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2011.01.19 Wednesday * | - | - | -
* 『宇宙への秘密の鍵』ルーシー・ホーキング&スティーヴン・ホーキング
評価:
ルーシー・ホーキング,スティーヴン・ホーキング,さくま ゆみこ,佐藤 勝彦
岩崎書店
¥ 1,995
(2008-02)
 科学は退屈だと考える人もいます。科学は危険だと考える人もいます。もしぼくたちが、科学に興味を持って、科学について学び、科学をきちんと使うことができなければ、それは退屈だし危険にもなるでしょう。でも、もし科学を理解しようと努力するなら、それはとても魅力的で、ぼくたちにとっても、ぼくたちの地球にとっても、とても重要なものになります。(本文より)

 物理学で有名なホーキング博士と娘のルーシー嬢の共著。子供たちに向けて宇宙や量子論がわかりやすく書かれています。しかも内容は、ひとりの少年が冒険をしながらそれらの知識に触れていく形式をとっているので、どきどきわくわくしながら気がついたら宇宙の不思議について学べているという感じ。惑星や恒星、銀河などの宇宙の写真も合い間合い間にカラーページで入っており、子供がちょっと飽きてくる頃に絶妙なタイミングで興味を持続させるんじゃないでしょうか。手書き風のメモや要点をまとめたページもあります。
 主人公の少年ジョージは、両親が極端な自然生活主義でテレビも電話もない家で暮らしています。学校では変な家の子供としてからかわれているのですが、ある日隣の家に越してきた科学者のエリックとその娘アニーと知り合いになります。彼らの語る宇宙の話はとてもジョージをわくわくさせるものでした。そして仲良くなったエリックが見せてくれたのは世界一素晴らしいコンピュータ・コスモスでした。1ナノセカンド(10億分の1秒)の間に10億もの数計算をすることが出来、大気圏外を見る窓や出入りできる戸口を作り出すことが出来て、おまけに喋れるのです。すっかり夢中になったジョージでしたが、コスモスを奪おうとする人物が現れて……というお話。
 後半ブラックホールが出てきてそれについていろいろと書いてあるんですが、その中でホーキング博士が発表した学説「ホーキング放射」についても触れています。どんなものもブラックホールから抜け出すことはできないと言われていましたが、「ホーキング放射」と呼ばれる状態で素粒子を外に漏れ出させ、次第に蒸発していくというのです。そしてブラックホールから出てきたものを再構成することも可能だという過程から、物語の中でも重要な人物にかかわる場面へと繋がるのです。
 このお話は三部作らしく、続刊は一年後に刊行されるそうです。今回は地球の始まりから星の誕生と終わり、そしてブラックホールについてまで語られていました。次はどんなことが語られるのか楽しみです。一年後かあ。

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2008.10.06 Monday * 02:25 | 海外その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー
評価:
コーマック・マッカーシー
早川書房
¥ 1,890
(2008-06-17)
 パパを信じてないんだな。
 信じてるよ。
 そうか。
 いつだって信じてるよ。
 そんなことはないだろう。
 ほんとだよ。信じるしかないもの。(本文より)

 世界は廃墟と化し、鳥も飛ばない。灰色の空が重く垂れ込め、日に日に気温が下がっていく。毎日少しずつ暗くなり、どんどん寒くなっていく。なにかが起こった地球には、生き残った人間達が彷徨い、人肉を食すほどに追い詰められた状態だ。
 そんな中、父と子はひたすらに南を目指す。このままでは冬が越せないだろうから、そして南に行けばなにかがあるかもしれないから。それは食料かもしれないし、同じように生き残り、カニバリズムに走ることなく「善き者」として漂泊している同士かもしれない。望むべくは今日の糧であり、未来ではない。ひたすら歩き、食料を探し、襲ってくる「悪い者」たちから身を守る。
 その様子が淡々と克明に描き出され、読んでいて荒涼とした気持ちになった。同時にとても怖かった。そんな世界に放り出されることを想像しただけで、逃げ出したくなるくらい怖くてたまらなかった。不可思議な超常現象が起こるわけではないし、化け物の類も出ないけれど、私にとっては間違いなく恐怖小説だった。それなのに、読後残っているのは、静謐で美しく哀しいイメージだ。
 絶望とはなにか、終末とはなにか、良心とはなにか。
 ヴィゴ・ モーテンセン主演で映画化もされたようなので、日本で公開されたら観に行こうと思う。

