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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『告白』湊かなえ
 愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。

 長らく積読にしていたのをやっと読みました。もう文庫版が出てる!
 事件の関係者たちの告白からなる一冊。それぞれの立場や視点から見た歪みや毒が練りこまれ、読んでいて不快になりそうな一歩手前で抑えてあって、途中で本を置くことなく読みきりました。
 とある中学校の教諭・森口の語りの第一章から始まって、登場人物たちの口を借りて森口の娘の死の真相とそれに至った事情が明らかになっていきます。前章でどうしてそうなったのか、その人物はなにを考えていたのかを疑問に思うと次の章でそれが暗に示され、更にその次で読んでいるこちらは新たな発見をします。この構造が次を読みたくさせて、中断することなく最後まで読ませるのでしょう。
 もとは第一章の部分のみの短編小説だったのを、後から書き下ろし部分を加筆して長編にしたという経緯もあり、第一章だけでも完成された話になっていました。

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2010.04.29 Thursday * 03:01 | 国内ミステリ | comments(0) | trackbacks(0)
* 『ニトロちゃん』沖田 ×華
評価:
沖田 ×華
光文社
¥ 1,000
(2010-03-19)

 目に見えない障害を持った「ニトロちゃん」という女の子の物語。著者の実体験がもとになっているそうです。ニトロちゃんが抱えているのは、アスペルガー症候群、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)という傍からは判り難いもの。学校の先生も生徒達も母親も、ニトロちゃん自身そんな障害があることに気づいてなくて、それがニトロちゃんをどんどんつらい境遇へと追い詰めていきます。
 ニトロちゃんの行動は周囲には「問題児」としか映らず、子供達だけでなく教師にもいじめられるようになります。小学校から中学校まで、それはずっと続きます。死ぬことを考える描写もありました。中学時代の話ではとても卑劣な行為をする教師が出てきました。(小学時代の先生もとても酷い人でしたが……) コミックエッセイの形をとっているのでとっつきやすく読みやすいです。読んでいてつらく気分が悪くなる部分もありますが、まずは知ることが大切なのだと思います。

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2010.04.28 Wednesday * 23:53 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『南の子供が夜いくところ』恒川 光太郎
評価:
恒川 光太郎
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,470
(2010-02-27)

 これまで書かれてきた日本から南の島へと舞台を移した新作。熱帯夜のようなむっとした空気や海のきらめきは感じられたものの、全体的に暑さで見せられた夢のようなもやもやとした感触を残します。肌にまとわりつく不安や不穏な空気を感じるのだけれど、それらの不思議な出来事に解決を示さない民話的な語りで煙に巻かれた感じ。それが南国情緒にもなっていて良いんですけどね。一番好みなのは巻末の「夜の果樹園」でした。これがラストに来たことでもわ〜んと漂っていた熱気がキュッと締まった感じ。

■「南の子供が夜いくところ」
 借金で一家心中を企てた両親に連れられてタカシは海水浴場へ来ていた。そこで知り合ったユナという女性によって、タカシと両親はそれぞれ別の南の島に送られて……。

■「紫焔樹の島」
 その島には「果樹の巫女」と呼ばれる乙女だけが行くことができる聖域があった。しかしある時、島に異国の男が流れ着き、それまで島にはなかった道具や物の考え方も一緒に持ち込まれ……。

■「十字路のピンクの廟」
 十字路にあるピンク色の廟を調べる主人公。生徒や先生など、数名にその廟の話を聞くうちに僅かな齟齬を見つけるのだが……。

■「雲の眠る海」
 シシマデウのいた島は他所の島からやってきた敵に攻め落とされてしまった。シシマデウは島を取り戻すため、伝説に聞く大海蛇の一族を探しに海へ漕ぎ出すのだが……。

■「蛸漁師」
 岬の崖の中にある部屋に住み蛸を獲って暮らす男。彼は昔出て行った自分の息子を探しているうちに蛸漁師と知り合い、蛸漁と崖の中の部屋を譲り受けてそこに住み着いたのだと言うのだが……。

■「まどろみのティユルさん」
 岩から生えているかのように、体が半分植物になった男がいる。その男は遠い昔、海賊であった自分の過去を思い出し、タカシたちに話して聞かせるのだが……。

■「夜の果樹園」
 離れ離れになっていた息子に会いにバスに乗ったはずが主人公。どうやらバスを間違えたようでまったく知らないバス停で降りる羽目になってしまった。歩いていると頭がフルーツで体が人間の生き物が住む村に辿り着き、彼らの飼い犬として迎え入れられ……。

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2010.04.23 Friday * 18:51 | 恒川光太郎 | comments(0) | trackbacks(1)
* 『可笑しな家 世界中の奇妙な家・ふしぎな家 60軒』黒崎敏&ビーチテラス
評価:
黒崎敏&ビーチテラス
二見書房
¥ 1,995
(2008-07-01)

 世界中のおかしな形や造りの家を集めた本。しかもみんな個人住宅。見た目はヘンテコだったり奇抜だったりするけれど、中に入ってみると意外とモダンで快適な空間になっているものが多かったですね。個人の趣味嗜好が反映される他にも、そういうデザインになるにはなにかしらの理由や事情があるんだろうなあ。また外国の景色の中に置かれると奇抜なデザインでも受け入れられちゃうんだよなあ。家はこういうもの、という概念を覆してくれてなかなか面白かったです。

