬ瞬間を見たい」という思いに駆られて、病院の小児病棟と老人介護ホームにそれぞれ通い始めるのだが――。

 人が死ぬ瞬間を見たいと思い、知り合う人たちの死を想像しながら接する由紀と敦子の視点で語られ始める冒頭から中盤過ぎまで、うわあ、イヤな話だなあと思って読み進めていました。それが次第にふたりの持つ心の傷に話がシフトしていって、うっかり青春小説として成立して終わりかと思いきや、数々の伏線がどんどん回収されていく終盤はミステリとして面白かったです。ラストの「終章」まで読んで、また冒頭の「遺書」に戻って読み返したし。
 『告白』を積んだままにして先にこっちを読んだんですが、いい話として終わらせない粘着質な構成が、この作者らしさなのかな。
 因果応報がキーワードの本書は、少々都合が良くて世界が狭いようにも思うけど、その近視眼的世界の狭ささえ、「少女」というタイトルがカバーしているように見えます。

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2009.02.20 Friday * 19:49 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(2)
* 『黒百合』多島斗志之
評価:
多島 斗志之
東京創元社
¥ 1,575
(2008-10)
 私も一彦もすぐに彼女を好きになった。ふたり同時につまずき、折り重なって転んでしまったような、そんな初恋だった。(本文より)

 1952年の夏、14歳の寺元進は父親の古い友人・浅木の別荘に招かれ、そこで同い年の一彦と仲良くなります。ある日、一彦と共に向かったヒョウタン池で倉沢香という少女と出会い、以後三人で遊ぶようになるのですが、冒頭に引用したように進も一彦もやがて香のことを好きになります。
 この淡い初恋とひと夏の少年少女の日々が回想形式で瑞々しく語られる一方、彼らの父親が戦前ベルリンに渡航していた時の話や香の叔母の少女時代の話などが挿入され、物語が終わったときにそれまで見えなかったもうひとつの物語が浮かび上がります。
 いや、お見事。真相にあっと言わされたというよりも、品良くまとまっていた話が、真相を知ることで全体の色合いを変えるところが妙味だと思いました。白く清らかな百合の花が読後じわりと黒く染まるような。
 一読後、もう一度読み返したくなる箇所がいくつもありました。実際読み返して、ほうほうそういうことか、と。そして表紙に書かれたタイトルを見て、そこでまた納得です。

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2009.02.19 Thursday * 23:16 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』スコット・フィッツジェラルド
評価:
スコット・フィッツジェラルド
イースト・プレス
¥ 1,365
(2009-01-22)
 人生は夢であると感じることはないだろうか。(「訳者あとがき」より)

 映画のほうは本年度のアカデミー賞最多ノミネートで、テレビでCMをよく見かけます。けれど、その原作となったこのお話を書いたのが、フィッツジェラルドだったとは知りませんでした。
 80代の老人の姿で生まれ、年々若返っていくベンジャミン。女性はよく、ある程度の年齢になると化粧品や美容整形などの力を借りて若さを保とうとするものですが、それは美しく見える状態を保持したいだけで、こんな風に止まることなく若返り続けてしまうのは、羨ましくもなんともないというのがよくわかりました。
 実年齢が子供の頃は容姿が老人で、実年齢が老齢に達する頃には容姿が子供。自分よりもはるかに年下の者に子ども扱いされ、自分の経験や知識も活かすことが出来ない。自分の息子にも疎まれ、彼を本当に理解しているものはひとりもいません。妻でさえ、彼を理解して愛したわけではないだろうと思います。ベンジャミンの母親が一度も話の中に出てこないのも、大きな喪失感を伴います。
 なんと恐ろしく孤独で悲劇的な人生か。
 彼にとっては中身と外見の反比例した一生は、どこをとっても誤解や無理解の連続だったことでしょう。懐かしむ思い出もなかったかもしれない。読みながらかすかに抱いていたハッピーエンドへの期待も軽く裏切ってくれて、思いがけず呆然としてしまいました。特にラストシーンは、印象的です。我々は生から死へ向かって生きているのではなく、生と死が二つ巴の模様のように近接している中にいるのかもしれませんね。

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2009.02.10 Tuesday * 20:01 | 海外その他 | comments(0) | trackbacks(1)
* 『船に乗れ!(1)合奏と協奏』藤谷治
評価:
藤谷 治
ジャイブ
¥ 1,680
(2008-10)
 二小節でピチカートひとつ鳴らしただけで僕は汗を流した。心の中は焦りで一杯だった。これはやばい。僕は弓を構えなおしながら一瞬で思った。これは、弾けりゃあいいってもんじゃないぞ!(第三章より)

 「のだめ」が好きな人はこちらもどうぞ、な音楽青春小説。
 両親以外の親戚がみな音楽家という家に生まれた津島サトル。物心つく頃にはピアノを弾き、祖父の勧めでチェロを学んで芸大付属高校を受験したが失敗。祖父が学長を勤める新生学園大学附属高校音楽科に進むこととなる。