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2008.10.02 Thursday * 18:28 | 海外その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『神の火を制御せよ 原爆をつくった人びと』パール・バック
「原子爆弾を使う必要はない。日本は必ず降伏する。すでにひざまずいている。日本人は誇り高い民族だから、無条件降伏なんか言い出しちゃならない。ただの降伏でいいじゃないか。それなら彼らの名誉が保てる。そうじゃないか? 戦争を終わらせることが大切だ。そうじゃないか?」(本文より)

 単一民族国家であり、四方を海に囲まれた小さな島国に片寄せあって生きてきた日本人は、とかく嫌なこと辛いことを水に流そうとします。そうすることでコミュニティ内での軋轢を減らしてきたのはわかるけれど、何度でも繰り返し語り続けなければならない辛い話というのもあるはず。それが被爆経験であり、戦争についてであると思います。
 今日は広島の原爆忌。ノーベル賞作家パール・バックの幻の作品といわれていた本書を読みました。1959年に書かれたもので、出版された欧米ではベストセラーとなったものの、被爆国としての国民感情を鑑みて、日本での出版はされなかったという代物。一応フィクション。モデルとなった科学者たちはいるけれど。昨年出版されたそうで、先月店頭で見かけたのを、今この時期に読んでみました。
 ……うん、そうか。
 最初に原爆を作るように主張したのはヨーロッパからの亡命者たち。彼らはナチスの大量虐殺を目のあたりにして、その惨劇を繰り返さないために抑止力として、そしてナチスが核を手にしてしまうのを防ぐために進言するのですが、いざ原爆が出来上がろうという段になると「こんな恐ろしいものを使用してはならない」と、抗議運動までして止めようとします。逆に宗教的理由から開発を渋っていたアメリカが、今度は真珠湾攻撃を受けたことによって使用したがるようになる。そこには既に虐殺という惨劇を経験した者と、実際には体験したことのない者の大きな隔たりがあるように見えました。
 そこに世界を変えるほどの強大な威力を持った最終兵器があれば、持つ者は使いたくなるでしょう。使ったことが罪なのか、作り出したことが罪なのか。それとも、作らねばならぬと思い込ませたことが罪なのか。痛みよりも悲しみよりも、恐怖心こそが人を駆り立てるのかもしれませんね。

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2008.08.06 Wednesday * 19:45 | 海外その他 | - | trackbacks(0)
* 『メモリー・キーパーの娘』キム・エドワーズ
 1964〜1989年にかけての物語。印象的な表紙に惹かれて手に取りました。
 貧しい家庭に育ち、医者として成功したデイヴィッド。苦労してきた彼は、ノラという美しい女性と出会い結婚。そして1964年の大雪の日に男女の双子(ポールとフィービ)を自ら取り上げたのだが、娘には明らかなダウン症の特徴があった。衝撃を受けながらもその場で施設に送ることを決断。看護師のキャロラインに赤ん坊を託し、妻には死産だったと告げるのだが――。

 当時はダウン症の症状が認められた場合には、速やかに施設へ送られるのが普通だったということに驚きました。そして分娩に麻酔が使われるのも当然のことなんですね。日本だと無痛分娩は病院によって扱うところとそうでないところとありますよね。
 話を戻して。デイヴィッドのしたことは妻を思い、家族の将来を思ってのことです。もちろん悩まなかったわけではありません。周囲も妻も知りませんが、彼には同じように障害を持つ妹がいたのです。そしてその世話につきっきりでボロボロになってしまった彼の母の記憶が、心の深いところに傷を残していたのです。それを知って読んでいるこちらには、デイヴィッドの苦悩がわかるのですが、彼の妻や息子はなにも知らされておらず、どんどん家族内の溝が深まっていくのが見ていてもどかしい。
 後にフィービの存在を妻も息子も知るところとなるのですが、死んだと偽っていたことに対する彼らの怒りと哀しみを見ても、私はどうしてもデイヴィッドに同情的になってしまうのでした。秘密を生涯抱え続けることは、並大抵のことじゃないだろうから。もちろんデイヴィッドの狡さも描かれています。看護師のキャロラインにフィービを預けたのは、彼女が自分に淡い恋心を抱いていると薄々気づいていてのことだし、施設の酷さに驚き、その子をひとりで育てようと決意して町を出て行った彼女達を本気で探そうとしなかったところもあります。ダウン症の子供を抱えたキャロラインに対して、手助けするようなこともなかった。
 家族を思って下した冷静で客観的な行動によって家族との間に溝が出来、孤独になってしまうデイヴィッドと、目の前の小さな命に対する本能的感情によって行動した結果、数々の苦難を乗り越えて温かい家庭を得たキャロライン。一見対比させてはいるけれど、どちらが正しかったのかを描いた作品ではないと思います。誰でも岐路に立たされて、物事を選ばなければいけない時があり、その時の決断を背負って生きていかなければならないのだ、とこの物語は言っているように感じられました。

