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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『納棺夫日記』青木新門
評価:
青木 新門
文藝春秋
¥ 490
(1996-07)

 先頃、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した映画『おくりびと』の元となった本。今週末にWOWOWで『おくりびと』が放送されるので、それを観る前に読んでみました。私が期待していたのは、タイトルにあるように亡くなった人を納棺することを仕事とした人の実体験とその周辺の物事。そこのところの記述が、想像していたよりずっと少なかったです。死者と日常的に接していると、どうしても死について考えてしまうとは思いますが、途中から親鸞と宮沢賢治を引用しての死生観になっていってしまい、正直読むのが苦痛になりました。
 だからといってつまらない本というわけではなく、葬儀社に勤める著者が目のあたりにした死者や死体の描写などから思うところがあったり、著者の心の動きや関心が次第に親鸞の教えや宮沢賢治の詩などに向かっていく様子などから「死」を自分も考えてみる気になったりさせられました。
 それならどうして後半読むのが苦痛になってしまったのか。多分私はまだ死について考える時、どうしてもそこに深い悲しみや痛みを伴ってしまうからなのでしょう。死とはなにかを考える前に、亡くした人を思って辛くなるのです。もう少し年をとって、自分自身の死について考えるようになった頃にまたこの本を読んだら、今とは違った感想になると思います。

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2009.07.31 Friday * 20:22 | 国内その他 | comments(2) | trackbacks(1)
* 『月光亭事件』太田忠司
評価:
太田 忠司
東京創元社
¥ 756
(2009-06-25)

 (略)高森警部は別れ際に言った。
「野上さん、俺たちは金持ちなんかに負けないよなあ、俺たち、正義の味方だもんなあ!」
 私は心優しき刑事たちに手を振って言った。
「そうだ。我々は正義の味方さ」(「第十四章 時間外捜査会議」より)

 少年探偵・狩野俊介シリーズ第一弾。
 引退した名探偵・石神法全(ほうぜん)の後を継いで探偵事務所を営む野上英太郎。彼のもとにある日猫を連れた少年・狩野俊介が訪れる。探偵を志す俊介は優れた観察力と推理力の持ち主だったが、まだ12歳。石神から俊介を一週間ほど泊めてやってほしいとの連絡も入り、その間野上の助手として大病院の院長一家で起こった事件にあたることとなったが――。

 ノベルス版で昔読んだけれど、竹岡美穂さんの表紙につられてつい買ってしまいました。まんまと創元にのせられた(笑) 初読では俊介少年寄りで読んでいましたが、今読むと野上や高森警部の言動に共感を覚えます。そう、この高森警部という人が熱くていい刑事さんなんですよ。そして俊介を預かることになった野上も、初日から俊介を気遣う優しいところを持っていて、人の死ぬ殺人事件の話だけれど全体の雰囲気もどこか温かい。
 語り手の野上が40代半ばの設定なので、12歳の俊介を見る目が優しいんですよね。内容は本格ミステリだけど、ジュブナイルとして子供も読める穏やかな空気が流れています。はじめのうちは自分の推理や観察をすぐに話してしまっていた俊介が、高森警部の一言で慎むようになるあたりなど、周囲の大人たちと遣り取りする中で少年が多くを学んでいく様子も見ることが出来ます。俊介が観察力と推理力を身につけたのが、孤児という身の上からくるものだと知ると、余計にその成長を見守りたくなりました。

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2009.07.24 Friday * 20:01 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 第141回芥川賞・直木賞受賞作
 昨日、第141回芥川賞・直木賞受賞作が決定しましたね。

 【芥川賞】 磯崎憲一郎 「終の住処」
 【直木賞】 北村薫 『鷺と雪』

 ようやく北村さんが受賞しました。
 おめでとうございます! 心からよかったと思います。
 他の候補作もみんな面白そうなので、そのうち読もうっと。

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2009.07.16 Thursday * 23:58 | 雑記 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『子どもたちのいない世界』フィリップ クローデル
評価:
フィリップ クローデル
みすず書房
¥ 2,520
(2006-11)