 オケ組めるような楽器をやってる人って羨ましいなあ。いや、種類にかかわらず楽器を弾きこなせる人には憧れます。
 今はもういい大人になったサトルが、昔を語る形で始まる物語。サトルの生い立ち、音楽と親しんだ少年期、受験の失敗、通い始めた高校の音楽科で出会った先生・先輩・友人たち、受験日に知り合って以後友情を育むことになるフルート専攻の伊藤慧、恋心を抱いたヴァオリン専攻の南枝里子。
 活き活きとひとりの少年の生活が語られていくのですが、冒頭の語り口からすると現在のサトルとその当時のサトルとでは、何か大きな開きがありそう。順調に音楽科の道へと進んでいきそうなサトルが、これからどんな出来事を経てどう変わるのか、二巻以降が気になります。一巻ではとにかく青春してるなあって感じ。人数の少なさから自分の専攻ではない楽器を持たされて、オーケストラを組まされるエピソードは特に印象的でした。四苦八苦しながらも練習を重ね、緊張に震える本番で演奏が揃ったら、きっと忘れられないくらい気持ちいいでしょうね。
 音楽用語が溢れているけれど、門外漢でもなにも心配することなく楽しめました。曲名言われてもそのメロディがすぐに思い浮かばないのはちょっと残念だけど、それでも彼らがその曲にどう取り組んでいるのかという部分はよくわかります。サトルと友人たちがホーム・コンサートをやったときに、オルガン奏者でもあるサトルの祖父がバッハの曲を二曲弾く場面があるのですが、なにも言わずに弾かれたその曲のタイトルが後日わかるとことはちょっとじんとしました。

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2009.02.09 Monday * 16:36 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『ガラスの仮面 (43)』美内すずえ
 久々に出た『ガラスの仮面』最新刊。4年ぶりでしたっけ? 雑誌のほうで連載も再開されて。……でもちっとも話進んでなーい! 正直、真澄さんとマヤの恋愛話は食傷気味です。何回似たような遣り取りを繰り返すんですか、紫のバラの人。アタクシ、何度も既視感を覚えましてよ。詩織さんはどこまで耐えられるのかしら。前に一度その件でキレられたように記憶しているのですが。
 それより演技! 演技してるシーンを増やしてほしいな〜。小野寺センセは相変わらず腹黒いですが、亜弓さんは黙々と禁欲的に役に取り組んでいて応援したくなります。真面目ですよね、亜弓さんて。
 桜小路君に関しては、なんだかかわいそうになってきました。もともと真澄さんの対抗馬としては、彼はやさしすぎると思っていたんですが、もはややさしいとかいうレベルではないと思います。マヤに感化されてよく言えば一途な不思議君、悪く言えば空気の読めない人になってきています。しっかりしてー! 舞ちゃんは……その存在をすっかり忘れてました。次巻は、この内容を忘れないうちに出てほしいです。
 月影先生がお元気なうちに!
 マヤがスピリチュアルワールドに行ってしまう前に!

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2009.02.07 Saturday * 03:09 | 漫画 | comments(2) | trackbacks(2)
* 『チェーン・ポイズン』本多孝好
評価:
本多 孝好
講談社
¥ 1,680
(2008-10-30)
「人はみな孤独です。誰だって一人分の孤独を抱えている。そんなものに重いも軽いもない。等しく一人分の孤独を、みんな抱えているんですよ。一人分の孤独になら耐えられる。そういう耐性を人間は備えているはずです」(本文より)

「本当に死ぬ気なら、一年待ちませんか? 一年頑張ったご褒美を差し上げます」
 そんな話を持ちかけられた死に焦がれるひとりの女性と、その一年後に連続自殺事件を追う週刊誌記者の話。ふたりの視点で交互に語られていく物語は、果たしてひとつに繋がるのか。それとも平行したままなのか。女性は先にある死に向かって日々を過ごし、記者は死から遡って自殺者たちの生きた姿を追う。この構成も面白いですが、最後まで読むとあっと言わされてもう一度読み返したくなります。そしてそこを抜きにしても、ふたつの視点で書かれるそれぞれの話の続きが気になって一気読みしました。

 「死にたい」と「死んでもいい」は似ているようで大きく違う。
 一年後に自殺する決意をした女性はその日まで絶望したままなのか、なにかしらの救いを見つけられるのか。記者は彼らの自殺の謎を突き止めることが出来るのか、そこにはどんな繋がりがあるのか。それと、記者自身の自分の仕事に対する罪悪感は加重されていく一方なのか、軽減される出来事があるのか。大きく見ればテーマはひとつに絞れるでしょうが、読みようによって、あるいは読む人によって、いくつものテーマが織り込まれているように思いました。読んでいる自分は彼女の死を見届けたいのか、どこかで救われることを望んでいるのか。常に、対になったふたつの考えを持って場面場面を読み進んでいきました。装丁もそれを表しているように、外側は黒くて中の紙は真っ白。