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評価:
キム・エドワーズ
日本放送出版協会
¥ 2,100
(2008-02-26)

2008.07.14 Monday * 18:45 | 海外その他 | comments(0) | trackbacks(1)
* 『完璧な赤―「欲望の色」をめぐる帝国と密偵と大航海の物語』エイミー・バトラー・グリーンフィールド
評価:
エイミー・B グリーンフィールド
早川書房
¥ 2,100
(2006-10)
 16世紀のヨーロッパを狂瀾に陥れた魅惑の真紅、「完璧な赤」。この色を生む唯一の染料を求めて人々は出帆し、時代は争乱と謀略の渦へと動き始めたのだ-。壮大な歴史ロマン。(「MARC」データベースより)

 デパートで衣料品売り場を覗いても、町なかの小さな雑貨屋さんを覗いても、そこには様々な色の製品が所狭しと並んでいて、とてもカラフルでもはや表現されていない色などないのではと、つい思ってしまいます。けれど、こんなにも鮮やかな色彩が身近になったのは、まださほど時を経ていないんですね。
 今は昔、目にも鮮やかな真紅を身につけるのは、権力者の象徴でありました。なぜなら当時はその「完璧な赤」を生み出す染料がとても貴重で、それを手に入れるためにスパイが暗躍し、命をかけた戦いがあり、国と国との攻防まであったのです。コチニールは、黄金並の価値をもたらすものでした。絵画の見方も変わりますね。赤い服を着て描かれている人物たちは、当時の権力者なのかと。庶民が手にするなんて、夢のまた夢。そう思うと、年末を控えて普段よりもカラフルに彩られた町並みも感慨深い。
 この本は、そんな「完璧な赤」を表現できるただ一つの染料だったコチニールの歴史を書いたノンフィクション。これがなかなかドラマチックなんですよ。人はこんなにも色に飢えていたのか。染料ひとつでこんなにも熱くなれるものなのか。
 今では合成染料で様々な色が作り出せるようになりましたが、そうなるまでにはこういったドラマがあったんですね。

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2007.11.28 Wednesday * 07:00 | 海外その他 | comments(0) | trackbacks(1)
* 『夜中に犬に起こった奇妙な事件』マーク・ハッドン・著、 小尾芙佐・翻訳
評価:
マーク・ハッドン
早川書房
¥ 1,365
(2007-02)
 養護学校に通う15歳のクリストファーは、自閉症にふくまれるアスペルガー症候群という障害をもっている。彼は、人の表情、仕草、態度などから相手の感情を読みとることが困難で、他人の気持ちを慮るということが出来ない。なぜなら、人の感情というものは実に無秩序で、非論理的であるから。逆に、論理的であったり秩序だったものは大好きで、物理や数学では天才的な才能を見せる。そんな彼が養護学校の先生に勧められて本を書くことにした。題材は、近所の犬ウエリントンが殺されたことと、いったい誰が殺したかということについて。シャーロック・ホームズが好きなクリストファーは、探偵の役割を努めることを決めるのだが……。