 寓話のような短編から詩、不思議な言葉で書かれたなんとなく雰囲気で読む掌編まで、さまざまな文章が詰め込まれた一冊。時にはシニカルに、時には夢見るように。この著者の書いた『リンさんの小さな子』がよかったので、これも読んでみたんだけど、あちらが悲しいおとぎ話のような雰囲気だったのに比べて、こちらに出てくる子供たちは随分と冷めている印象。
 子供に諭される不器用な妖精、悪夢の狩人、人々が優しくなるワクチンを開発しようと頑張る女の子、家族にも級友たちにもいじめられて本の世界に行ってしまう男の子といった、奇妙だけれど引き込まれる話の中に、死や絶望、いじめ、格差、戦争、病気などのキーワードが埋め込まれていました。作者はこれを愛娘のために書いたそうですが、なかなかにブラックな話も出てくる本なので、何歳くらいの子に読ませるのにちょうど良いのか、ちとはかりかねます。

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2009.07.15 Wednesday * 20:03 | 海外その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『親の家を片づけながら』リディア・フレム
評価:
リディア・フレム
ヴィレッジブックス
¥ 1,260
(2007-10)

 既に父親を亡くし、そして母親をも亡くした著者が、親の家を片付けながら思うあれこれが書かれた本。エッセイになるんですかね。非常に個人的なモノローグを延々と読んでいる感じでした。私は既に二親を亡くしているので、この本の言葉を使うなら“家なき子”であります。著者の感じる親への哀悼・哀惜・懐古などの感情は覚えがあるし、「もっと愛せたんじゃないか」という後悔もまたわかります。ただ、読み物としてどうかというと、わざわざ本で読まなくてもよかったな、と。ひとりの女性が、肉親を亡くした痛みを、親の持ち物や来歴に思いを馳せることで、少しずつ癒していく様子は見て取れました。
 著者も気持ちの整理をつけるために、親の家の片付けとその時の自分の心の揺れ動きを書くことにしたと言っています。近しい者ならお茶でも飲みながらしみじみと語り合う、個人で抱えるなら日記に書き綴る、そういう内容です。

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2009.07.14 Tuesday * 19:28 | 海外その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『家日和』奥田英朗
評価:
奥田 英朗
集英社
¥ 1,470
(2007-04)

 「家」をテーマとした6篇から成る短編集。ネットオークションに嵌っていく主婦(「サニーデイ」)、会社の倒産を機に主夫業に目覚める夫(「ここが青山」)、妻と別居して部屋を自分の理想通りに変えていく男(「家においでよ)、内職を運んでくる営業が若い男に変わったことで夜エロティックな夢を見るようになった主婦(「グレープフルーツ・モンスター」)、職を転々とする夫とそういう状況のときにひらめきが舞い降りるイラストレーターの妻(「夫とカーテン」)、経済的余裕ができたことで妻が「ロハス」に目覚めてしまい、それをネタに短編小説を書こうとする作家(「妻と玄米御飯」)。
 ラストに収められていた「妻と玄米御飯」の主人公が、奥田さんと重なります(笑) ユーモア小説って生み出すの大変そう。泣かせるよりも笑わせるほうが難しいですもんね。この短編そのものもユーモア小説でありますが、妻やご近所さんたちの動向を見ているとかなり怖いホラーにも思えました。もし、ラストで違う決断をしていたら……。
 日々の小さな出来事の中にある機微を拾い集めていて、それがそのまま毎日の生活なんだなあと思って読んでました。同じような出来事が、読んでいる間にもどこかで起こっているだろうと思える短編集。読者は、どれかひとつの短編に共感できるところがあるんじゃないでしょうか。

