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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『秋期限定栗きんとん事件(上)』米澤穂信
 ぼくはこう思っている。――どうだ。その程度でぼくに謎をかけようなんて、おかしくって話にもならない。もうちょっと手の込んだやつで、出直してきてくれないかな。
 言えないのだ。そんなことは、もう。 (「第三章 とまどう春」より)

 待ってました。「小市民」シリーズ新刊。春・夏ときて秋がようやく出ましたね。それも上下分冊。少しでも長く楽しめるのは嬉しい。
 いつでもどこでも推理せずにはいられない小鳩くんと、小学生にも見紛う容姿と裏腹に嬉々として復讐に勤しんでしまう小佐内さん。自分の性によって嫌な思いをしてきた反省から「小市民」を目指そうとしているふたり。そんな彼らが互恵関係を解消してしばらく経った頃、それぞれに付き合う相手ができました――というところから始まっています。
 上巻では小鳩くんと小佐内さんが顔をあわせることなく話が進んでいきます。いつふたりが再会するかが、一番気になるところ。
 小市民たるべく毎週デートを重ねる小鳩くんが、気づくと彼女そっちのけで頭の中で推理を始めてしまう場面には笑いました。それでこそ小鳩くん。だけど、それじゃあ遅かれ早かれ愛想を尽かされてしまうんじゃ……。小市民を装うのなら、彼氏彼女なんてお互いの内部に入り込もうとする関係は持たないほうがいいですよ。
 一方の小佐内さんが付き合い始めた瓜野くんは、なんだか非常に危なっかしい。新聞部で大きい事件を物にしようと奔走するのはいいけれど、どうも思慮に欠けるような。しかし、彼の追いかけている連続放火事件が次第に大きなものへと発展していくのには、こういっちゃなんだけど期待しています。どんな風に繋がるのか、放火犯は誰なのか。
 新聞部といえば、小鳩くんの友人・堂島健吾が部長を務めているのですが、後半ぐっと存在感が増してきて嬉しいです。前半は瓜野くんの視点で語られているので、どうしても過去の事件で小鳩くんたちと行動していた健吾と同一人物という感じがしなかったんですよね。小鳩くん視点の語りの中に登場してくれてようやく役者が揃った観がありました。
 それにしても、小佐内さんが甘いものを好きな理由には、驚くと同時に「なるほど」と納得しました。この上巻で一番驚いたところかも。
 さて、下巻読もう。

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2009.03.31 Tuesday * 01:47 | 米澤穂信 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『実さえ花さえ』朝井まかて
評価:
朝井 まかて
講談社
¥ 1,680
(2008-10-21)
「実さえ花さえ、その葉さえ、今生を限りと生きてこそ美しい」
 (第三章「実さえ花さえ、その葉さえ」より)

 寛政の頃の江戸・向嶋で種苗屋を営む若夫婦、新次とおりんとその馴染みの者達の物語。際立った男ぶりだが色事が苦手で腕のいい花師の新次と、実父とその後妻に家を出された元手習いの師匠おりんは、日々草木に丹精をこらす日々を送っているのだが――。

 これはよかった!
 連作短編集ですが、登場人物たちが誰一人としてその場限りの者でなく、その後の姿までをも読者に想像させてくれる生きた存在に感じられました。啖呵を切るところではスカッとするし、因縁をつけられるところではまるで我が事のようにむかっ腹が立ちましたよ。
 主な登場人物は、新次とおりん夫婦、ふたりが預かることとなったしゅん吉、新次の昔馴染みの留吉とお袖夫婦とその子供たち、新次が若い頃修業していた霧島屋の一人娘で才能ある花師でもある理世、大店上総屋の隠居六兵衛とその孫辰之助。
 主人公が草木を扱う種苗屋だけにいろいろな植物が出てきて、その成り立ちや性を知るのも楽しいです。江戸時代の人々の花や植木との関わり方も興味深い。
 物語には、正論だけでは巧く捌くことの出来ない情のやり場や義理の立てようなど、単なる人情話に終わらない余韻がありました。シリーズ化して長く続けられそうな設定なのに、すっぱりと各人の行く末を描ききっていたところを勿体ないと思うのは、野暮ってもんでしょうね。さればこそ、冒頭に引用した作中の言葉が生きるのでしょう。

