* スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『天使と悪魔 (上)』ダン・ブラウン (著)、越前敏弥 (翻訳)
評価:
ダン・ブラウン
角川書店
¥ 620
(2006-06-08)
「神はまちがいなく存在する、と科学は語っている。自分が神を理解することは永遠にない、とわたしの頭は語っている。理解できなくていい、と心は語っている」(本文より)

 ハーヴァード大の図像学者ラングドンは、欧州原子核研究機構(セルン)の所長から突然かかってきた電話を受けた。そして、ある紋章についての説明を求められる。それは十七世紀にガリレオが創設した科学者たちの秘密結社“イルミナティ”の伝説の紋章で、ある死体の胸に焼印として押されていたのだという――。
 『ダ・ヴィンチ・コード』のラングドンシリーズですが、こちらのほうが先の、シリーズ第一作なんですね。発端から展開まで、つくりは『ダ・ヴィンチ・コード』とそっくりです。扱っているのも秘密結社関係だし。あとはその秘められた過去とそれに基づく推論がどれだけ面白いかってところにかかってますが、なにしろまだ上巻なのでどれだけ楽しませてくれるか今の段階ではわかりません。
 映画化されたので観る前に読もうと、積読本の中から掘り出しました。う〜ん、これは単行本で出た2003年じゃなくて、文庫になった今読んでよかったかも。日本人研究者たちがノーベル物理学賞を受賞して、素粒子関連の文章や映像を目にすることが多かったから、この上巻の前半に書かれていることになんとかついていけた気がします。「あ、反物質って聞いたことあるぞ」ってくらいには(笑)
 物語はヴァチカンでのコンクラーベ(教皇選挙会)と大きくかかわるのですが、ここで出てくる前教皇の侍従(カメルレンゴ)を務めるカルロという人物が、早くもお気に入りです。

にほんブログ村 本ブログへ
【ほんぶろ】〜本ブログのリンク集
JUGEMテーマ:読書
2009.05.22 Friday * 19:19 | 海外ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『鷺と雪』北村薫
評価:
北村 薫
文藝春秋
¥ 1,470
(2009-04)
「前を行く者は多くの場合――慙愧の念と共に、その思いを噛み締めるのかも知れません。そして、次に昇る日の、美しからんことを望むものかも――。どうか、こう申し上げることをお許し下さい。何事も――お出来になるのは、お嬢様なのです。明日の日を生きるお嬢様方なのです」(「鷺と雪」より)

 士族令嬢・花村英子と彼女のお抱え女性運転手“ベッキーさん”こと別宮みつ子が、上流階級の日常の謎を解くシリーズの第三弾。文藝春秋社の作品紹介ページを見ると、これがシリーズ完結巻なのだとか。もっと続きを読んでいきたいシリーズですが、三作収められているその並びといい、最終話のラストの一文といい、とても余韻が残ってシリーズの幕切れには相応しく思えます。
 名門の子爵がルンペンをしているかもしれないと密かに調べる「不在の父」、深夜に上野で補導された少年が日記に書いていた「ライオン」という言葉の意味を調べる「獅子と地下鉄」、海外に出張しているはずの許婚者が写真に写りこんでいた謎を解く「鷺と雪」の三作。
 このシリーズは、文章が落ち着いていて作中の人物達の言葉遣いも美しいので、読んでいて心地良いんですよね。出てくる書名や演劇、当時の流行物なども興味深い。あとがきによると、ここに収録された話のもとになる出来事が実際にあったというのも面白い。
 短編ひとつひとつが進んでいく中で、ひっそりと全体に横たわる世相の不穏な空気が、最後になんとも重くひんやりとした余韻を残します。ああ、今までのあれやこれやが、そんなところに帰結するなんて……。作中に出てくる詩の一説「騒擾ゆき」という言葉が、しんと静まり返った中に浮かび上がるようです。
 もっと長く読んでいきたいと思っていたシリーズだけれど、この余韻のまま幕切れとするのがいいのかもしれませんね。華族制度も日本という国も、この後大きく変わってしまうから。冒頭に引用した別宮の言葉は英子嬢に向けられたものですが、この物語を読んでいる者皆へ向けての言葉でもあるように思います。