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2009.07.10 Friday * 20:47 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『Dog Photographer かわいい犬の写真が撮れる本』かくた みほ
 現在CMなどで活躍しているタレント犬を被写体に、カメラの種類や撮れる写真の雰囲気の解説、特定のシチュエーションや光の明暗の付け方、背景の入れ方などなどをイラストや写真を使って丁寧に説明してある本。犬に限らず、人物写真などにも応用が利くなあと結構真面目に読みました。例えば、逆光でも水辺で撮ると水面がレフ板の役割を果たして明るい表情が撮れるとか、背景の壁や地平線などを真っ直ぐになるよう入れるときっちりとした印象の写真になるとか、キャッチライトと呼ばれる目の中にライトのように光る白い輝きを入れると表情が活き活きするとか。
 ひとつのシチュエーションを見開き2ページで説明してあるのも、見やすい配置。向かって左に著者が撮った写真、右側にそれをどうやって撮ったのかの状況説明のイラスト、それと同じシチュエーションのバリエーションやコラムなど、フォトエッセイとしても楽しめました。ああ、あと自分の撮ったわんこの写真を使ったわんこグッズを作れるサイトや、わんこに関する記事をメインに載せている人気ブログの紹介なども巻末にありました。
 某携帯電話CMのカイ君もたくさんのページに出ています。

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2009.07.10 Friday * 20:12 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『f植物園の巣穴』梨木香歩
評価:
梨木 香歩
朝日新聞出版
¥ 1,470
(2009-05-07)

 おまえがいたから耐えられた道行であった。(本文より)

 『西の魔女が死んだ』や『家守綺譚』の梨木さんの新刊。装丁からして楽しみにしていました。物語も長雨の頃から始まっているので、ちょうどこの季節に読むのにもってこい。

 水辺の植物を扱おうとしているf植物園の園丁である「私」こと佐田豊彦は、歯痛に悩まされ町の歯医者に通う傍ら、幾度か夢とも現ともつかぬ不思議な体験をする。大家が雌鳥に見えたり、人に「げえろっぱ」について聞かれたり。そしていつの間にか椋の木のうろに落ちてしまっていたようだった――。

 主人公と共に読んでいるこちらも足下が覚束ないような、半覚醒のような心持ちになります。「私」の語り口がやや昔の言葉遣いなんですが、それが読んでいて心地良いし、この物語の雰囲気はこの文体に因るところが大きいと思われます。
 様々な者に出会い、薄靄を書き分けて進むような道行でしたが、そこで出会った坊と「私」の最後の会話に、思わず胸を突かれました。感情移入しているつもりはなかったし、そうさせない語り口であったのに。ヤラレた〜。これは再生の物語だと思います。家族の物語でもあるし、自己を追求する物語でもありました。繰り返される歯医者での遣り取りが、最後に比喩として繋がっていきます。
 読むたびに解釈が変わりそうで、何度も読み返しそう。
 そんな中で主人公と歯科医師夫婦(妻は時々犬の姿になる)との遣り取りが、くすりと笑わせてくれてほっとしました。

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2009.07.08 Wednesday * 00:30 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 第141回芥川賞・直木賞候補作
 なんだかいろいろな雑事に追われているうちに、そんな時期になっていたんですね。

【芥川賞候補作】
 磯崎憲一郎「終の住処」(新潮6月号)
 戌井昭人「まずいスープ」(新潮3月号)
 シリン・ネザマフィ「白い紙」(文学界6月号)
 藤野可織「いけにえ」(すばる3月号)
 松波太郎「よもぎ学園高等学校蹴球部」(文学界5月号)
 本谷有希子「あの子の考えることは変」(群像6月号)

【直木賞候補作】
 北村薫『鷺と雪』(文芸春秋)
 西川美和『きのうの神さま』(ポプラ社)
 貫井徳郎『乱反射』(朝日新聞出版)
 葉室麟『秋月記』(角川書店)
 万城目学『プリンセス・トヨトミ』(文芸春秋)
 道尾秀介『鬼の跫音』(角川書店)

 既読なのは、北村薫さんの『鷺と雪』だけ。
 予想はせずに、「どれが獲るのかなあ」とのんびり見守ります。

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2009.07.03 Friday * 19:00 | 雑記 | comments(0) | trackbacks(0)

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