 一読の価値あり、と思うものの★が5つでないのは、ひとえに主人公・クリストファーの父親に同情してしまったから。父親目線で読むとなんともせつなく、つらく、やるせない話だ。
 慣用句や比喩がまったく理解できないクリストファー。言葉の裏にあるニュアンスや、ひとつの単語にいくつもの意味を含ませる洒落や言葉遊びなどは、彼の頭を混乱させるだけ。街の雑踏や新しい景色も彼を混乱させる。彼は視界に入るすべてのものを「見て」しまうから。
 牧場に行けば、どんな草がどこにどれだけ生えていて、柵は何色でどんな作りをしていて、牛はそこに何頭いて一頭一頭どんな模様をしていてどのように動いていたか、空の色は何色で、鳥はどんな声で囀っていて……それらすべてを彼の頭は記録しようとする。「牛はどうだった?」などと聞かれても、どの牛のことを言っているのかまで聞かないと彼は答えられない。そのかわり、一頭一頭の牛については克明に話すことが出来る。
 その場の事象を記録するのにいっぱいいっぱいで、だから彼の脳は人の感情というものにまで手が回らないのかもしれない。彼は自分のことしか考えられず、父親の愛情も母親の感情も、すべて彼の上を通過していくだけなのだ。その端々を捕まえることも、それを咀嚼することもない。
 だから私は読んでいてつらかった。父親の立場で見て、自分がどんなに息子を愛していても、それを真に理解してもらえる日が来るとは思えない。理解どころか、感じてもらえる可能性も少ない。言葉にならない想いをスキンシップで伝えようとしても、クリストファーは接触嫌悪症なところがあって、人に触られると悲鳴を上げてパニックを起こすからそれも出来ない。どんなに辛抱強く彼を愛しても、たった一度の嘘ですべてが崩れてしまうこともある。
 読んでいて「ヤマアラシのジレンマ」という言葉を思い出した。けれどこの場合、クリストファーのほうは父親に触れたい、歩み寄りたいという気持ちがないので、父親側の一方的なジレンマだけど。
 冒険ともいえる行動を起こし、最後には自分に自信を持ったクリストファー。だけど、本当に彼は成長したんだろうか。主人公にとっては希望の見える終わりだけど、この先父親は長い長い年月をかけて、息子と少しでも近づこうと努力し続けるのだろう。いつか報われる日が来るといいのだけれど。

 主人公がシャーロック・ホームズが好きなので、作中に『バスカヴィル家の犬』についてかなり書かれている箇所あり。未読でネタバレが嫌な人は要注意。

 本ブログ 読書日記
2007.07.05 Thursday * 19:51 | 海外その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『あなたが世界を変える日―12歳の少女が環境サミットで語った伝説のスピーチ』セヴァン カリス=スズキ 訳:ナマケモノ倶楽部
 昨日聞いたラジオ「TERU ME NIGHT GLAY」で取り上げられていたので再掲。
 1992年6月11日。リオ・デ・ジャネイロで開かれた国連の地球環境サミット。カナダ人の少女が、いならぶ世界各国のリーダーたちを前に、わずか6分間のスピーチをした。その言葉は人々の強い感動を呼び、世界中をかけめぐり、いつしか「リオの伝説のスピーチ」と呼ばれるようになった。世界中を感動させたこのスピーチなどをイラストと共に収録。スピーチの英語原文も掲載。

 ずっと、「読まなきゃなぁ」と思っていた本。
 私の話には、ウラもオモテもありません。(本文より)

 そんな言葉で始まる、12歳の少女の堂々としたスピーチ。
 オゾン層には穴が開き、死んだ川からはサケがいなくなり、動物たちは毎年絶滅し続け、砂漠化した大地に緑を蘇らせるのは気の多くなるような年月を要する。それら人間によって破壊されてしまったものをどうやって直したらいいのか、私は知ろうとすらしていない。
 どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください。(本文より)

 うん。本当にそうだ。ぐうの音も出ませんよ。この年になって先のこととか、自分達の次の世代のことを考えるようになって初めて、環境問題についてはっきりと意識するようになって人間には耳が痛い。何事も自分の身に降りかからないとわからないようじゃ、駄目駄目だよな。人に与えられたものの中でも、「想像力」っていうのは最も大事なものなのにね。
 このスピーチがされた年から十年以上。今、私たちを取り巻く環境は、改善されているだろうか。
2007.02.22 Thursday * 17:57 | 海外その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『ガニメデのクリスマス アシモフ初期作品集2』アイザック・アシモフ
 読書も季節モノに手が伸びますね。
 これは、アシモフがまだ若手だった頃に書いた短編がまとめられている本です。その中のひとつ、本のタイトルにもなっている「ガニメデのクリスマス」。

 木星の衛星ガニメデで原住民のオストリ人たちを使って採掘作業をしているある地球人企業。ある日作業員のひとりが、オストリ人たちに「クリスマスにはサンタがトナカイに乗ってやってくるんだ」と話して聞かせたところ、「自分たちにもサンタがきてくれなければ仕事はしない!」と言い始めたからさあ大変。年末の期日までに採掘ノルマが果たせなければ会社は危機的状況に!