 ※文藝春秋社の作品紹介ページでこの作品の試し読みができます。

にほんブログ村 本ブログへ
【ほんぶろ】〜本ブログのリンク集
JUGEMテーマ:読書
2009.05.21 Thursday * 00:26 | 北村薫 | comments(0) | trackbacks(1)
* 『マイ・ブルー・ヘブン―東京バンドワゴン』小路幸也
「あの、急いでいますのでお礼も出来ないんですが、お名前を」
 からからと笑いながら、ひらひらと右手を顔の前で振りました。
「礼なんかいいさ。名前は堀田勘一ってんだ」
 (第一章「On The Sunny Side Of The Street」より)

 「東京バンドワゴン」シリーズの最新刊。これが4冊目ですかね。時代が昭和20年代へと遡り、堀田家の頑固親父・勘一とその亡き妻でシリーズの語り手・サチの馴れ初めと、ふたりが知り合うきっかけとなったとある<文書>についての話です。今までの話はご近所の「文化文明に関する些事諸問題」を解決していましたが、これはまたずいぶんと大きい話になっていました。それこそ、戦後日本を左右するほどの。
 終戦直後の昭和20年、子爵令嬢・五条辻咲智子は父・政孝からとある<文書>の入った箱を持って親類の家へ逃げるよう言いつかります。ところがそこへ向かう途中で追っ手に捕まりそうになり、それを堀田勘一という若者に助けられ――。
 我南人のあの口調の理由や堀田家の家訓の理由、藍子・紺・青の名前の理由など、このシリーズのルーツがわかり、今までちらほら話に出てきていた名前が当事者として活躍するので、シリーズ読者は家族の昔話を聞いているような気持ちになるでしょう。といっても、シリーズを読んでいなくてもなんら問題なく楽しめます。ここから入って、シリーズ既刊分をその先の物語として読む進めてもいいんじゃないかな。
 作中のキーパーソンとなるブアイソーなる人物は、実在したある人物を想像させますね。「従順ならざる日本人」とくれば。それに。バンドワゴンの馴染みの客で吉川という作家がちらっと出てくるんですが、これも戦後しばらく筆をとらなくなってしまったところなど、吉川英治をモデルとしているんだろうなあと思って読んでいました。そういうちょこちょこ出てくるお遊びも楽しいです。

 堀田家は今も昔も「LOVE」に溢れていました。そしてみんなの知恵と心意気で突き進んでいました。次は、我南人とその亡き妻の話が読みたいなあ。今回は勘一とサチに関するエピソードよりも、ジョーの生みの親がバンドワゴンに姿を表すシーンにぐっときました。
 集英社の公式ページを見たら、担当編集者さんが「とにかく、時代背景は今とまったく違っても、ああ、あの温かくて優しい<東京バンドワゴン>はここからもう始まっていたんだ、と思えるようなものがいいんです」とリクエストしたとか。なるほど納得です。

 ※集英社のサイトに試し読みのページがありますよ。

にほんブログ村 本ブログへ
【ほんぶろ】〜本ブログのリンク集
JUGEMテーマ:読書
2009.05.17 Sunday * 22:55 | 小路幸也 | comments(0) | trackbacks(2)
* 『廃墟建築士』三崎亜記
評価:
三崎 亜記
集英社
¥ 1,365
(2009-01-26)
 かつて「彼ら」は、図書館という名前ではなく、「本を統べる者」と呼ばれていた。
 多数の本を引き連れて世界の空を回遊し、「統べる者」同士が引き連れる本の多寡で覇を競いあったのは、もはや伝説にしか残っていない、はるか昔の話だ。(「図書館」より)

 まったくの異世界や別世界ではなく、今私たちが住んでいるこの世界をベースに、ちょっと不思議な法令や行政、文化などがプラスされた少しずれた世界観が面白い三崎亜記さんの短編集。感想を書いたつもりで書いてなかった……。第五作目にあたりますね。表題作に合わせて表紙も方眼紙のようなデザイン。

■「七階闘争」
 マンションの七階で起こった事件をきっかけに、町のすべての建物から七階をなくす条例が可決され、町からどんどん七階が消えていく。主人公の「僕」は、同僚の並川さんに誘われるままその反対運動に参加するのだが――。
 七階だけを消すというのは一体どうするものなのかと思いましたが、なるほどそういうことですか。「七階の誕生秘話」とか「イルムーシャの七階」とか、歴史的意義のある存在と裏付けるような文献やエピソードなどもちらっと出てきて、そこが三崎さんらしくていいですね。『となり町戦争』と似た雰囲気。
 ところでこのお話の中に「覆面着用の自由化に伴う支援策について」という議案が出てくるのだけど、するとこれは『鼓笛隊の襲来』収録の「覆面社員」と同じ世界なんですね。んでもって、「覆面社員」は『バスジャック』収録の短編「バスジャック」と同じ世界だから、このみっつの話は同一世界の出来事になるわけです。覆面着用の自由が確立され、バスジャックが公的に認められ、そして七階をめぐる闘争が起こっている町(世界)って!(笑) 思わず既刊作品を読み返して関連図みたいなのを作りたくなりました。

