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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
「もういやだ……うちにいたい……事件なんていやだ……」
車中で音野が駄々をこね始めたが、今さら引き返すわけにもいかない。だいたい、現場に行くまでにイヤイヤする名探偵が何処の世界にいるというのだ。(「人喰いテレビ」より)
花の香りで息苦しいほどだ。研ぎ澄まされたのは嗅覚だけでなく、聴覚もだ。森はもっと静かなものだと思ってたけど、全然ちがった。いつもどこかで、葉が落ち茂みの揺れる音がする。(「二章 神去の神さま」より)
それは僕のためではない。それなのに音楽は、この卑劣で高慢でぶざまな僕に向かってさえ、感情を超えたやさしさと美しさに溢れていた。(「第十九章」より)
速さへの執着を捨てなさい
「むろん、この状況を歓迎しているわけではないのだが。だがね、一度こんな場面に行きあってみたいと思っておったのは確かだろうな」
「というと?」
「ずばり、閉ざされた空間での犯罪」(「39 研究棟五階」より)
静かに聴いていると、丸くて細やかで、しかも非常に速やかである。菫程な小さい人が、黄金の槌で瑪瑙の碁石でもつづけ様に敲いている様な気がする。(「文鳥」より)
教えてほしい。きみが望むなら、なんでもするから。
ぼくの手でも、足でも、目でも、命でも、なんでもあげるから。
『銀河鉄道の夜』に出てくる蠍のように、永遠の炎に焼かれてもかまわないから。(「五章 敗れた少年」より)