 ガニメデを舞台にしたクリスマスのドタバタコメディ。空飛ぶ橇に乗ったサンタと頭に角の生えた天駆けるトナカイを、地球人たちがどう誂えるのか。地球人にはよく知られたクリスマスの“お約束”であるサンタも、異星人から見たら実存する未知の生物なわけですもんね。違うんだと説明しようにもはしゃいじゃって聞かないんですよ。そんなオストリ人たちが可愛い。
 なんとか無理矢理いろんなものを使って調達するのですが、それはもう悲惨なサンタとトナカイが出来上がります。そして期待に満ちたオストリ人たちにプレゼントを配るのですが――。
 せっかく面白い状況を作り出しているので、もうちょっと話を長くしても良かったんじゃないかな。ヒイヒイ言いながら東奔西走する主人公の様子をもうちょっと詳しく書いてほしかったです。オチは笑いました。こりゃ大変だ〜(笑) 口は災いの元ですね。

 <収録作品>
 地球種族/金星の混血児たち/虚数量/遺伝/歴史/ガニメデのクリスマス/地下鉄の小男/新入生歓迎大会/スーパー・ニュートロン/決定的!/幽霊裁判/時猫
ガニメデのクリスマスガニメデのクリスマス
アイザック・アシモフ

早川書房 1996-05
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2006.12.22 Friday * 21:59 | 海外その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『おしりに口づけを』エペリ・ハウオファ
おしりに口づけをおしりに口づけをエペリ ハウオファ Epeli Hau‘ofa 村上 清敏 岩波書店 2006-09売り上げランキング : 136014Amazonで詳しく見る by G-Tools

 オイレイのオケツは、神の教えを説かれ、祈りを捧げられ、悪魔祓いをされ、息を吹き込まれ、息を吸い出され、歌われ、踊られた。爆発させられ、蒸気で蒸され、煙でいぶされ、そして切除され、捨てられ、移植され、人種転換され、性転換され、ついには鼻で触れられ、口づけされて、よみがえった。(本文より)

 いやはや、なんというか、これは立派な肛門小説です。いや、“痔”小説というべきか。そもそも「立派な」と形容していいものか。
 冒頭からラストまで、徹頭徹尾、尾篭な話でした。出版社では「抱腹絶倒の肛門小説」と銘打っているようですが、私はあんまり笑えなかったな。といって、シモの話を延々とされて嫌になっちゃったというわけでもなく、この突き抜けたドタバタっぷりは面白く読みました。痔を患ってしまったひとりの男が、その苦しみから逃がれたくていろんな治療法を試したり人を訪ねたりするんですが、最初は民間療法を試され、それからどんどんエスカレートしていくんですよ。そのさまがおかしくもあり、気の毒でもあり、そしてまた、ちょっとだけ怖くもあり。
 適切な処置を受けていれば、こんなに酷くなることのないんですよね。でも、この南太平洋にある架空の国では悪魔祓いやらなんやらが普通の治療として行われていて、あっという間に悪化させられてしまいます。そりゃもう読んでいて「イタッ、イタタタタ……」と、思わずお尻を押さえたくなるくらい。シモネタとスラングのオンパレードで下世話ではあるけれど、南の島々を取り巻く社会状況や因習をシリアスにするのではなく、こんな風にして笑い飛ばしているんですよね。おしりじゃないけど、今でも未婚の女性の性器を縫い合わせてしまう風習があるところの話なんかは、新聞で読んだことがあります。
 後半、「肛門哲学」なるものが開陳される段などは、なかなか真面目に読んでしまいました。肛門も手も足も、同じ体の大切な一部なのに、なぜ肛門だけ貶められ、忌み嫌われねばならないのか。人間の持つそういう性質は、肛門にのみとどまらず、人種、地域、職業などでも同じように差別を行っているのでは、というようなことなんですが。
 体のどの器官が患っても苦しいし、辛いですよね。この話の中で、ある聖人がオイレイの肛門にキスをするシーンがあります。正直なとこ、私にはできないけど、自分がオイレイの立場だったら、思わず涙してしまうかも。
 ふうむ、なんだかラストは妙な爽快感がありました。作者はトンガ人の方なんですが、この底抜けの明るさはお国柄でしょうか。冒頭にある「日本のみなさんへ」という作者からのメッセージに、この本が日本で出版されるに至った経緯が書かれています。それがまた率直でユーモアいっぱいで面白い。この運びに誰よりもびっくりしているのが作者本人だなんて(笑) それに、この本を出版したのが岩波書店ってところも興味深い。
2006.10.20 Friday * 22:07 | 海外その他 | comments(0) | trackbacks(0)
* 『文学刑事サーズデイ・ネクスト(1)ジェイン・エアを探せ!』ジャスパー・フォード 訳:田村源二
文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ!文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ!
ジャスパー フォード Jasper Fforde 田村 源二