■「廃墟建築士」
 廃墟を文化芸術のひとつとして認めている世界。「第一種廃墟」「第二種廃墟」「みなし廃墟」などに分類され、廃墟先進国では廃墟専門のマイスター制度もあるという。主人公・関川は廃墟に見せられ廃墟建築士として生きてきたが――。
 廃墟の描写が美しい一編。特にラストシーンが印象的でした。実際にこちらの世界でも、廃墟の写真集や廃墟マニアの人たちがいるし、廃墟って眺めているとそこに至るまでの過去のドラマを想像させますよね。
 この話の中にも他作品へのリンクがあって、主人公・関川の修士論文の研究テーマが「二階扉による分散型都市モデル」。ってことは、『バスジャック』収録の「二階扉をつけてください」と同じ世界ですね。ふむ。今まで書かれた三崎作品は、もしかして全部同じ世界のお話なのかな。すべて地続きになってそうな。

■「図書館」
 図書館の本の中に眠る「野性」を解放し操る術を持つ「私」。派遣された先の図書館でもうまく本たちを調教できたはずだったのだが――。
 これは『バスジャック』の中の「動物園」に出てくるハヤカワ・トータルプランニングの日野原が主人公のお話。密かにシリーズ化してますね。今回は、「動物園」の時とはちょっと違った能力の使い方。
 本が飛ぶ様子がこれまた美しい光景に思えました。内容の分類ごとに本の性格も違って、飛び方にもそれぞれの特徴が出るところとか、閉架書庫に静かに収まっているのは長老たちだとか、もうこの話を読んでからは図書館に行くといろいろ想像しちゃいます。冒頭に引用した「本を統べる者」たちの物語も読んでみたいなあ。書いてほしいなあ。

■「蔵守」
 略奪者から蔵を守る蔵守。その蔵守と蔵の、ふたつの視点で交互に話は進んでいきます。蔵の視点が不思議な感じでした。意識を持った「蔵」の語りに気をとられていると、いつの間にかただの不思議な話から一歩奥へ足を踏み入れかけていることに気づきます。ポイントなのは「踏み入れかけている」というところ。蔵守という制度の向こうになにか大きなものが見えそうで……。別の角度からも見てみたい話でした。例えば蔵守を配備している行政側から、とか。

 ※集英社のサイトにこの本の試し読みページがあります。

にほんブログ村 本ブログへ
【ほんぶろ】〜本ブログのリンク集
JUGEMテーマ:読書
2009.05.16 Saturday * 04:39 | 三崎亜記 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『眠れるレタス姫 (N.Y.salad)』天野喜孝
評価:
天野 喜孝
主婦の友社
---
(2005-05-18)
 みんなが踊り出す真夜中。芽キャベツの精が気になった萎びた葉っぱの中にいたのは、美しいレタス姫でした、というお話。
 ストーリーは正直どうってことなかったんですが、天野喜孝氏が描く明るくやわらかい線のイラストを楽しむにはいい感じかな。私は「天使の卵」とか「吸血鬼ハンターD」とかの、もっとダークで妖艶な如何にも天野さんというイラストのほうが好きだけれど、こちらもふんわり可愛かったです。

にほんブログ村 本ブログへ
【ほんぶろ】〜本ブログのリンク集
JUGEMテーマ:ミステリ
2009.05.13 Wednesday * 20:48 | 絵本・児童書 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『いぬけいと―大好きな犬の毛をつむいで編む』


 愛犬の毛で毛糸を紡ぎ、帽子やマフラーを編む。そんな発想は自分の中にまったくなかったのでびっくり。
 毛糸の作り方からレクチャーしてくれているので、これはグルーミングできるペットを飼っている人には良いのではないかなあ。パグ犬みたいに短毛の場合は、編まずに手で毛をぐにゅぐにゅ丸めてできるフェルトでオブジェを作っても可愛い。毛が犬臭いのではと思う向きには、綺麗に洗う方法も書いてある。犬種ごとにどんな毛糸が出来るのかも掲載されているのでイメージしやすい。
 犬だけでなく猫の毛糸も載っているので、犬・猫両方の飼い主に対応。