 第3回(2008年)小説現代長編新人賞奨励賞。驚いたことに、これが初めて書き上げた作品だとか。今後も新作が出たらチェックしたいと思います。

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2009.03.25 Wednesday * 01:03 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『つみきのいえ』平田研也(文)、加藤久仁生(絵)
評価:
平田 研也
白泉社
¥ 1,470
(2008-10)
 アカデミー賞の短編アニメーション部門を受賞した『つみきのいえ』の加藤監督が絵を、脚本の平田氏が文を担当して出した絵本。
 年々水位の増す海の中に建つ家に住むおじいさんの話。水位が上がるたびに家の上に家を建てて暮らしてきたが、水面下に沈んでいる昔の家々にはそれぞれ大切な思い出がある。
 これは大人のための絵本かもしれませんね。子供には、このおじいさんの姿に共感するほどの過去や思い出がまだないから。その分大人が読むと、しみじみと自らの過去を振り返るのではないでしょうか。

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2009.03.23 Monday * 19:47 | 絵本・児童書 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『退出ゲーム』初野晴
評価:
初野 晴
角川グループパブリッシング
¥ 1,575
(2008-10-30)
 「これが最初の打診だ」萩本兄は作業服のポケットから一枚の用紙を取り出した。それはオモイデマクラの申込書だった。
 新聞の見出しを切り貼りした、脅迫状みたいな体裁になっている。
 ……アホだ。この学校はアホな子ばっかりだ。(「エレファンツ・ブレス」より)

 高校一年生の穂村千夏とその幼馴染の上条春太は吹奏楽部に所属している。少人数ゆえに演奏曲目にも制限が出てしまうほどだが、彼らは吹奏楽の甲子園・普門館を目指している。吹奏楽経験者を見つけては勧誘に勤しむ。
 そんなふたりが出合う学園内での事件の数々が連作短編の形で書かれています。文章は読みやすく、明るい雰囲気で話は進んでいくのですが、ラストに書き下ろされた「エレファンツ・ブレス」でズンと重みが加わりました。「結晶泥棒」の可愛らしさや、「クロスキューブ」での弟の思い、「退出ゲーム」における友情も良いのですが、「エレファンツ・ブレス」の真相の重さが私は一番好きでした。

■「結晶泥棒」
 毎年掲示板に貼り出される学園祭中止の予告状。交換条件として要求している物は教頭のカツラ。いつもなら一笑に付されるところだが、今年は化学部から劇薬の結晶が盗まれた……。

■「クロスキューブ」
 幼くして亡くなった弟が姉に残した白一色のルービック・キューブ。誰も知らない完成形に残された姉へのメッセージはどのようなものなのか……。

■「退出ゲーム」
 サックス奏者としての才能を持つ部員を取り合っての、吹奏楽部と演劇部の演劇対決。方法は、舞台上から先に退場することができたほうが勝ちの「退出ゲーム」。

■「エレファンツ・ブレス」
 色をある方法で変換することで思い出を夢の中で再生できる「オモイデマクラ」を開発した発明部。そこに色彩辞典にも載っていない「エレファンツ・ブレス」という幻の色をリクエストしてきた人物がいた……。

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2009.03.04 Wednesday * 18:56 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(1)
* 最近買った本
秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)麗しのオルタンス (創元推理文庫)心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿 (創元推理文庫)幻想探偵―異形コレクション (光文社文庫)SFが読みたい! 2009年版―発表!ベストSF2008国内篇・海外篇 (2009)虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)耽美なわしら〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)探偵は犬を連れて (創元推理文庫)針の眼 (創元推理文庫)犬神博士 (角川文庫)贋作ゲーム―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)ふしぎの国の犯罪者たち―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)十の罪業 BLACK十の罪業 REDさよなら絶望先生 第16集 (16) (少年マガジンコミックス)PLUTO 7 (ビッグコミックス)秘密(トップ・シークレット) 6 (6) (ジェッツコミックス)
 たまに記事にしとかないとそのまま放置で積読本になっちゃうんで。

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2009.03.04 Wednesday * 17:48 | 雑記 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『殺人鬼フジコの衝動』真梨幸子
評価:
真梨 幸子
徳間書店
¥ 1,890
(2008-12)
 人生は薔薇色のお菓子のよう

 一家惨殺事件の生き残りとして叔母に引き取られたフジコ。それまでのフジコは、両親からの虐待や同級生からの暴力といじめでボロボロだった。新しい生活と共に希望に満ちた人生を送ろうと心に決めたが――。