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 舞台は1985年のイギリス。しかし、そこは異なった世界である。クリミア戦争は131年目に突入しており、ジェット機は存在しないのに、クローンのペットが大流行している。そして国民最大の娯楽は、サッカーではなく文学。そのため日常生活では文学にからんだ事件が後を絶たない。主人公サーズデイは、それらの事件を取り扱う特別捜査機関(スペックオプス)に所属する「文学刑事」である。
 彼女は、天才科学者の伯父が発明した、文学作品の中に侵入できる特殊装置「文の門」を巡って、悪の化身アシュロンと巨大軍事企業ゴライアス社と、三つ巴の死闘を繰り広げる。その戦いはなんと現実の壁を超えて、イギリス文学不朽の名作『ジェイン・エア』のなかへ。

 イギリス文学の名作の数々と、恋愛やアクションなどのエンターテイメント性とを見事に融合させた、知的でかつシュールな冒険活劇小説だ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に『ハリー・ポッター』を足したような感じ。

 主人公のサーズデイはリテラテックの女刑事。彼女がアシュロンを追う際に見聞きするさまざまな発明品や文学作品の中の世界は、さながら『不思議の国のアリス』のよう。破天荒で型破りで、とてつもなくグイグイと読ませるパワーがある作品。作者は映画畑の出身ということだけれど、なるほど映像化したらさぞかし面白い映画になることだろう。是非映画化してもらいたい。この作品に出てくるいろんなものを、映像で見たい。
 サーズデイと彼女の伯父マイクロフトとの関係は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティとドクの関係そっくり。マイクロフトの発明品の数々がとても珍妙で楽しい。それを下に敷きさえすれば、母国語で書いた文章を外国の言葉に翻訳してくれるという翻訳カーボン紙ロゼッショナリー、何色にでもツマミを捻りさえすれば好きなように色を変えられる車カメレオンカーetc...中でも本の中に入り込めるという文の門プローズ・ボータルが今回の鍵となる。

 舞台は民衆が異様に文学に熱狂している世界。該当にはハムレットの一説を朗読する自動販売機が置かれ、文学論争での死傷者は当たり前、子供たちは文豪のバブルガム・カードを集める。
 シェイクスピアなど著名な作家や劇作家の書いた肉筆原稿の中に入り込み、そこで原作にない行動(例えば主人公を冒頭で殺してしまうとか)を起こせばその本の内容が変わってしまう。肉筆原稿から生まれた印刷物(要するにその作品に関するすべての記述)が変わってしまい、世界は混乱する。それを阻止するべく特別捜査機関スペックオプスの女刑事サーズデイが活躍するわけなんだけど、このスペックオプスというのもなかなか謎の多い機関で、全部で30局あるとはいえその全貌は知られていない。30局は隣近所もめごと局、27局はサーズデイのいる文学刑事局、17局は吸血鬼・狼男処分局、12局は特別時間安定局(通称「時間警備隊」クロノガード)などなど。

 この作品はタイトルにもあるようにシリーズ1巻目。英国では既に3巻目まで出ているらしい。早く日本でも出版されないかな。各巻で話は(というか事件は)解決しているそうだけど、これから先続刊で他の局の内容が語られていくのだろうと思うとわくわくする。マイクロフトの発明品も、次はどんな想像もつかないものが出てくるのか楽しみ。
 この本を読んでいたら『ジェイン・エア』が読みたくなった。実は未読なので。サーズデイが変えてしまったラストともともとのラストを読み比べたい。本筋には外れるけれど作品全体でちょこちょこと論争が起きている「シェークスピアの正体」について、ラストで明らかになるのも「おっ」と思わされた。とにかく、いろんな楽しみ方が出来る本だと思う。
 翻訳も読みやすかった。なにより作者も翻訳者もすごくこの作品を楽しんでいるのが伝わってきたから、読んでるこっちもわくわくした。
 最後に、翻訳者田村氏が「訳者あとがき」で書いているこの作品の説明を引用させてもらおう。ちなみに書影は文庫本を使っているけれど、私がこれを読んだのは2004年で単行本のほう。
 奇妙で、可笑しく、激烈で、なつかしい。過酷で、甘く、真面目で、おバカ。元気で、せつなく、苦くて、かわいい。残酷で、やさしく、滑稽で、いじらしい。なごやかで、辛辣、せこくて、おおらか。痛ましくも、なごめる、それは楽しい、元気の出る物語。(訳者あとがきより)
2006.09.02 Saturday * 00:23 | 海外その他 | comments(0) | trackbacks(0)

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