にほんブログ村 本ブログへ
【ほんぶろ】〜本ブログのリンク集
JUGEMテーマ:読書

2009.05.10 Sunday * 00:57 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『恋文の技術』森見登美彦
評価:
森見 登美彦
ポプラ社
¥ 1,575
(2009-03)
 せっかくの機会だから、俺はこれから文通の腕を磨こうと思う。
 魂のこもった温かい手紙で文通相手に幸福をもたらす、希代の文通上手として勇名を馳せるつもりだ。そしてゆくゆくは、いかなる女性も手紙一本で籠絡できる技術を身につけ、世界を征服する。
 皆も幸せ、俺も幸せとなる。
 文通万歳。 (「第一話 外堀を埋める友へ」より)

 おっぱい万歳……あ、いやいやいや、こほん。森見さんの新刊は、全編書簡のみで構成された非常に笑えるお話でした。教授に肩を叩かれ、能登半島の実験所に送り込まれた大学院生・守田一郎が主人公。あまり興味のないクラゲの研究に日々を費やし、しかし一向に実験の成果は上がらず、先輩研究員の谷口に罵倒されたり励まされたりしている。
 そんな一郎が無聊を慰めるべく京都の仲間達に手紙を書き送って始まった、数名との文通。ここに収録されているのは一郎が彼らに書いた手紙のみです。相手からの返信はいっさい載っていません。にもかかわらず、彼らの間にどんなやりとりがあったのかほんのり行間から漏れてくるのです。肝心な文面はわからないけれど、おおまかな雰囲気はわかる。想像をたくましゅうして、ひたすら彼らのやりとりを心の目で見るのです。これが面白い。
 マシマロのような外見を持つ友人・小松崎が恋をしたらしい、その相談に乗っていたと思ったら、小松崎が手紙に108回も「おっぱい」という言葉を書いてきて、そんな友人に呆れつつ、一郎もまた触発されておっぱいを語りおっぱいに思いを馳せて返事がおっぱいのことばかりになってしまう――なんて調子です。
 小松崎以外にも、京都の研究室で女帝のごとく振舞っている大塚女史や、家庭教師をしていたときの教え子・間宮少年、愚痴を書き連ねてくる学生時代の先輩・作家の森見登美彦氏、女子高生でありながらたびたび本質を突き「高等遊民になりてえ」と言う一郎の妹らが文通相手なのですが、読み進めていくとそれぞれに書き送ったことが繋がってきて、全体が立体的に見えてきます。
 なにぶん手紙ですから、一郎も相手に虚勢を張ったり本心を誤魔化するのですが、隠していても「ははあん」と推察できる、その微妙な匙加減がいい。そして一郎が弁解したり誤魔化したりする事の中でも一番は、学生時代から思いを寄せていた伊吹夏子という女性についてです。内弁慶ならぬ手紙弁慶、文通弁慶な一郎がなかなか書けずにいる彼女への手紙。果たして一郎は彼女に恋文を書くことが出来るのか。出来たとしたら、それはどのような恋文なのか。どうか彼の恋がうまくいきますようにと祈るばかりです。いや、きっとうまくいったんじゃないかな。一郎は、ヘタレだけれど一緒にいて楽しい人だと、どの手紙を見ても思いますもん。最後の手紙も、不器用で誠実な良い手紙でした。

【目次】
 第一話 外堀を埋める友へ
 第二話 私史上最高厄介なお姉様へ
 第三話 見どころのある少年へ
 第四話 偏屈作家・森見登美彦先生へ
 第五話 女性のおっぱいに目のない友へ
 第六話 続・私史上最高厄介なお姉様へ
 第七話 恋文反面教師・森見登美彦先生へ
 第八話 我が心やさしき妹へ
 第九話 伊吹夏子さんへ 失敗書簡集
 第十話 続・見どころのある少年へ
 第十一話 大文字山への招待状
 第十二話 伊吹夏子さんへの手紙

にほんブログ村 本ブログへ
【ほんぶろ】〜本ブログのリンク集
JUGEMテーマ:読書
2009.05.09 Saturday * 03:11 | 森見登美彦 | comments(0) | trackbacks(0)

| 1/1Pages |