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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『龍神の雨』道尾秀介
評価:
道尾 秀介
新潮社
¥ 1,680
(2009-05)

 雨の続く数日間の物語。実の両親を亡くした子供たち二組(兄妹/兄弟)が、それぞれ親の再婚相手と暮らしている。ともに家庭はうまくいっていなくて、親に敵意を抱いている。十九歳の蓮と中学生の楓。中学生の辰也と小学生の圭介。ある事件をきっかけに係わりあうことになる二組。

 長雨は昔から物思いに例えられてきたけれど、心象風景として日本人の中には雨に対する共通のイメージがある気がします。ここでは鬱々とした雨が、やがて決壊する子供達の鬱屈した感情と重なって見えました。じめじめと鬱陶しい反面、どこか緊張を孕んだ雨の描写。その時龍神は現れるのか、その場合龍神とはなんなのか、そこが気になって読み進めました。
 心の中に雨が降り続けていると、見えるはずのものも見えなくなるのかもしれませんね。登場人物たちはみな誰かを亡くした悲しみが晴れずにあって、まるで雨の日に傘が折り重なって先が見えなくなるように、悲劇へと進んでいってしまった気がします。

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2009.11.30 Monday * 23:52 | 道尾秀介 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『ミステリが読みたい!2010年版』ミステリマガジン編集部:編
 書影が出ないようですが、書店で目にしたとき、ミシュランガイドそっくりな赤い表紙にちょっと驚きました(笑)
 ランキングは総合のほかに、ジャンル別ベスト5や目的別ベスト5など20ページ以上に渡って細分化されたものが増えていました。他のランキング本との細分化をどうするのかと思っていたんですが、データベースとしての方向に進んでいるように思います。一年分のミステリ総目録として重宝しそうですね。これだけの冊数すべての内容紹介とコメントがつけられているのは、未読本のチェックに役立ちます。いつも、こういうの見ながら今度はこれ読もう、あれも読もうと見読本潰しをしていくので。

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2009.11.27 Friday * 19:50 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『殺気!』雫井脩介
評価:
雫井脩介
徳間書店
¥ 1,680
(2009-09-16)

 大学生のましろは12歳のとき、何者かに拉致監禁された経験がある。無事に解放されたが、犯人は不明で事件は未解決。ひどいPTSD(心的外傷後ストレス精神障害)にかかってしまったため、カウンセリングで当時の記憶を封じ込めてしまった。そのせいなのか、ましろには周囲の「殺気」を感じ取る能力がある。ある日、バイト先の店に強盗が入ったが、ましろの特殊な能力で店は難を逃れるのだが……。

 ましろの過去の事件と、ましろの旧友とその周辺人物たちが繋がってきて、ひとつの絵が浮かび上がるのですが、そこに繋がる道筋が長かったかなー。ましろのアルバイト先の話やましろが参加するファッションショーの部分が冗長に感じられちゃった。読ませる作家さんだし、青春要素をメインとして読むと不満はないだろうけれど、雫井さんてことで私はミステリ要素を重視して読んだので、ちょっと物足りない感じがしました。

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2009.11.21 Saturday * 01:19 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『こりずに 柴犬さんのツボ』影山直美
 寝る犬の
 しっぽが動いて
 臭くなり

 柴犬マニアの著者が漫画と川柳で描いた柴犬との日々。
 犬にも各々性格があって甘えっ子だったり、とぼけた子だったりするのが可愛くて面白いです。他の犬達が喧嘩しているときには知らんぷりしていて、終わったとたんに満面の笑みで「なにかありました?」って駆け寄ってくるのとか笑ったなあ。1センチくらいのコロンとしたうんちを点々とするわんこと、「もうちょっとまとめてやってくれませんかね」と思いながら拾っていく飼い主さんとか、日常的な犬との出来事が描いてあります。
 犬好き、柴犬好きは特に楽しめるんじゃないかな。

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2009.11.19 Thursday * 18:11 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『初恋ソムリエ』初野晴
評価:
初野 晴
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,680
(2009-10-02)

 ぼくたちにとって春の幻なんだよ
 は? まぼろし?
 ああ。ずっと居てほしいという願いもむなしく、儚い夢に終わってしまう(「スプリングフラフィ」より)

 前作『退出ゲーム』の続編で今回もシリーズの連作短編集です。四つの収録作の中では、ローカルFM局の話が出てくる「周波数は77.4MHz」が好きかな。「7・7・4」で「名無し」ってことでしょうか。「アスモデウスの視線」ではゴリラ…もとい、大河原先生の行動が気持ちはわかるけど納得がいかなかったなあ。「初恋ソムリエ」には宮沢賢治が出てきますが、昔語りと賢治の詩が重なり合って雰囲気が出てます。今回もまたラストに重ための話を持ってきて前半の軽さとのバランスをとっている構成。じわじわ増えてくる部員に普門館の予選大会への期待も高まってきましたねえ。