 読み終わったとき、登場人物が知らない「希望」がそこにはあって、それを知っているのは作者と読者だけ。それって、現実世界の自分達を見ているような気にもさせられました。自分が気づいていないからといって、世の中にまったく救いがないわけじゃない。それはぼんやりしていてはわからなくて、本気で行動を起こしたときに巡り巡るものなのかも。
 タイトルの『チェーン・ポイズン』も、話の中に出てくる毒物が巡る様子の他に、孤独や絶望もまた人を死に至らしめる「毒」だと、ふたつの意味をかけてあるのかな。

 『正義のミカタ』では「正義」の捉え方を、そしてこの『チェーン・ポイズン』では「生と死」あるいは「絶望と希望」について考えました。ホスピスや死刑制度について触れている部分も多少あるのに、ちっとも鬱陶しくないしウェットな泣かせに走るでもない。面白かったなあ。オススメです。

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2009.02.05 Thursday * 21:58 | 本多孝好 | comments(0) | trackbacks(2)
* 『GOTH モリノヨル』著:乙一、写真:新津保建秀
評価:
乙一
角川グループパブリッシング
¥ 1,680
(2008-12-17)
「きみは?」
「森野の友人です」
 (「GOTH番外編 森野は記念写真を撮りに行くの巻」より)

 雑誌「ダ・ヴィンチ」の対談を読むと、映画『GOTH』で森野夜を演じた女優・高梨臨の写真集として企画されたものだったとか。なるほど、だから前半は『GOTH』のサイドストーリーで後半は写真だらけという作りなんですね。写真集というには女優さん個人の名前を出していないし、乙一ファンや小説の『GOTH』ファンが買うには高いなあ。サイドストーリー目当てで買うのはオススメできません。
 小説部分の内容は、少女を殺しその物言わぬ姿を写真に収めることに抗いがたい魅力を覚えるカメラマンと、彼の殺した少女の死体遺棄現場で出会った森野夜の話です。正直『GOTH』の細かい内容は忘れかけていました。読んだのは、ハードカバーで刊行された時だったので。けれど夜の湿り気が宿っているかのような文章に、すぐあの物語の雰囲気に引き戻されるような心地にはなりましたね。森野の友人である「彼」が出てくるあたりでは、その存在感にワクワクしたし。ただ、如何せん、短い話が一編だけというのは物足りない。やっぱり『GOTH』好きだなあ、続き書いて欲しいなあ、という欲求が高まった一冊でした(笑)

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2009.02.04 Wednesday * 20:30 | 乙一 | comments(0) | trackbacks(1)
* 『本格ミステリ・フラッシュバック』千街晶之、大川正人、戸田和光、葉山響、市川尚吾
評価:
千街 晶之,大川 正人,戸田 和光,葉山 響,市川 尚吾
東京創元社
¥ 2,415
(2008-12)
 ある作家はセールスなど関係なしに独自の境地を拓き、ある作家は大衆向けの作風に本格スピリットを巧みに盛り込み、ある作家は謎解きとその他の要素の融合を試み、ある作家は時代の風が再び自分にとって順風になるのをしぶとく待っていた。
  (まえがきより)

 松本清張以後(1957年)から綾辻行人以前まで(1987年)に発行された本格ミステリを紹介している、とても力の入った一冊です。この時期って、松本清張氏を筆頭とした社会派推理小説の台頭で、それまでの探偵小説が隅に追いやられてしまった印象を持っていたんですが、決してその時期も本格ミステリが書かれていなかったわけではなく、冒頭に引用したようにそれぞれの方法で書き続けられていたのだなと、改めて感じ入りました。
 意外な作家の名前や著作も挙がっていて、読みたい本がいーっぱい。惜しまくは、読みたい本がたくさんあるのに、今は絶版になっているものが多いってことでしょうか。図書館や古本屋行って探すしかないかなあ。石原慎太郎氏の『断崖』とか気になります。

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2009.02.03 Tuesday * 22:21 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『短劇』坂木司
評価:
坂木 司
光文社
¥ 1,785
(2008-12-17)
 「本が好き!」というPR誌に掲載された26の掌編(というかショートショート)からなる本。ひとつの話が約10ページなので一日一話ずつ読むのもいいでしょうし、一気に一冊読みきってしまうのもいいでしょう。
 今までの坂木さんのイメージはせつなさや爽やかさでしたが、ここではブラックな面が随分と出てました。誰しも白と黒の面はあるもので、その一面をようやく見せてくれたって感じかな。かなりグロい描写のものも中にはあります。けれど温かみのある話もあるし、せつない恋心をさらっと書いた話もあって、どれかしらお気に入りの話が見つかるでしょう。私は、ふたりの老人の会話だけで話が進んでいくちょっとブラックな「恐いのは」と、思わず「羨ましい!住みたい!」と思ってしまった「ビル業務」が好みでした。

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2009.02.03 Tuesday * 00:09 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)

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