 冒頭からしばらく続くフジコが受ける虐待やいじめ、暴力などの描写がもう、気分悪くて悪くて……。「生理的にダメだわ、受け付けないわ」と、何度も途中で読むのをやめたくなったけれど、最後まで読んでしまいました。こちらの体力を大幅に削減され、ものすごく嫌ぁな気持ちにさせられて、決して好きにはなれない話なんだけど、なぜか嫌いだとも言えない。それだけ読ませる本でした。むしろ時間が経つにつれて、強烈なインパクトが鮮やかな残像となって残りそう。
 家族を失ったことで希望を見出すフジコ。幸せになろう幸せになろうとするのに、いつの間にか狂っていく彼女の人生。絶対になりたくない反面教師だったはずの母親に、次第に似てくるフジコの様子は、哀れでもあり滑稽でもありました。悲しみを伴うには、少々フジコが犯していく殺人が戯画的かな。そこが逆に突き抜けた感じに見えて、作中に出てくる「蝋人形、おがくず人形」というフレーズが活きるわけでもあるんですが。
 「はしがき」から「あとがき」とその後に至るまで、すべてが作品のうち。よく「あとがき」から読んだり、奥付を確認してから読むことがありますが、この本は頭から順番に読むことをおすすめします。そして気力体力が落ちているときには、ちょっとそのまま置いときましょう。

 それにしても、『少女』『名もなき毒』『殺人鬼フジコの衝動』と、立て続けにボディブローを食らうような作品を読んだので、次は清涼飲料水がわりに青春ミステリでも読もうかな。

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2009.03.03 Tuesday * 04:28 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『名もなき毒』宮部みゆき
評価:
宮部 みゆき
幻冬舎
¥ 1,890
(2006-08)
 私は、我々の内にある毒の名前を知りたい。誰か私に教えてほしい。我々が内包する毒の名は何というのだ。(本文より)

 散歩途中の老人が、コンビニで買ったウーロン茶を飲んで死亡した。首都圏で発生している無差別連続毒殺事件の犠牲者のひとりと見られている。今多コンツェルン社内報編集部にいる杉村三郎は、職場のトラブルメーカーであるアルバイト女性の身上調査をするうちに、この犠牲者の孫娘である女子高生と知り合い、事件に巻き込まれることになる――。

 前作『誰か―somebody―』よりもこちらのほうが好きです。というよりも、今作でようやくこのシリーズが動き出したような感じがします。
 『誰か』では主人公の杉村に終始イライラしてしまってしょうがなかったんですが、今思うとそれは逆玉の輿に乗ったというだけで痛烈に皮肉られたり面罵されたりしても言い返さない杉村に対するもどかしさでした。思ったことを言わずにいるのは「腹ふくるるわざ」と吉田兼好も言ってますし、見ているだけでストレスが溜まっちゃってしょうがなかったんですよね。この作品では相変わらず言い返しはしないものの、ほんのちょっとだけ杉村が自分の中にあるものを自覚したので一歩踏み出した感がありました。杉村のトラブル引き受け体質は単にお人好しで優しすぎるからじゃなく、彼個人の資質と現状に対する鬱屈の表れに見えます。
 無差別連続毒殺事件と杉村の職場のトラブルメーカーのふたつが軸となって話は進んでいきますが、そこにはシックハウス症候群や土壌汚染問題に介護問題と格差といった、様々な負の要素が盛り込まれていました。どれもこれもひとつだけを切り取って解決できるものではなく、幾つもの不幸の種が芽吹き絡み合いながら成長していくことでどんどん閉塞感が増していきます。もがいてももがいても向け出せないスパイラルは、ちょっと『火車』を思い出したりもして。
 宮部作品を読んでいると、たまにものすごく怖くて不安になります。ホラー的な怖さではなくて、現実として怖い。普段目を瞑って歩いている橋が、本当は目を開けると大峡谷に渡された一本の綱で、気づいてしまったが最後、次の一歩が踏み出せなくなってしまいそうな、そんな心持ちにさせられるんです。杉村のことをお人好しだのなんだのとは言えませんね。
 シリーズが動き出し、杉村の内面にも変化があったと書きましたが、それはこれから先波乱を呼ぶ予感でもあります。波乱の末に大団円……とは、ならなさそうだなあ。

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2009.03.03 Tuesday * 03:37 | 宮部みゆき | comments(0) | trackbacks(1)
* 参った
以前から不調でしたが、ここ数日ずっとネットに繋がらなくて参ってます。
更新できないこともそうですが、普段ネットでしているあれやこれやの用足しができないのは不便ですねえ。
う〜ん…
2009.03.01 Sunday * 01:32 | 雑記 | comments(0) | trackbacks(0)

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