■「スプリングフラフィ」
 春休み初日から音楽室の鍵がない日が何日かあった。先に誰かがきているのかと思って音楽室に向かうと、鍵がかかって入れない。職員室に戻ると鍵が戻っている。いったい誰の仕業なのか……。

■「周波数は77.4MHz」
 人知れず放送されているローカルFM局のFMはごろも。七賢者と呼ばれるお年寄りたちによる人生相談のコーナーを、チカは試験勉強の合い間にこっそり聴いている。そんなある日、生徒会長の日野原に部費との交換条件で、地学研究会の部長を連れてくるように申し渡される……。

■「アスモデウスの視線」
 吹奏楽部の顧問・草壁先生が過労で倒れた。四月から休み返上で働き続けてきた先生だが、他校である藤が咲高校の吹奏楽部の世話もしていたことが大きな原因かもしれない。藤が咲高校吹奏楽部の顧問・大河原が自宅謹慎になってしまったせいだというが、そもそもなぜ大河原が謹慎処分になったのか誰も知らない。チカやハルタらはその原因を究明することになり……。

■「初恋ソムリエ」
 吹奏楽部と知り合いのクラリネット奏者・芹澤が、伯母が「初恋ソムリエ」を名乗る初恋研究会部長の朝霧に騙されているのではないかと相談にやってきた。朝霧は、初恋を再現することが出来るといって伯母さんを呼び出したようだが……。

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2009.11.18 Wednesday * 01:41 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『身の上話』佐藤正午
評価:
佐藤正午
光文社
---
(2009-07-18)

 この主人公の流され方に、自分は違うと言い切れますか。

 ある男が妻ミチルの身の上話を語る体で進んでいく物語。ミチルは職場の昼休みに不倫相手を見送りに行ったまま、飛行機に乗って東京へ行ってしまう。職場の同僚たちに頼まれた宝くじを持ったまま。それが彼女の人生を大きく変えてしまうとは露ほども思わずに。
 中盤までずっとミチルにイライラさせられるんですが、それでも先が気になって一気に読みました。ミチルは根っからの悪人ではないと語り手は言うのですが、流されてしまうところはいいとして、物の考え方が自己中心的で横着なんですよね。なんかもうミチルが好きになれなくて、でも宝くじがどうなるのか気になるし、ともやもやしながら読みました。語り手は一貫してミチルの話をし続けて、彼本人の話は最後の最後にならないと出てきません。彼は一体誰で、なぜミチルの身の上話をしているのか。そこが明らかになると同時に、それまで語られていた身の上話からある真相が見えるところが面白かったです。

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2009.11.06 Friday * 00:43 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(4)
* 『秘密 ―トップ・シークレット― 7』清水玲子
 お嬢さんの命と そこに立ち塞がる 国交の壁 法の壁
 今回はどちらを優先させるおつもりですか 外務大臣

 千堂外務大臣の娘・咲の誘拐事件が発生し、自殺した容疑者の脳の映像から、咲らしき少女の行方を追う「第九」。しかし、それは綿密な計画の始まりにすぎなくて――。
 死者の脳を取り出し、生前の映像記憶を再現する技術を駆使して難解な事件の捜査をする科学警察研究所・法医第九研究室。通称「第九」のシリーズ最新作。前巻から続く外務大臣の娘誘拐事件の話で一冊みっちり埋まっています。帯にシリーズ最厚とあるとおり、今までで一番分厚いですね。けど、その分読み応えも充分。ふう、満足しました。
 娘の命か外交か。選択を迫られる外務大臣は、過去に拉致事件の被害者や被害者家族を、外交を優先して切り捨てた経歴の持ち主です。その行いが今彼に還ってきて、私人として自分の娘の命をとるか、公人として外交を優先するか。先が読めそうで読めない展開に、ページを繰る手が止まらずに一気読みしました。犯人の真の狙いがわかったときには思わず唸りました。ミステリとしても面白い。すごい心理戦。
 いつもせつなかったりやるせなかったりするこのシリーズですが、今回は皮肉の利いた内容になってますね。本筋の事件とはまた別に、「第九」室長の薪さんがせつなくてせつなくて、彼の幸せを願わずにはいられません。薪さ〜ん……。

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2009.11.02 Monday * 22:19 | 漫画 | comments(0) | trackbacks(0)

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