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2010.04.23 Friday * 18:21 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 2010年度本屋大賞発表
 2010年度の本屋大賞受賞作が発表されましたね。
 受賞作は、『天地明察』(冲方丁/角川書店)!
 おお〜、これ読もう読もうと思ってたんです。読まなくちゃ。冲方丁氏は、ライトノベルにSFに時代小説にとジャンルも広げていって、今後も期待大の作家さんですね。早川書房から出ている『マルドゥック・スクランブル』のシリーズも気になってるんだよなあ。あと角川スニーカー文庫から出てる『テスタメントシュピーゲル』も。
 ちなみに、今回の選考に挙がっていた作品は以下の通り。

 大賞 『天地明察』著/冲方丁 (角川書店)
 2位 『神様のカルテ』著/夏川草介 (小学館)
 3位 『横道世之介』著/吉田修一 (毎日新聞社)
 4位 『神去なあなあ日常』著/三浦しをん (徳間書店)
 5位 『猫を抱いて象と泳ぐ』著/小川洋子 (文藝春秋)
 6位 『ヘヴン』著/川上未映子 (講談社)
 7位 『船に乗れ!』著/藤谷治 (ジャイブ)
 8位 『植物図鑑』著/有川浩 (角川書店)
 9位 『新参者』著/東野圭吾 (講談社)
 10位 『1Q84』著/村上春樹 (新潮社)

 また読みたい本が増えました。

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2010.04.20 Tuesday * 23:31 | 雑記 | comments(2) | trackbacks(0)
* 『冥談』京極夏彦
評価:
京極夏彦
メディアファクトリー
¥ 1,449
(2010-03-03)

 岩の上に居たのは、女だったそうです。しかし、そんな場所に女が居る訳はありません。いいえ、居てはならないのです。里の者は絶対にそんな場所に行きません。行こうとしても行けるものではありません。居る筈のない場所に居るものは――。
 それは人ではないのです。(「遠野物語より」より)

 タイトルの「冥」という文字が表すように、どことなくクライ話が多かったです。陰気な話というのではなく、道理がわからずに物事がよく見えていないくらさと、そのものずばりあの世と繋がっている話たち。
 好きな順に挙げると、巻頭にあってしっとりとした余韻を残す「庭のある家」、恐怖の対象イコール死者というわけではない民俗学的な考察が興味深かった「遠野物語より」、思わず自分の住む家について考えてしまった「予感」がお気に入り。「予感」の中にある「家は生命のアナロジー」云々っていうところが面白かったです。それと、掉尾を飾る「先輩の話」はなんともおぼろげで、あちら側とこちら側どちらに立って読んでいるのか心許なくなりました。この話がラストにくることで、それまで読んできた冥談の数々がぼうっと遥か彼方に霞んでいくような感じ。

【収録作】
 庭のある家/冬/凮の橋/遠野物語より/柿/空き地のおんな/予感/先輩の話

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2010.04.13 Tuesday * 20:10 | 京極夏彦 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『三谷幸喜のありふれた生活8 復活の日』三谷幸喜
 脚本家・三谷幸喜氏のエッセイ第8弾。
 映画『マジックアワー』公開前後から、劇団東京サンシャインボーイズ復活までの出来事が書いてありました。愛猫の“おとっつぁん”が死んだ話も。前巻でもおとっつぁんのことには触れてあって、三谷さんも奥さんの小林聡美さんも覚悟はしていたようです。三谷家の他の動物達の話もあるけど、やはりおとっつぁんの話が一番印象に残りました。
 それにしても三谷さんは多忙ですね。いくつもの脚本を毎日書いて書いて書いて……。映画の宣伝のためにテレビ番組にもいっぱい出演しているし、急に舞い込んでくる仕事もある。普通だったらこれだけ家に篭もっていて仕事が詰まっている話を読んでも面白く無さそうなのに、そうはならないところがさすが。時折語られる映画への愛が好きです。ビリー・ワイルダーについては今までも触れられていたけれど、『探偵スルース』について書いてあったのが嬉しかったです。私もあの映画好きなので。
 本文もそうですが、巻末の東京サンシャインボーイズメンバーたちとの座談会がまた楽しかった。何年経っても仲間っていいなあ。三谷さんも舞台に関しては怒るんですね。小林さんに言葉をかけた西村さんの話が、いつの間にかみんなの中で小林さんの傷に塩を塗った西村さんという解釈になっていたのには笑いました。

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2010.04.07 Wednesday * 19:00 | 国内その他 | comments(0) | trackbacks(1)
* 『レンタルマギカ〜魔法使い、貸します!』三田 誠
 魔法が世俗から遠ざけられたのは、秘儀だからではない。
 危険だからだ。
 異界の力は、いともたやすく魔法使いを誘惑し、その代償として、いともたやすく現実を侵食するからだ。(第4章「魔法使いの禁忌」より)

 父親が失踪してから7年経ったある日、高校生の伊庭いつきは父の残した会社「アストラル」を継ぐことになる。しかしこの会社、実は魔法使いを貸し出す人材派遣業社だった。神道の巫女、陰陽師、ケルト魔術の魔女ら事務所のメンバーと共に<協会>からの仕事を請け負うのだが……。
 各種魔術を取り揃え、これからもきっと敵味方あわせて出てくる魔術の種類は増えていくのでしょうが、まだこれは一巻目でほんのお披露目といった感じ。物語の種を蒔いているところじゃないかな。伏線や、これから先使われるであろうエピソードがちらっちらっと見える程度です。なので、これからの展開に期待。文章は癖がなくて読みやすくさらっと読めました。
 表紙を見るといつきが椅子に格好良く座っているのですが、実際の彼はみんなにビシバシしごかれているヘタレキャラです。今のところ。この点も、これから社長としての自覚に目覚めて、しっかりしていく様子が描かれるのかな。恋愛フラグも立っていますが、私はいつきの成長物語として楽しみたいと思います。

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2010.04.03 Saturday * 19:13 | ライトノベル | comments(0) | trackbacks(0)

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